著者
御旅屋 達
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.106-118, 2015-12-25 (Released:2018-02-01)
被引用文献数
2

本稿では,「居場所」を提供しようとする支援への利用者の参加の経験を,参入-定着-退出の3段階に分節化し,就労・就学に代表される,外部社会への参加までの過程を連続的・動態的に明らかにすることを試みた。分析の結果,「居場所」支援の利用者たちは数々の社会的実践から「周縁化」されているが故に,「居場所」への参加にも困難を伴っており,支援者たちは利用者の責任の度合いを下げる形で利用者を「居場所」の「周辺」に位置づけようとしていること,こうした「居場所」利用者としてのアイデンティティの構築を経て,利用者は一般社会で広く通用する汎用的な資源を「居場所」に見出していること,外部社会への参加後は「居場所」利用者としてのアイデンティティは否定されること,などが明らかになった。こうした「居場所」への参加過程を「居場所」と外部社会の「二重の成員性」を獲得する過程として位置づけた。
著者
御旅屋 達
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.151-173, 2021-05-31 (Released:2022-07-02)
参考文献数
30

子どもの発達障害への関心の高まりを追うような形で,大人の発達障害もまた社会的課題となっているが,その需要に比して大人の発達障害者向けの支援の整備は十分とはいえず,それを代替するような形で当事者活動へのニーズが高まっている.しかし,多様な特性を有した発達障害者同士が,困難を共有し,解決する方法については不明な点が多い.本稿は,発達障害者のコミュニティにおいて,利用者がいかなる方法で相互に「信頼」を担保し,互いのメンバーシップを確認しているのかについて検討を行った. 本稿で得られた知見は次のとおりである.第一に,当事者コミュニティのメンバーシップの確認において「発達障害」という診断があることそれ自体は大きな意味を持たない.第二に,発達障害の当事者であることが,専門家が支援者として信頼される条件となっている.第三に,当事者同士のコミュニティにおいては,同じような困難を経験しているという信頼に基づいて,儀礼的な行為が免責されている.第四に,コミュニティのメンバーは,メンバー同士の身体状況を参照しながら自身の身体の状況を確認していることがわかる.第五に,儀礼的行為が免責されることにより,対人関係上のリスクの無効化が図られている.
著者
筒井 美紀 本田 由紀 阿部 真大 櫻井 純理 櫻井 純理 堀 有喜衣 居郷 至伸 御旅屋 達 伊藤 秀樹 福田 詩織 田近 恵子 喜始 照宣 小柏 円
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地方分権化は就労支援政策においても進められているが、その理念と実践は労働法制・行政組織法と矛盾しており自治体と支援機関は構造的ジレンマを強いられている。しかし関係者はその相対的自立性によって、法やルールの柔軟な解釈や資源の転用戦略を駆使するとともに、社会本体の変革意識を有している。とはいえ労働市場に関しては、進んでいない。変革的ビジョンを解釈する文化的資源の不足が、政治的迷走を引き起こしている。