- 著者
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野田 雅子
後藤 由貴
- 出版者
- 名古屋文理大学
- 雑誌
- 名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.1-6, 2010-03-31
ウエディングケーキは,古代ローマを起源とする文化的な背景を持ち,宗教的,社会的な食文化を反映している特殊な位置付けの菓子である.日本にも西洋の風習の伝播と共に根付いたウエディングケーキではあるが,現在では日本独自のスタイルを持つウエディングケーキへと発展を遂げている.本稿では,文献調査に加え,日本をはじめ,イギリスとフランスでの現地調査も行ない,各国のウエディングケーキの考察を試みた.日本のウエディングケーキは宗教的意味はないが,披露宴の見せ場のひとつとしての役割を果たしている.結婚式とともに,新郎新婦たちの個性の表現としてウエディングケーキも多様化している.そして結婚産業の発展に伴って,ウエディングケーキを取り巻く人々は,新郎新婦やパティシエのみならず,結婚式のゲスト,新郎新婦の両親,ブライダル・コーディネーター,マスメディア,カメラマンに及び相互の連関を新たに生み出している.他方,イギリスではウエディングケーキがキリスト教的な儀礼文化と結びつき,ウエディングドレスと並んで結婚を象徴するものになっている.フランスでは儀礼的な側面はあまりなく,結婚の祝宴の中で供される食事のひとつとしての役割が大きい.