著者
中井 靖 青木 勝也 松本 吉弘 篠原 雅岳 影林 頼明 三馬 省二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-986, 2013-11-20

症例:44歳,男性。外尿道口より陰茎陰囊境界部までの尿道腹側をカミソリで鋭的に完全切開され,近医で尿道単純縫合を受けたが,尿道は完全哆開した。以後,無治療であったが,13年後,再婚を転機に尿道再建術を希望して当科を受診した。尿道粘膜は再建に使用可能と判断し,尿道下裂に準じてThiersch法により一期的尿道形成術を施行した。留置カテーテル抜去後,立位排尿が可能となった。外傷性前部尿道損傷の原因として,尿道カテーテルによる損傷や尿道異物による尿道皮膚瘻などの報告はあるが,われわれが調べた限りでは,自験例のように意図的に広範囲に縦切開された尿道に対して尿道形成術を施行した報告はなかった。
著者
森 彰 松本 吉弘
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_362-4_373, 1995-07-17 (Released:2018-11-05)

圏論は抽象数学から派生した代数的手法であるが,構文と意味の関係を厳密に定義できることと,可換図式や普遍写像性などによって,数学的構造を視覚的に扱うことができることから,ソフトウェア設計における意味の可視化に役立つものと考えられる.本論文では,情報システムを構成するデータ集合間のシグネチャを圏によって可視化することで,ソフトウェア設計の形式化を図る試みについて論じる.まず,ソフトウェアの統一意味モデルという概念を,GoguenとBurstallによって導入されたインスティチューションの概念を借りて説明し,この意味モデルがソフトウェア設計に占める重要性について論じる.そして次に,この意味モデルを圏を用いて可視化する方法について述べ,それがソフトウェア設計の形式化にどう役立つかを考察する.
著者
森 彰 松本 吉弘
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.11-12, 1994-09-20

Curienは,カルテシアン閉圏(cartesian closed category,以下,CCCと略す)の定義における普遍写像性を,圏論的結合子と呼ばれる特別な射に関する等式に翻訳し,この等式を書き換え規則とみなすことで,関数型言語の操作的意味が圏論を通じて与えられることを示唆した.特にCCCの圏論的結合子から型,すなわち定義域と値域に関する情報と,終対象に関する結合子を取り除いた代数系(C-モノイドと呼ばれる)を用いれば,型なしのラムダ計算を従来の項書換え系として扱うことができる.横内も独立して,型なしの場合に圏論的結合子の等式を書き換え規則として扱うことを提唱した.しかし圏の射はf:A→Bのように定義域Aと値域Bによって型付けられた存在であり,射の結合は一方の値域と他方の定義域が一致するような射の対に対してのみ部分的に定義される.個々の結合子についても,異なる対象の上で同様に作用し得るという多相的な性質を持っている.たとえ型なしのC-モノイドを扱うとしても,結合子に関する個々の等式がどのような計算的・意味論的性質に連係しているのかが明らかでないので,合流性や停止性といった項書換え系の性質を考察することが困難である.本稿では,まずCCCのための圏論的結合子とその等式を随伴関手から直接導き出し,自由圏を生成する逐次式計算系を定義する.そしてこの体系におけるカット除去を圏論的結合子の操作的意味として用いることを提案する.
著者
森 彰 松本 吉弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2422-2432, 1995-10-15

圏論的結合子(categorical vombinator)はラムダ計算の変数を含まない翻訳であることから、圏論的解釈を利用した関数型言語の実装に用いられている。本稿では圏の構造を随伴関手(adjointfunctor)で定義することで、圏論的結合子とその等式が圏論の基本概念から天下り的に導かれることを示す。圏論的結合子は随伴関手に付随する自然変換である単因子(unit)と余単因子(counit)として得られ、その等式は圏、関手、自然変換の定義、および随伴関手の三角可換図(triangular identity)から直接導かれる。まず最初にカルテシアン閉圏(cartesian closed category)のための圏論的結合子の導出について述べ、これを用いた自由圏の構成を示す。そして次に圏論的結合子の非外延的(non-extensional)な等武が半随伴関手(semi-adojoint functor)から導かれることを示す。最後に一般の極限対象(1imit object)や再帰的対象(recursive object)について考察し、その際に右随伴関手と左随伴関手の双対性(dua1ity)がどのように作用するかをみる。
著者
松本 吉弘 大森 匡 鰺坂 恒夫
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本研究は、ソフトウェアシステムの中でも、その要求の論理が多元的であり、その意味領域が複雑であるものを対象としている。この場合、要求分析過程で観点の異なる複数のモデルが形成されることになり、これを統合してソフトウェアシステムへ変換する必要が生じる。これに対して本研究では、今年度つぎのように研究をすすめた。1.多元的要求を満たす意味モデルの記述法を研究し、さらに、多元的要求を統合した結果として形成されるべき統合モデル(メンタルモデル)にふさわしい検証可能モデルの記述方法や適合性について研究を行った。その結果,(1)並行エージェントモデル,(2)時次元を含むメンタルモデルを高レベル・ペトリネットで表し、その仕様を代数的に記述,検証する方法,(3)メンタルモデルを状態機械として表し、その振る舞いを含む代数的仕様の記述法,などを得た。2.上記のメンタルモデルを代数的仕様で表したものに関して,パラメタライゼーション,輸入,輸出による仕様代数間の関連づけを行い、関連を関手によって表現し、関手を橋L(言語)によって記述した。関手と仕様代数から構成される網をPCTE(ECMA標準に準じたソフトウェア開発支援環境)のスキーマとして定義することによって,相互のナビゲーションを可能とした。これらの研究はさらに、PCTE上で関手の実行を可能とし、代数的仕様におけるプロトタイピングをPCTEの実行制御機構の上で実現する研究に今後展開される。3.前年度から行っている,ソフトウェアエンジニアリング・デーテベースKyotoDBの研究,開発を続行し、自己反映的なヒューマンプロセス(ソフトウェア生産物表現に対する値付け操作に対するメタ)の実働,生産物表現が束縛されている値との間に存在する制約関係の維持管理,PCTEとの結合,などの研究をすすめた。