著者
木村 巌 横山 俊一
出版者
木村巌,横山俊一
巻号頁・発行日
pp.1-226, 2018-03-01

1. コンピュータの上での数学・数論2. 体上の楕円曲線の一般論3. 有限体上の楕円曲線に関連した計算問題4. 楕円曲線のMordell-Weil群 : descent 理論5. 楕円曲線の計算法入門 : 実践編6. 楕円モジュラー形式の導入7. モジュラー形式の係数とGalois表現8. 特別な楕円モジュラー形式の高速計算理論について9. モジュラー形式に付随する2次元法l-Galois表現の計算10. 高さとArakelov理論,それらのGalois表現の計算への応用11. Hilbertモジュラー形式の計算12. 重さ1の楕円尖点形式に伴うArtin 表現13. PARI/GPによる重さ1のモジュラー形式の計算
著者
横山 俊一
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

Julia 言語を用いた新しい数式処理システム Nemo の開発を通して,以下の課題を解決することを目指す.1) AbstractAlgebra.jl の開発を通して,拡大体(とくに局所体)の高速計算アルゴリズムを提案し,高次拡大体の計算や高速同型判定を可能にする.2) Hecke.jl の開発を通して,数論幾何的対象(楕円曲線やモジュラー形式)の計算パッケージを実装し,代数体上の楕円曲線の効率的探索を実現する.また,以上の実装を用いて大規模探索を行い,数論データベース LMFDB の拡張プロジェクトへの貢献を目指す.
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.202-220, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
18

本稿では,学生が主体となった雑誌の出版やテレビ出演などのアウトリーチ活動から,社会がそれをどのようにとらえ,また学生自身が社会の反応をどのようにとらえたのかについて考察した.当初は授業の成果を出版することで地理学をアウトリーチする意図があった.しかし社会からは,男性的なイメージの強い地理に女子がいることの意外性から女子の側面が取り上げられ,発信した学生の中には当初の意図と違うとらえ方をされたことに対する戸惑いがあった.結果的には,その意外性から多くのマスコミに取り上げられ多くの人にアウトリーチできた.学生主体のアウトリーチは,学術的専門性とはまた別の次元でその親しみやすさ,面白さを伝えられるという点で,学問に直接的な興味をもたない人々へのアプローチを可能にする.研究者が先端的な研究内容をアウトリーチするのとは対象者・目的・内容が異なり,一つの効果的な社会へのアプローチ方法であると考えられる.
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
no.48, pp.213-228, 2015-04

