著者
菅原 ますみ 八木下 暁子 詫摩 紀子 小泉 智恵 瀬地山 葉矢 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-140, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
57
被引用文献数
25 16

本研究は, 夫婦間の愛情関係が家族機能と親の養育態度を媒介として児童期の子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。313世帯の父親, 母親および子ども (平均10.25歳) を対象に郵送による質問紙調査を実施し, 両親回答による夫婦関係と養育態度, および家庭の雰囲気と家族の凝集性, 子どもの自己記入による抑うつ傾向を測定した。配偶者間の愛情関係と子どもの抑うつ傾向との間に相関は見られなかったが, 家庭の雰囲気や家族の凝集性といった家族機能変数を媒介として投入した結果, 両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さが, また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することが明らかになった。また同時に, 配偶者間の愛情関係は親自身の養育態度とも関連し, 相手への愛情の強さと子どもに対する態度の暖かさや過干渉的態度との間に有意な関係が見られた。しかし, こうした養育態度のうち, 子どもの抑うつの低さと関連が認められたのは, 母親の養育の暖かさのみであり, 父親の養育態度は子どもの抑うつ傾向とは関連しなかった。
著者
酒井 厚 菅原 ますみ 眞榮城 和美 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.12-22, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42
被引用文献数
9 9

本研究では, 中学生の学校適応の諸側面について, 親および親友との信頼関係との関連から検討した。学校適応は, 教室にいるときの気分 (反抗的・不安・リラックス) と学校での不適応傾向 (孤立傾向・反社会的傾向) について測定した。縦断研究に登録されている中学生270名 (13.7歳) とその両親 (母279名; 父241名) を対象に解析を行い以下の結果を得た。1) 親子相互の信頼感において, 子どもの学校適応に影響を与えているのは子が親に抱く信頼感の方であり, 親が子に抱く信頼感は関連が認められなかった。また, 子が親に抱く信頼感に関しては, 母親に対するものばかりではなく父親に対する信頼感も学校適応に重要な役割を担うことが示唆された。2) 親子間相互の信頼感得点の高低から分類した親子の信頼関係タイプによる結果では, 総じて親子相互信頼群の子どもの学校適応がほぼ良好であるのに対し, 親子相互不信群の子どもは学校に不適応な傾向が示された。3) 親友との信頼関係が学校適応に与える影響に関しては, 学校で不適応な傾向にある親子相互不信群において特徴が見られ,「孤立傾向」や「リラックスした気分」の変数では学校への適応を良くする防御要因として働く一方で,「反社会的傾向」の得点はより高めてしまうという促進要因ともなりうることが示された。
著者
菅原 ますみ 北村 俊則 戸田 まり 島 悟 佐藤 達哉 向井 隆代
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-45, 1999-05-20 (Released:2017-07-20)
被引用文献数
1

児童期の子ども (平均年齢l0.52歳) の間題行動発生に関わる先行要因について, 対象児童が胎児期より開始された縦断サンプル (約400名) を用いて検討をおこなった。10歳時の注意欠陥および攻撃的・反抗的な行動傾向 (externalizingな問題行動) の予測因子として, 子ども自身の乳幼児期からの行動特徴, 家庭の社会経済的状況, 親の養育など多くの要因が有意な関違を持っており, 多要因の時系列的な相互作用によって子どもの問題行動が発達していくプロセスが浮かび上がってきた。また, 発達初期に同じような危険因子を持っていたとしても, 良好な父親の養育態度や母親の父親に対する信頼感などの存在によってこうした問題行動の発現が防御されることも明らかになった。これらの結果から, 子どもの精神的健康をめぐるサポートの在り方について考察をおこなった。
著者
小泉 智恵 菅原 ますみ 前川 暁子 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.272-283, 2003-12-05 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
5

働く母親における仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが母親自身の抑うつ傾向にどのような過程を経て影響を及ぼすのか,そのメカニズムを検討することを目的とした。仮説として仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーの抑うつ傾向に対する直接的影響と,仕事ストレツサー,労働時間,子どもの教育・育児役割負担によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが子育てストレス,夫婦関係を介して抑うつ傾向に及ぼすという間接的影響が提出された。方法は,小学校高学年の子どもをもつ有職の母親で配偶者のある者(246名)と同学年の子どもをもつ無職の母親で配偶者のある者(131名)を対象として質問紙調査をおこなった。有職母親群の分析結果で,分散分析により仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると抑うつ傾向が高くなるという直接的影響がみとめられた。パス解析により仕事ストレツサー,労働時間の増加によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると,夫婦間の意見の一致を減少させ,子育てストレスを高めることを介して抑うつ傾向を上昇させるという間接的影響がみとめられた。考察では仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが抑うつ傾向に影響しないようにするには,夫婦関係と子育てに関して介入,支援をおこなうこと,仕事ストレツサーの低減と労働時間の短縮が有効である可能性が論じられた。
著者
平野 均 坂元 薫 北村 俊則 苗村 育郎 湊 博昭 岡野 禎治 佐々木 大輔 田名場 美雪
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

