著者
山下 琢巳
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.399-420, 2002-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は天竜川下流域を事例に,江戸時代末期から明治時代まで,流域住民によって担われてきた水防活動と,堤防,水制工の維持・補修工事や河川改修といった河川工事の実態を検討し,流域住民の治水事業への関わり方の変容を明らかにすることを目的とした.考察に際しては,水防活動,河川工事,共に中心的な役割を果たした水防組合の活動内容に注目した.江戸時代には,水防活動と河川工事の実施主体に明確な区分がなく,いずれも天保水防組に加入する村の村請けによって行われていた.明治初・中期になると,水防活動は水防組合が行い,河川工事は下流域の業者が請け負うものへと変化した.また明治中期より開始された内務省直轄の河川改修により,天竜川下流域では水害そのものが相対的に減少した.その結果,明治末期には流域住民の参加する水防組合の諸事業が機能しなくなっていた.河川法が制定された明治中期以降の天竜川下流域では,内務省や静岡県が治水事業を統括していく過程で水害は減少したが,住民の治水事業への関わりが稀薄となり,水防組合の活動が次第に形骸化していったことが明らかとなった.
著者
長谷川 直子 宮岡 邦任 元木 理寿 大八木 英夫 谷口 智雅 戸田 真夏 山下 琢巳 横山 俊一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100036, 2013 (Released:2014-03-14)

2013年春の日本地理学会において、地理学の社会的役割を考えるというシンポジウムが開催された。発表者の何人かは、一般の人に地理学的な視点(広い視野、総合的な視点、現象間の関係性を理解する)がないことが問題であると指摘していた。それでは一般の人にそのような視点を持ってもらうためにはどうしたら良いか。具体的に何か作成し、普及できないか。そのような視点に立ち、筆者らは2013年春から研究グループを立ち上げて活動を開始している。地誌学的な視点の一般への普及の手段として、地誌学の視点から地域を理解する教材を子供向け(義務教育における副読本や教員向け実践実例集等)と大人向け(旅行ガイドブック)に作成できないか考えた。現在市販されているガイドブックを地誌学の視点から眺めると、単なるスポット・事象の羅列になっており、スポット間の関係性や、スポット・事象がそこに存在する理由などの地誌学的説明が見られない。旅行ガイドブックにこれらの説明をうまく入れられれば、旅行者がガイドブックを読むことで地誌学的視点が身に付くようになるのではないかと考えられる。そして、観光ガイドブックにどのように項目を取り上げ、地誌学的な記載をするかについて、検討を行った。