This paper examines the mutual relationship between the academic connections and the political practice of Adachi Seifu, a graduate of Hakuen-juku in Osaka and Shoheikoin Edo, as an example of the depth of Confucian learning that samurai engaged in practical affairs had acquired by the late Tokugawa period. Examples of Adachi's scholarly contacts are two men he befriended during the course of his education toward the end of the Tokugawa period: the Confucian scholar Mori Kiemon and the village headman Okubo Shichirozaemon. Adachi's political practice was embodied in a land reclamation project he conducted in the Shoboku district of Okayama prefecture after the Meiji Restoration of 1868. This examination reveals that Seifu saw the rise of an educated populace as desirable, and practical education in the classroom as crucial to achieving this end. The paper concludes with an examination of the scholarly connections and political ideas of Yamada Kodo, a graduate of the Kaitokudo in Osaka, and demonstrates that Adachi Seifu wasengaged in a practical implementation of Kodo's political vision.
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b><u>1. </u></b><b><u>はじめに</u></b> サイエンス・コミュニケーションとは一般的に、一般市民にわかりやすく科学の知識を伝えることとして認識されている。日本においては特に理科離れが叫ばれるようになって以降、理科教育の分野でサイエンス・コミュニケーターの重要性が叫ばれ,育成が活発化して来ている(例えばJSTによる科学コミュニケーションの推進など)。 ところで、最近日本史の必修化の検討の動きがあったり、社会の中で地理学の面白さや重要性が充分に認識されていないようにも思える。一方で一般市民に地理的な素養や視点が充分に備わっていないという問題が度々指摘される。それに対して、具体的な市民への啓蒙アプローチは充分に検討し尽くされているとは言いがたい。特に学校教育のみならず、社会人を含む一般人にも地理学者がアウトリーチ活動を積極的に行っていかないと、社会の地理に対する認識は変わっていかないと考える。 <b><u>2. </u></b><b><u>サブカルチャーの地理への地理学者のコミット</u></b> 一般社会の中でヒットしている地理的視点を含んだコンテンツは多くある。テレビ番組で言えばブラタモリ、秘密のケンミンSHOW、世界の果てまでイッテQ、路線バスの旅等の旅番組など、挙げればきりがない。また、書籍においても坂道をテーマにした本は1万部、青春出版社の「世界で一番○○な地図帳」シリーズは1シリーズで15万部や40万部売り上げている*1。これら以外にもご当地もののブームも地理に関係する。これらは少なくとも何らかの地理的エッセンスを含んでいるが、地理以外の人たちが仕掛けている。専門家から見ると物足りないと感じる部分があるかもしれないが、これだけ多くのものが世で展開されているということは,一般の人がそれらの中にある「地域に関する発見」に面白さを感じているという証といえる。 一方で地理に限ったことではないが、アカデミックな分野においては、活動が専門的な研究中心となり、アウトリーチも学会誌への公表や専門的な書籍の執筆等が多く、一般への直接的な活動が余り行われない。コンビニペーパーバックを出している出版社の編集者の話では、歴史では専門家がこの手の普及本を書くことはあるが地理では聞いたことがないそうである。そのような活動を地理でも積極的に行う余地がありそうだ。 以上のことから,サブカルチャーの中で、「地理」との認識なく「地理っぽいもの」を盛り上げている地理でない人たちと、地理をある程度わかっている地理学者とがうまくコラボして行くことで、ご当地グルメの迷走*2を改善したり、一般への地理の普及を効果的に行えるのではないかと考える。演者らはこのような活動を行う地理学者を、サイエンス・コミュニケーターをもじってジオグラフィー・コミュニケーターと呼ぶ。サブカルチャーの中で一般人にウケている地理ネタのデータ集積と、地理を学ぶ大学生のジオコミュ育成を併せてジオコミュセンターを設立してはどうだろうか。 <u>3.</u><u> 様々なレベルに応じたアウトリーチの形</u> ジオパークや博物館、カルチャースクールに来る人、勉強する気のある人たちにアウトリーチするだけではパイが限られる。勉強する気はなく、娯楽として前出のようなサブカルチャーと接している人たちに対し、これら娯楽の中で少しでも地理の素養を身につけてもらう点が裾野を広げるには重要かつ未開であり、検討の余地がある。 ブラタモリの演出家林さんによると、ブラタモリの番組構成の際には「歴史」や「地理」といった単語は出さない。勉強的にしない。下世話な話から入る。色々説明したくなっちゃうけどぐっとこらえて、「説明は3分以内で」というルールを決めてそれを守った。とのことである(Gexpo2014日本地図学会シンポ「都市冒険と地図的好奇心」での講演より抜粋)。専門家がコミットすると専門色が強くなりお勉強的になってしまい娯楽志向の一般人から避けられる。一般ウケする娯楽感性は学者には乏しいので学者外とのコラボが重要となる。 演者らは&ldquo;一般の人への地理的な素養の普及&rdquo;を研究グループの第一目的として活動を行っている。本話題のコンセプトに近いものとしてはご当地グルメを用いた地域理解促進を考えている。ご当地グルメのご当地度を星付けした娯楽本(おもしろおかしくちょっとだけ地理:地理度10%)、前出地図帳シリーズのように小学校の先生がネタ本として使えるようなご当地グルメ本(地理度30%)、自ら学ぶ気のある人向けには雑学的な文庫(地理度70%)を出す等、様々な読者層に対応した普及手段を検討中である。これを図に示すと右のようになる。
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.305-317, 2016-03-31

In this paper, I consider about the thought and business of Honda Masazane who founded the silk industry in Kanazawa, in order to understand the personality of businessmen from Hakuen-Shoin. I take up his biography named "Danshaku-Honda-Masazane-Den". As a result of this study, I found that he was inclined toward Buddhism after he graduated from Hakuen-Shoin. But, I think that he upheld the practical aspects of Confucianism. Also, I noticed that Sumitomo's managers participated in the Zen group to which he belonged at that time.
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
no.7, pp.305-326, 2014-03

文部科学省グローバルCOEプログラム 関西大学文化交渉学教育研究拠点東アジアの思想と構造
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.305-326, 2014-03-31

