- 著者
-
後藤 佐多良
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.2, pp.155-158, 2008 (Released:2008-04-25)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
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老化防止を期待して抗酸化ビタミンその他の抗酸化物質を摂取する人が増えている.しかし,その効果が科学的に証明されたものは少ない.一方,最近の研究によりカロリー制限や定期的運動にはタンパク質やDNAの酸化傷害を軽減する効果があることが分かってきた.運動は酸素消費を高め活性酸素の産生を促進して有害であるという考えとは相容れない.運動の有益作用は,ヒトの60歳,70歳に相当する老齢ラットを使った実験でも証明されている.カロリー制限はエネルギー代謝を低下させ酸素消費,ひいては活性酸素を減少させるのが抗老化作用メカニズムだと考えられてきたが,活性酸素あるいは酸化傷害分子の除去あるいは修復酵素系活性化の寄与が大きい.アンチエイジングのためにはカロリー制限や運動,その他の環境要因によって"抗老化"酵素等のタンパク質遺伝子の発現を高め潜在能力を引き出すことが重要である.抗酸化物質の必要以上の摂取は抗酸化系の一部を高めることはあっても全体的には無益であるだけでなくバランスを損なって有害になる恐れがある.それに対して適度なカロリー制限や運動は,バランスよく抗酸化その他の防御能力を高めている可能性がある.