著者
喜始 照宣
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.137-146, 2013-03-10

The aim of this paper is to examine how the university experience of geneki is different from the experience of ronin, based on interviews with art university students in Japan, and to discuss the relationship between art university students and yobiko (prep schools). The major findings can be summarized as follows: (1) most students think art university is a world away from yobiko, but cultural resources acquired from yobiko are necessary to pass the university entrance exam and useful for their production of artworks in university; (2) the education provided by yobiko functions as a cultural “buffer” for university experience and also provides a common language for artmakers; and (3) some geneki students report feeling a “geneki complex”, but they cope with this by pursuing their artistic expression.
著者
喜始 照宣
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.79-90, 2016-03-31

The aim of this paper is to examine what kind of students in art universities have experienced yobiko (prep schools) life and how they evaluate the experiences, using quantitative data obtained from students in four art universities in Japan. The main results are summarized as follows: (1) About 80% of the respondents have attended classes at yobiko before entering university; (2) experiencing yobiko life is influenced by factors such as social class, place of origin and type of high school; (3) most of the students who have regularly attended classes at yobiko think that they had positive experiences there.
著者
喜始 照宣
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.191-211, 2015-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
19

本稿では,作家志望の学生の卒業後進路選択に着目し,彼らの語りをもとに,美術系大学において就職者率の低さが生じるメカニズム解明を試みる.分析では,まず作家志望者の学卒後メインルートである大学院進学とアルバイト等の選択理由を検討し,それぞれの進路選択に含意された学生の意図や戦略を確認する.つぎに,彼らにとって就職が選ばれにくい背景として,実技重視の教育体制のもと,就職を「制作の休止・趣味化」とする独自の意味が生成されていることを指摘し,それは実技系教員―学生間,学生同士の相互行為により維持・強化されることを示す.しかし他方で,就職は制作継続のためであれば必ずしも忌避されておらず,彼らは大学界と美術界の論理の狭間で進路をめぐる不安や葛藤を経験していることを最後に明らかとする.
著者
喜始 照宣
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.10, pp.285-296, 2016-03

本稿の目的は,2013 年に美術系大学4 校の学生を対象に実施された質問紙調査をもとに,大学入学以前での予備校・画塾経験の差異が,学生の大学生活に与える影響について検討することである。具体的には,つぎの分析課題を設定し,検証する。 分析課題1:予備校・画塾経験は,大学生活での諸活動への熱心さを高めるのか 分析課題2:予備校・画塾経験は,大学生活での悩みや消極性を低減するのか分析の結果,クロス集計レベルでは,予備校・画塾経験者のほうが,大学生活における,制作活動での熱心さが高い一方で,制作・研究面で悩みを抱く傾向があることが確認される。しかし,多変量解析によって,他の変数の効果を統制した上では,予備校・画塾経験は,1)制作活動での熱心さを高める効果を持たないが,2)制作・研究での悩みをもたらす効果を持つことが示される。よって,予備校・画塾での経験が,その後の学生の生活に及ぼす影響範囲は限定的であり,それは必ずしも正に働かないことが明らかとなる。
著者
喜始 照宣 長江 侑紀
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.11, pp.189-208, 2017-03

本稿の目的は,下記の2つの問い(RQ)について,長年にわたり多文化保育を行ってきた横浜中華保育園を事例とし,おもに保育者へのインタビュー調査をもとに明らかにすることである。特に本稿では,保育者ストラテジーの観点から,保育者の問題対処の仕方を描き出す。 RQ1:外国につながりのある子どもに関して,現在どのような問題が生じているのか RQ2:保育者たちは,そうした問題に対して,日常的にどのように対処しているのか分析の結果,以下の知見が見出された。第1に,横浜中華保育園では,認可園への移行後,園環境及び子ども・保護者の変化が見られた。子どもや保護者の文化的・経済的背景の変容である。特に幼児クラスでは,新たに中国から来た日本語が分からない子どもが増加していた。第2に,そうした言語に関わる問題に対して,保育者は,「子どもは自然と慣れていく」といった乳幼児観に基づき,過度な援助・介入は行わない,「見守る」基本姿勢をストラテジーとして採用し,子どもの成長・発達,自発的な互助に委ねた対処をしていた。第3に,それと同時に,同僚の保育者や園長,幼児,保護者といった「他者」を資源として活用する「協働ストラテジー」を駆使し,日本語が分からない子どもや保護者への対応という,日常的に生じる問題の解決も行っていた。また,協働ストラテジーは,園内の限られた構造的条件の中で,保育者が自らの目的・目標を達成する上で有効に活用されていることが示された。
著者
筒井 美紀 本田 由紀 阿部 真大 櫻井 純理 櫻井 純理 堀 有喜衣 居郷 至伸 御旅屋 達 伊藤 秀樹 福田 詩織 田近 恵子 喜始 照宣 小柏 円
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地方分権化は就労支援政策においても進められているが、その理念と実践は労働法制・行政組織法と矛盾しており自治体と支援機関は構造的ジレンマを強いられている。しかし関係者はその相対的自立性によって、法やルールの柔軟な解釈や資源の転用戦略を駆使するとともに、社会本体の変革意識を有している。とはいえ労働市場に関しては、進んでいない。変革的ビジョンを解釈する文化的資源の不足が、政治的迷走を引き起こしている。