This paper takes a Jusha in Hakuen Shoin. Tada Kaian was one of the leading students in Hakuen Shoin. He was active as a practical person in many spheres at the end of Edo period. This paper analyzes what characteristics he had in those days and his proposals-especially the coastal defense. He made his suggestions actively to Edo Shogunate, the Imperial court and Izushi clan. He tried to promote the industries in the border area from the motives of defense against the powerful Western nations. He was clearly different from previous ordinary Jusha and loyalists to the Emperor. His proposals shows he was not only scholar but also an engineer.
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
文化交渉 : Journal of the Graduate School of East Asian Cultures : 東アジア文化研究科院生論集 (ISSN:21874395)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.125-139, 2014-09-30

Yamada Kodo was a graduate of Kaitokudo, a private educational academy in Osaka, Japan. As a politician he became involved in the educational administration of Shikama prefecture during the Meiji Restoration, and as a manager, he made eff orts to promote the local sericulture industry. This paper will focus on the relationship between Kodo and Hakuen-juku, another private educational institution based in Osaka.
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

&nbsp;<b><u>1. </u></b><b><u>はじめに</u></b> 地理学ではある場所を訪れてその地域を現地で学び理解する巡検という活動を盛んに行う。一方観光は、同じくある地域を訪れる活動だが、増すツーリズムでは特に、その地域の風土や文化、地理を学ぶという活動に結びつかない形で行われることが多い。旅行の中に巡検的要素を入れられれば、その旅行が直接的な地理の普及につながる手段になりうるのではないだろうか。演者は昨年表参道~原宿周辺の学生向け巡検の際、当該地域に対する旅行と巡検の認識の違いについて調査し報告を行った(長谷川2015)。今回は大学の授業の中で、巡検と旅行を両方行い、その融合系としての地誌的視点を取り入れた旅行ガイドブックのサンプル作成を行ったので、その成果を報告する。 &nbsp; <b><u>2. </u></b><b><u>授業の概要</u></b> 授業はお茶の水女子大学の地理学コース向けの地理環境学演習Iという科目で、4学期制の1学期に1日2コマ(1コマは90分)連続で8週間で終了するという授業である。2コマ連続の授業の利点を生かし、現地調査を3回取り入れた。履修学生は18名であった。授業は、はじめに古今書院の巡検虎の巻(東京都地理教育研究会2002)の千駄ヶ谷から原宿のページのエリアと情報を基本として、これに掲載されている情報に肉付けする形でスポットを分担して調べて室内報告をしてもらい、後日2週かけて実際にそのエリアを巡検した(分担したスポットについて、担当学生が案内者を務めた)。その後、旅行者としてこのエリアを訪れた場合にどのようなコンセプトでどこを周りたいかを室内報告してもらい、翌週実際にその場所を訪問してもらった。最後に、巡検で学んだ地域の情報と旅行とを融合させた旅行ガイドブックのサンプルを各自が作成し、最終回の授業で発表するという形で授業は終了した。 &nbsp; <br> <u>3.</u><u> 旅行のテーマ</u> 各学生の旅行プランのテーマとしては、緑、市販のガイドブックにはあまりないところをめぐる、明治神宮と外苑をつなぐルートを作る、あえてファッションとグルメ以外を訪ねる、写真を趣味とする人向けコース、ドラマのロケ地、アート、文房具、ライダー、青山霊園へ旅行者を向かわせる試み、変わった建物巡り、アニメ、等である。緑と癒し、緑とアートなどの複合形もあった。市販のガイドブックでは定番の、買い物やおしゃれといったテーマを中心としたのは1名だけであった。この時点ですでに一般的な視点からはかなり離れていることが伺える。 &nbsp; <b><u><br>4.地誌的視点を取り入れた旅行ガイドブックのテーマ</u></b> &nbsp;学生の作成した旅行ガイドブックサンプルはそれぞれ以下のようなテーマで作成されていた(作成者の意図を説明)。1)都心の緑と癒しを求めて、2)オタク文化を訪ねて(聖地巡礼など)、3)原宿・表参道の意外な魅力発見の旅、4)日本の歴史を歩いて感じるコース、5)ブラタモリファンに捧ぐ表参道さんぽ、6)子どもと楽しむ明治神宮・神宮外苑、7)ハイセンスな街 表参道で自分磨きをしよう、8)原宿・青山 歴史と散歩の旅、9)じゃらんじゃらん千駄ヶ谷、10)月曜日に巡る美術館・アート巡り(月曜日には美術館の休館日が多いため、その日でも巡れる場所を提示)、11)ハカマイラーのための歴史散歩(青山霊園は良いスポットなのに市販のガイドブックではことごとく無視されているので、なんとか青山霊園に人を呼び込めないかという工夫の成果)、12)表参道・青山の建物めぐり(変わった建物が多い) &nbsp; <br> <u>5.</u><u>学生作成のガイドブックから見えてきたこと</u> &nbsp;学生主体の地誌的視点を取り入れたガイドブックは以下のような特徴を持っていた。 ・&nbsp;&nbsp; 地誌的視点を取り入れつつも話題となっているスポットを取り入れている(聖地巡礼、ハカマイラー、文具カフェ、ブラタモリ、パワースポットなど) ・&nbsp;&nbsp; 様々なターゲット層を扱っていた ・&nbsp;&nbsp; 財布に優しい飲食店やスイーツ店、タダで見られる場所等を選定していた(逆に今人気の高額なパンケーキ店等は一人も取り上げていなかった) ・&nbsp;&nbsp; 通常の巡検でも利用できるポイントも記載(富士塚など) ・&nbsp;&nbsp; 女性的な紙面構成(ことりっぷ的) &nbsp; (本研究はJSPS科研費(課題番号26560154)を使用した。) <br> <b><u>参考文献:</u></b> 長谷川直子(2015)旅行と巡検の違いを探るー1日巡検授業実践報告&mdash;.お茶の水地理.54.31-34. 東京都地理教育研究会(2002)エリアガイド地図で歩く東京I東京区部西.101p.
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.343-361, 2013-03-27