【目的】(1)青年期の季節性感情障害(SAD)有病率と罹患者の特徴、ならびに(2)Global Seasonality Score(GSS)規定因子を解明し、治療法の確立を目指す。【対象と方法】(1)平成16〜17年度全国7大学新入生を対象とし、SAD有病率と罹患学生に認められる特徴を調査した。GSS得点13点以上(高GSS群)は全員を、12点以下(低GSS群)は40名から高GSS群数を引いた人数を無作為に抽出して構造化面接を実施した。(2)平成16年度全国8大学新入生を対象とし、GSS・TCI・出身高校所在地平年値日照環境との関係を調査した。【結果】(1)対象学生12,916名中、8,596名が回答に応じた。高GSS群202名中151名と低GSS群118名中110名がSCID-Iを用いた構造化面接に応じ、それぞれ7名と1名がSADと診断された。SAD有病率は0.96%で、罹患率に性差は無かった。また14名が社会恐怖(social phobia ; SP)と診断され、GSSは高得点であった。SAD罹患学生は、高率にSPを合併していた。(2)対象学生10,871名中、GSS・TCI・日照環境情報に不備が無かったのは61443名であった。GSS総点・平均日照時間・同日射量・TCI 7項目を変数として、パス解析を行った。その結果高GSS得点を規定したのは、低い自己指向性と協調性、高い自己超越・新奇追求・損傷回避で、分裂病型人格に該当した。日照環境とには関連は見出されなかった。【考察】構造化面接による今回の大規模調査から、SAD有病率は凡そ1%で性差が無いことが示された。罹患学生にSPが高率に併存すること、GSS得点が特定の人格傾向を反映することは、SAD・SPに共通する生物学的基盤が存在する可能性を示唆している。このことは両疾患の病態と成因を解明する上で、また治療法を確立する上で貴重な所見と考えられる。
著者
佐藤 達哉 菅原 ますみ 戸田 まり 島 悟 北村 俊則
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.409-416, 1994-02-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
34
被引用文献数
10 10

Mothers' difficulties concerning child-rearing were conceptualized as a rearing-related stress (RRS). Eight hundred and seventeen mothers who had six month-olds infants were asked to rate 28 RRS items and 20 items on the depressive severity scale (Zung, 1956). The main results were summarized as follows: (1) Twenty-two items of RRS were analyzed by Hayashi's quantification (type-III) method, and two hypothesized dimensions were extracted. These are named children-related reaing stress (CRRS) and mothers-related rearing stress (MRRS). (2) RRS was related to mothers depressive severity, (3) Linear relationships of “CRRS-MRRS-depression severity” was examined by partial correlation analysis. (4) Primiparae experienced more RRS than multiparae. These results suggested that RRS could be considered as a process, i.e., CRRS influences MRRS and then MRRS influences depressive severity. The RRS model is in accord with the psychological stress model of Lazarus and Folkman (1986). Lastly, possible preventive strategies for mothers' RRS were disscussed in the light of RRS model.
著者
小泉 智恵 菅原 ますみ 前川 暁子 北村 俊則
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.272-283, 2003-12-05
被引用文献数
4

働く母親における仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが母親自身の抑うつ傾向にどのような過程を経て影響を及ぼすのか,そのメカニズムを検討することを目的とした。仮説として仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーの抑うつ傾向に対する直接的影響と,仕事ストレツサー,労働時間,子どもの教育・育児役割負担によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが子育てストレス,夫婦関係を介して抑うつ傾向に及ぼすという間接的影響が提出された。方法は,小学校高学年の子どもをもつ有職の母親で配偶者のある者(246名)と同学年の子どもをもつ無職の母親で配偶者のある者(131名)を対象として質問紙調査をおこなった。有職母親群の分析結果で,分散分析により仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると抑うつ傾向が高くなるという直接的影響がみとめられた。パス解析により仕事ストレツサー,労働時間の増加によって生起した仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが多くなると,夫婦間の意見の一致を減少させ,子育てストレスを高めることを介して抑うつ傾向を上昇させるという間接的影響がみとめられた。考察では仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが抑うつ傾向に影響しないようにするには,夫婦関係と子育てに関して介入,支援をおこなうこと,仕事ストレツサーの低減と労働時間の短縮が有効である可能性が論じられた。
著者
菅原 ますみ 八木下 暁子 詫摩 紀子 小泉 智恵 瀬地山 葉矢 菅原 健介 北村 俊則
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-140, 2002-06-30
被引用文献数
11

本研究は,夫婦間の愛情関係が家族機能と親の養育態度を媒介として児童期の子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。313世帯の父親,母親および子ども(平均10.25歳)を対象に郵送による質問紙調査を実施し,両親回答による夫婦関係と養育態度,および家庭の雰囲気と家族の凝集性,子どもの自己記入による抑うつ傾向を測定した。配偶者間の愛情関係と子どもの抑うつ傾向との間に相関は見られなかったが,家庭の雰囲気や家族の凝集性といった家族機能変数を媒介として投入した結果,両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さが,また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することが明らかになった。また同時に,配偶者間の愛情関係は親自身の養育態度とも関連し,相手への愛情の強さと子どもに対する態度の暖かさや過干渉的態度との間に有意な関係が見られた。しかし,こうした養育態度のうち,子どもの抑うつの低さと関連が認められたのは,母親の養育の暖かさのみであり,父親の養育態度は子どもの抑うつ傾向とは関連しなかった。