著者
桑田 真臣 千原 良友 鳥本 一匡 影林 頼明 中井 靖 三馬 省二
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.632-634, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

思春期尿道異物の2例を経験したので報告する.症例1は12歳, 男子.肉眼的血尿, および尿道痛を主訴に当科を受診した.KUB, および尿道膀胱鏡で前立腺部尿道に全長7.5cmの伸展させた状態の安全ピンが認められた.患者は否定したが, 安全ピンは自己挿入されたと推察された.症例2は14歳, 男子.全長5cmの円柱状の金属を自慰目的で自己挿入した.KUBで異物は膀胱内に認められた.2例とも内視鏡的に異物を摘出し得た.2例の家庭環境の共通点として, 母子家庭であることがあげられる.症例1の父親は, 患者が 5 歳のときに患者を助けようとして患者の目の前で交通事故死した.症例2では, 両親が離婚していた.幼児期における父親との離別が精神状態に不安定性を与え, 結果的に尿道への異物自己挿入の原因となった可能性が考えられる.泌尿器科医にとって尿道膀胱異物はまれではないが, 15歳以下の報告は極めてまれである.尿道異物自己挿入の原因としては自慰目的がもっとも多いが, 思春期の症例では精神神経疾患の初期症状であるものや, 精神状態が不安定であるものが散見される.膀胱尿道異物患者, とくに思春期の患者においては, 異物自己挿入にいたった背景や精神状態を慎重に評価し, 精神医学的検索や治療の必要性を的確に判断することが泌尿器科医に求められると考える.
著者
桑田 真臣 千原 良友 鳥本 一匡 影林 頼明 中井 靖 三馬 省二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.632-634, 2009-09-20
被引用文献数
1

思春期尿道異物の2例を経験したので報告する.症例1は12歳,男子.肉眼的血尿,および尿道痛を主訴に当科を受診した.KUB,および尿道膀胱鏡で前立腺部尿道に全長7.5cmの伸展させた状態の安全ピンが認められた.患者は否定したが,安全ピンは自己挿入されたと推察された.症例2は14歳,男子.全長5cmの円柱状の金属を自慰目的で自己挿入した.KUBで異物は膀胱内に認められた.2例とも内視鏡的に異物を摘出し得た.2例の家庭環境の共通点として,母子家庭であることがあげられる.症例1の父親は,患者が5歳のときに患者を助けようとして患者の目の前で交通事故死した.症例2では,両親が離婚していた.幼児期における父親との離別が精神状態に不安定性を与え,結果的に尿道への異物自己挿入の原因となった可能性が考えられる.泌尿器科医にとって尿道膀胱異物はまれではないが,15歳以下の報告は極めてまれである.尿道異物自己挿入の原因としては自慰目的がもっとも多いが,思春期の症例では精神神経疾患の初期症状であるものや,精神状態が不安定であるものが散見される.膀胱尿道異物患者,とくに思春期の患者においては,異物自己挿入にいたった背景や精神状態を慎重に評価し,精神医学的検索や治療の必要性を的確に判断することが泌尿器科医に求められると考える.
著者
中井 靖 青木 勝也 松本 吉弘 篠原 雅岳 影林 頼明 三馬 省二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-986, 2013-11-20

症例:44歳,男性。外尿道口より陰茎陰囊境界部までの尿道腹側をカミソリで鋭的に完全切開され,近医で尿道単純縫合を受けたが,尿道は完全哆開した。以後,無治療であったが,13年後,再婚を転機に尿道再建術を希望して当科を受診した。尿道粘膜は再建に使用可能と判断し,尿道下裂に準じてThiersch法により一期的尿道形成術を施行した。留置カテーテル抜去後,立位排尿が可能となった。外傷性前部尿道損傷の原因として,尿道カテーテルによる損傷や尿道異物による尿道皮膚瘻などの報告はあるが,われわれが調べた限りでは,自験例のように意図的に広範囲に縦切開された尿道に対して尿道形成術を施行した報告はなかった。
著者
福井 真二 鳥本 一匡 影林 頼明 森本 勝彦 山口 惣一 濱野 一將 三馬 省二
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.865-869, 2009-11-28
参考文献数
11

症例は76歳,男性.1995年4月に右腎細胞癌に対して右腎摘除術を受けた後,徐々に腎機能が低下し,2006年2月に血液透析が導入された.前医で維持透析中,右副腎腫瘍およびエリスロポエチン抵抗性貧血が出現し,2008年5月に当科へ紹介された.副腎腫瘍は転移性と考えられた.また,MRI T2強調像で肝は著明な低信号を示し,肝ヘモクロマトーシスが疑われた.血清フェリチン値は2,314ng/mLと高値で,前医での輸血および鉄剤投与による鉄過剰症が考えられた.右副腎腫瘍摘除術(病理所見:腎細胞癌の転移)後,骨髄生検が行われた.所見は骨髄異形成症候群で,環状鉄芽球の割合が20%であったことから,鉄芽球性不応性貧血と診断された.高齢かつ複数の重篤な合併症のため,免疫抑制療法より輸血療法の安全性が高いと判断し,2008年6月より鉄芽球性不応性貧血による貧血に対しては赤血球濃厚液2単位/週の輸血,鉄過剰症に対しては経口鉄キレート剤(デフェラシロクス:エクジェイド<SUP>&reg;</SUP>)投与を開始した.デフェラシロクスは500 mg/日から,血清フェリチン値が減少傾向を示すまで徐々に増量し,血清フェリチンが1,000 ng/mL未満となった時点で減量した.副作用は下痢のみで,整腸剤投与により緩和された.投与開始9か月後の2009年2月には,血清フェリチン値が467 ng/mLまで低下したため,デフェラシロクス投与を中止した.本邦では透析患者への本剤投与の報告はないが,自験例では重篤な副作用もなく9か月以上投与可能であった.透析症例における鉄過剰症に対して,経口鉄キレート剤投与は積極的に試みるべき治療法になると考えられた.