This paper shows the aspects of human resource development institution of "private academy" in Japan like "Shoin" in China. Therefore we focus on the Kazoku that perform social activities in funding easily. As a concrete example, we take Sakurai (Matsudaira) Tadaoki (the last feudal lord of the Amagasaki clan) and Kuki Takayoshi (that of the Sanda clan) who had ruled the Settsu Province near Osaka. The Kazoku described above are considered to be affected by "private academy" in Osaka (Hakuen Shoin, Kaitokudo, Baikasha etc.). For example, Tadaoki was a member of Hakuen Shoin. Hakuen Shoin was the largest "private academy" in Osaka in the last days of the Tokugawa shogunate. We will notice Tadaoki carried out welfare activity by the incomparable idea in the Restoration period.
著者
横山 俊一
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

楕円曲線とモジュラー形式の双方の計算理論について,保型性による性質の伝搬をヒントとした高速計算理論について,幾つかの成果を得た.楕円曲線側では,主として代数体上の特定の楕円曲線の族を高速に得るためのアルゴリズムの改良を行ったほか,与えられた導手(conductor)をもつ楕円曲線の逆引きアルゴリズムの効率化を得た.一方モジュラー形式側では,主として楕円モジュラー形式の高速計算理論の精密化と,これに伴う Hecke 体の効率的な計算を進めた.また本研究で得られた成果・実装を援用し,楕円曲線暗号(ペアリング暗号)の研究においても成果を与えた.
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100040, 2015 (Released:2015-04-13)

