著者
菅原 ますみ 北村 俊則 戸田 まり 島 悟 佐藤 達哉 向井 隆代
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-45, 1999-05-20 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
1

児童期の子ども (平均年齢l0.52歳) の間題行動発生に関わる先行要因について, 対象児童が胎児期より開始された縦断サンプル (約400名) を用いて検討をおこなった。10歳時の注意欠陥および攻撃的・反抗的な行動傾向 (externalizingな問題行動) の予測因子として, 子ども自身の乳幼児期からの行動特徴, 家庭の社会経済的状況, 親の養育など多くの要因が有意な関違を持っており, 多要因の時系列的な相互作用によって子どもの問題行動が発達していくプロセスが浮かび上がってきた。また, 発達初期に同じような危険因子を持っていたとしても, 良好な父親の養育態度や母親の父親に対する信頼感などの存在によってこうした問題行動の発現が防御されることも明らかになった。これらの結果から, 子どもの精神的健康をめぐるサポートの在り方について考察をおこなった。
著者
高橋 知音 荻澤 歩 茂原 明里 辻井 正次 手塚 千佳 戸田 まり 仲島 光比古 橋本 しぐね 藤岡 徹 藤田 知加子 森光 晃子 山本 奈都実 吉橋 由香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では感情認知能力、社会的文脈と感情や意図を読み取る能力、社会的適切さや暗黙のルールの理解を多面的に評価する「社会的情報処理能力検査バッテリー」を開発した。それぞれの課題について信頼性、妥当性についてある程度の根拠が得られた。これは、自閉症スペクトラム障害のある人の社会性を評価することができる我が国初めての検査バッテリーと言える。報告書として音声刺激CDを含む実施マニュアルも作成した。
著者
佐藤 達哉 菅原 ますみ 戸田 まり 島 悟 北村 俊則
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.409-416, 1994-02-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
34
被引用文献数
10 10

Mothers' difficulties concerning child-rearing were conceptualized as a rearing-related stress (RRS). Eight hundred and seventeen mothers who had six month-olds infants were asked to rate 28 RRS items and 20 items on the depressive severity scale (Zung, 1956). The main results were summarized as follows: (1) Twenty-two items of RRS were analyzed by Hayashi's quantification (type-III) method, and two hypothesized dimensions were extracted. These are named children-related reaing stress (CRRS) and mothers-related rearing stress (MRRS). (2) RRS was related to mothers depressive severity, (3) Linear relationships of “CRRS-MRRS-depression severity” was examined by partial correlation analysis. (4) Primiparae experienced more RRS than multiparae. These results suggested that RRS could be considered as a process, i.e., CRRS influences MRRS and then MRRS influences depressive severity. The RRS model is in accord with the psychological stress model of Lazarus and Folkman (1986). Lastly, possible preventive strategies for mothers' RRS were disscussed in the light of RRS model.
著者
戸田 まり 渡辺 恭子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.214-223, 2012

思春期前後の定型的な社会的情報処理の発達を調べるため,複数の想定場面を作成し,小学校5年から高校2年までの男女計716名に対し調査を行った。あいまいな状況で被害を受けた場合,アプリオリに相手の敵意を想定したり攻撃的な対応をする者は,年齢と共に減少することが明らかになった。しかし口に出さない内面での感情的反応は中学1年で最も否定的であり,この時期が,認知的には「相手の悪意ではない」と理解しながらも感情的には怒りを覚える度合いが高いのではないかと示唆された。相手の行動の解釈,生起感情,予想される対応をクラスター分析により4パターンに分けて発達的変化を調べた結果からもこのことは確認された。また中学生以上では,相手の敵意を想定しやすく感情的にも否定的になりやすく対応も攻撃的になりやすい群は,学校満足度や自分の学業成績に対する満足度は他の群と変わらないが,家庭での受容や親への気持ちについては他の群より否定的であり,家庭での人間関係があいまい状況でのネガティブな社会的情報処理と関連している可能性が示唆された。