著者
戸田 真夏 長谷川 直子 大八木 英夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

筆者らは、地誌学的な視点の一般への普及の手段として、地域を総合的に理解できる地誌的旅行ガイドブックを作成、出版することを目標に活動している。その基礎情報を得るため、大学生を対象として国内旅行に関するアンケート調査を行い、その大まかな結果については2014年春に報告した。それに引き続き今回は、旅行動向の男女による違いについて報告する。アンケートの有効回収数は965である。男女毎の回答数は男子が542、女子が409である。以下、主に男女差の見られた項目について示す。「鉄道」、「車」、「バイク」、「体を動かすことが好き」などアウトドア派や「アニメ好き」は男子学生が多い。一方、「写真を撮ることが好き(デジカメ所持)」、「テーマパーク好き」は女子学生が多い。「旅行好き」、「食べることが好き」は男女差なく1,2位を占める。このことから女子はイベント、思い出を求め、男子は趣味や体験重視と考えられる。日帰り旅行や国内宿泊旅行の頻度は「年1回」や「ほとんどしない」のは男子学生が多いが、「週1程度」で高頻度なのも男子学生が多い。男子学生は好きな人は沢山行くが興味のない人は行かない、と極端な違いがあると思われる。なお、「旅行好き」は宿泊も日帰りも行っている。日帰り旅行や 宿泊旅行の同行者については、「一人」は圧倒的に男子学生が多く、また「友人」も男子学生が多い。「家族」は日帰り旅行では女子学生のほうがやや多いが、宿泊旅行では男子がやや多い。女子のほうが旅行に対して受動的なのかもしれない。.旅行先を決める理由に関して、「行ったことがない」は男子が多いことから、男子はフットワークが軽いと考えられ、「日数で決める」ことが多い女子は、現実的なのではないだろうか。国内宿泊旅行の目的について、「自然の景色を求める」のは男子学生が多い傾向が見られた。旅行先を決めるきっかけは、「書籍」、「知人の話」、「趣味」、「授業」に影響されるのは男子学生が多く、「旅行ガイドブック」や「旅行会社」は女子学生が多い。旅行へ行く際の情報収集の手段については「HP」や「ネット口コミ」は男子学生が多く、「旅行ガイドブック」は女子学生が多い。ガイドブック利用冊数関しては、女子の方が利用する割合が高く、男子はまったく利用しない割合が高い。購入の有無では女子の方が購入し、男子は購入しない人が多い。また、女子学生のほうが購入費用をかけている。知っているガイドブックについては、女性ターゲットの「ことりっぷ」や「タビリエ」はやはり女子学生のほうが認知度が高い。ガイドブック購入時に重視する点では、一位の「情報が豊富」では男女差は見られないが、「かわいい」、「持ち運びやすさ」はやや女子学生が重視する傾向がある。ガイドブックの記事で重視する情報については、男子は「自然」と「宿泊」なのに対して、女子は「お土産の買える場所」と「飲食店」といった具合で違いが目立った。「ガイドブックのモデルコースを参考にするか」との問いに対しては、女子学生のほうが「参考にする」傾向がみられるものの、「かなり参考にする」人は男子学生のほうが多い結果が得られた。ガイドブックに載っていない現地での発見については男子学生のほうが重要視している傾向が高かった。筆者らが目指している地誌的説明が詳しいガイドブックに対しては、男女とも魅力は感じてくれている。 様々な質問項目で男女の違いが見られた。全体を通して、男子学生の方が能動的、女子学生の方が受動的な印象を受ける。言い方を変えると、男子学生の方が個性的な旅行を好み、女子学生の方が周囲に影響されやすいようにも思える。一方で女子学生の方がガイドブックを使う人が多いことから計画的にも思える。これらのアンケート結果の指向性に基づくと、地誌的な旅行は男子学生の方が興味を示しそうな気もするが、最後の質問で直接「地誌に特化したガイドブック」と聞くと、女子学生も興味を持っている回答結果を示している。
著者
長谷川 直子 宮岡 邦任 元木 理寿 大八木 英夫 谷口 智雅 戸田 真夏 山下 琢巳 横山 俊一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100036, 2013 (Released:2014-03-14)

2013年春の日本地理学会において、地理学の社会的役割を考えるというシンポジウムが開催された。発表者の何人かは、一般の人に地理学的な視点(広い視野、総合的な視点、現象間の関係性を理解する)がないことが問題であると指摘していた。それでは一般の人にそのような視点を持ってもらうためにはどうしたら良いか。具体的に何か作成し、普及できないか。そのような視点に立ち、筆者らは2013年春から研究グループを立ち上げて活動を開始している。地誌学的な視点の一般への普及の手段として、地誌学の視点から地域を理解する教材を子供向け(義務教育における副読本や教員向け実践実例集等)と大人向け(旅行ガイドブック)に作成できないか考えた。現在市販されているガイドブックを地誌学の視点から眺めると、単なるスポット・事象の羅列になっており、スポット間の関係性や、スポット・事象がそこに存在する理由などの地誌学的説明が見られない。旅行ガイドブックにこれらの説明をうまく入れられれば、旅行者がガイドブックを読むことで地誌学的視点が身に付くようになるのではないかと考えられる。そして、観光ガイドブックにどのように項目を取り上げ、地誌学的な記載をするかについて、検討を行った。