1. はじめに サイエンス・コミュニケーションとは一般的に、一般市民にわかりやすく科学の知識を伝えることとして認識されている。日本においては特に理科離れが叫ばれるようになって以降、理科教育の分野でサイエンス・コミュニケーターの重要性が叫ばれ,育成が活発化して来ている(例えばJSTによる科学コミュニケーションの推進など)。 ところで、最近日本史の必修化の検討の動きがあったり、社会の中で地理学の面白さや重要性が充分に認識されていないようにも思える。一方で一般市民に地理的な素養や視点が充分に備わっていないという問題が度々指摘される。それに対して、具体的な市民への啓蒙アプローチは充分に検討し尽くされているとは言いがたい。特に学校教育のみならず、社会人を含む一般人にも地理学者がアウトリーチ活動を積極的に行っていかないと、社会の地理に対する認識は変わっていかないと考える。 2. サブカルチャーの地理への地理学者のコミット 一般社会の中でヒットしている地理的視点を含んだコンテンツは多くある。テレビ番組で言えばブラタモリ、秘密のケンミンSHOW、世界の果てまでイッテQ、路線バスの旅等の旅番組など、挙げればきりがない。また、書籍においても坂道をテーマにした本は1万部、青春出版社の「世界で一番○○な地図帳」シリーズは1シリーズで15万部や40万部売り上げている*1。これら以外にもご当地もののブームも地理に関係する。これらは少なくとも何らかの地理的エッセンスを含んでいるが、地理以外の人たちが仕掛けている。専門家から見ると物足りないと感じる部分があるかもしれないが、これだけ多くのものが世で展開されているということは,一般の人がそれらの中にある「地域に関する発見」に面白さを感じているという証といえる。 一方で地理に限ったことではないが、アカデミックな分野においては、活動が専門的な研究中心となり、アウトリーチも学会誌への公表や専門的な書籍の執筆等が多く、一般への直接的な活動が余り行われない。コンビニペーパーバックを出している出版社の編集者の話では、歴史では専門家がこの手の普及本を書くことはあるが地理では聞いたことがないそうである。そのような活動を地理でも積極的に行う余地がありそうだ。 以上のことから,サブカルチャーの中で、「地理」との認識なく「地理っぽいもの」を盛り上げている地理でない人たちと、地理をある程度わかっている地理学者とがうまくコラボして行くことで、ご当地グルメの迷走*2を改善したり、一般への地理の普及を効果的に行えるのではないかと考える。演者らはこのような活動を行う地理学者を、サイエンス・コミュニケーターをもじってジオグラフィー・コミュニケーターと呼ぶ。サブカルチャーの中で一般人にウケている地理ネタのデータ集積と、地理を学ぶ大学生のジオコミュ育成を併せてジオコミュセンターを設立してはどうだろうか。 3. 様々なレベルに応じたアウトリーチの形 ジオパークや博物館、カルチャースクールに来る人、勉強する気のある人たちにアウトリーチするだけではパイが限られる。勉強する気はなく、娯楽として前出のようなサブカルチャーと接している人たちに対し、これら娯楽の中で少しでも地理の素養を身につけてもらう点が裾野を広げるには重要かつ未開であり、検討の余地がある。 ブラタモリの演出家林さんによると、ブラタモリの番組構成の際には「歴史」や「地理」といった単語は出さない。勉強的にしない。下世話な話から入る。色々説明したくなっちゃうけどぐっとこらえて、「説明は3分以内で」というルールを決めてそれを守った。とのことである(Gexpo2014日本地図学会シンポ「都市冒険と地図的好奇心」での講演より抜粋)。専門家がコミットすると専門色が強くなりお勉強的になってしまい娯楽志向の一般人から避けられる。一般ウケする娯楽感性は学者には乏しいので学者外とのコラボが重要となる。 演者らは“一般の人への地理的な素養の普及”を研究グループの第一目的として活動を行っている。本話題のコンセプトに近いものとしてはご当地グルメを用いた地域理解促進を考えている。ご当地グルメのご当地度を星付けした娯楽本(おもしろおかしくちょっとだけ地理:地理度10%)、前出地図帳シリーズのように小学校の先生がネタ本として使えるようなご当地グルメ本(地理度30%)、自ら学ぶ気のある人向けには雑学的な文庫(地理度70%)を出す等、様々な読者層に対応した普及手段を検討中である。これを図に示すと右のようになる。
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 = Bulletin of the Institute of Oriental and Occidental Studies, Kansai University (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
no.50, pp.323-340, 2017-04

本稿は、科学研究費助成事業研究活動スタート支援「近代における漢学塾出身者の事業活動と実践倫理の研究―大阪の泊園書院を中心として」(課題番号15H06744、横山俊一郎研究代表)における成果の一部である。In this paper, I consider the approach and business of Nagata Nisuke, founder of the banking and railway industries in Osaka, in order to understand the personality of businessmen from Hakuen-Shoin. For this purpose I take up his biography, called "Banshu-Nagata-Okina-Den." As a result of this study, I find that he tried to reach the level of Tenjin-Mibun through self-cultivation. I believe that his goal was to build a fair economic society while taking up the challenges of fearlessly developing his own business. I also note that he promoted the spirit of Bushido to affluent merchants who were war profiteers.
著者
横山 俊一 長谷川 直子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b><u>1. </u></b><b><u>はじめに</u></b><br><br>娯楽指向の一般の人たちへ地理的視点を広めるには、世の中で広く受け入れられている地理コンテンツを活用するのが得策であると考える。そこで演者らは、一般普及に効果のある地理コンテンツの形式や現状について調査してきたが<sup>*</sup><sup>1</sup>、日常的に見られるテレビ番組や雑誌など一般社会での地理的コンテンツへのニーズは潜在的に存在していることが確認できた。そのようななか、比較的安価な値段でコンビニなどで販売されているペーパーバック書籍に注目した。本発表ではこれまでに確認できた地理的な内容を含んでいると考えられるペーパーバック書籍を中心に、その特徴について報告する。<br><b><u>2. </u></b><b><u>コンビニペーパーバックについて</u></b><b></b><br>コンビニペーパーバックは多くの種類が販売されているが、当初人気マンガの廉価版としてはじまった。1冊500円程度の値段で手軽に購入できることから売り上げも伸び、マンガ以外のアイドルなどの芸能関連、マニアックな歴史ものなど種類も増えていった。そのようなことか様々な出版社からペーパーバック書籍が販売されることとなり、地理的コンテンツを含んだペーパーバックも出版されるようになった。特にD社の地図帳シリーズは1シリーズで40万部を売り上げ学校教員も参考として購入している<sup>*2</sup>。地理的コンテンツを含んだペーパーバックを多数出版しているD社であるが、ここ数年は文庫や新書の販売にシフトしている。<br><b><u>3.</u><u> 方法</u></b> <br>これまにコンビニで販売されたペーパーバックの中から地理的コンテンツを含んだものがどれくらい出版されているのかを各出版社のwebサイト、出版年鑑などから調査しており、書籍のタイトルに「地図」「地名」「地理」というキーワードのあるもの、またそれに近い地理的な要素となる単語を含むもの(都市、都道府県、日本、世界、紀行、鉄道)を基準として実物の書籍の確認を行っている。それらの編著者、出版社、総ページ数、出版年、サイズ、価格等をデータベース化している。<br><b><u>4.</u><u> 結果</u> </b><br>タイトルは表1にあるように「地図」あるいは「地図帳」となっているものが圧倒的に多い。これは演者らがこれらの出版社の編集者に聞き取りを行ったときにも、「地理」というよりも「地図」といったほうが一般受けがいいと言われたことと矛盾しない。ペーパーバックの著者名は◯◯地理研究会や◯◯地理学会といったものもが多く一見アカデミックなものとなっているが、これらのほとんどは学術団体ではなくライター集団が名乗っている名前である。1冊のみ地理学者が監修した本がある。<br><b><u>5.</u></b><b><u> 考察</u></b><b> </b><b></b><br>D社の№16-23の地図帳シリーズは40万部を売り上げたということからも、地理の一般への普及手段としてペーパーバックは見逃せない。そしてこの地図帳シリーズの購入者として、学校教員も多いということからも地理教育の面からも重要である。地理学研究者の書籍の多くは専門分野のフィードバックであり、専門書やさらに平易に記した新書などが中心である。これは自らか学ぼうとする人や知的好奇心の強い一般の人には非常に有効である。しかし自ら学ぶ意欲の少ない人を対象とした場合、その取っ掛かりには限界がある。そこでコンビニを中心として販売されているペーパーバックをもちいることで地理の一般普及が進んでいくのではと考える。
著者
長谷川 直子 宮岡 邦任 元木 理寿 大八木 英夫 谷口 智雅 戸田 真夏 山下 琢巳 横山 俊一
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100036, 2013 (Released:2014-03-14)

2013年春の日本地理学会において、地理学の社会的役割を考えるというシンポジウムが開催された。発表者の何人かは、一般の人に地理学的な視点(広い視野、総合的な視点、現象間の関係性を理解する)がないことが問題であると指摘していた。それでは一般の人にそのような視点を持ってもらうためにはどうしたら良いか。具体的に何か作成し、普及できないか。そのような視点に立ち、筆者らは2013年春から研究グループを立ち上げて活動を開始している。地誌学的な視点の一般への普及の手段として、地誌学の視点から地域を理解する教材を子供向け(義務教育における副読本や教員向け実践実例集等)と大人向け(旅行ガイドブック)に作成できないか考えた。現在市販されているガイドブックを地誌学の視点から眺めると、単なるスポット・事象の羅列になっており、スポット間の関係性や、スポット・事象がそこに存在する理由などの地誌学的説明が見られない。旅行ガイドブックにこれらの説明をうまく入れられれば、旅行者がガイドブックを読むことで地誌学的視点が身に付くようになるのではないかと考えられる。そして、観光ガイドブックにどのように項目を取り上げ、地誌学的な記載をするかについて、検討を行った。
著者
横山 俊一郎
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.305-326, 2014-03-31

文部科学省グローバルCOEプログラム 関西大学文化交渉学教育研究拠点