著者
近澤 征史朗 小林 秀樹 堀 泰智 星 史雄 金井 一享 伊藤 直之 佐藤 淳 山本 祥大 立花 麻子 春原 瑠美 打出 毅 折野 宏一 渡辺 清隆 樋口 誠一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.71-77, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
28

犬の多中心型リンパ腫(Multicentric Lymphoma: ML)における血清フェリチン濃度を指標とした病態モニタリングの有用性を評価した。ELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)法を用いて測定したMLの診断時血清フェリチン濃度は健常犬と比較して有意に高値を示し(平均値±標準偏差:1448±546および373±122 ng/ml,p<0.0001),化学療法の経過に伴って大きく変動した。また,完全寛解時の血清フェリチン濃度は健常犬と同等レベルまで低下し,再燃時には再び上昇する傾向を認めた。血清フェリチン濃度は他の悪性腫瘍,炎症など様々な疾患で高値を示すためMLの初期診断には適さないものの,MLの再燃予測あるいは抗がん剤治療中の病態モニタリングに有用な指標になり得る可能性が示唆された。
著者
中郡 昭人 打出 毅 天間 恭介 KENNEDY Richard H. KLIMBERG Suzanne V. 原 幸男 佐々木 卓士 明樂 泰
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.1315-1322, 2001-12-25
被引用文献数
2 9

ラット心房筋標本において, カルバコールは濃度依存的な陰性変力作用を発現した.ドキソルビシン1時間のインキュベーションは, このカルバコールによる濃度反応曲線を右方移動させた.しかし, ドキソルビシン4時間のインキュベーションは, 右方移動とともに最大効果も有意に減少させた.また, ドキソルビシン4時間のインキュベーションは, アデノシンA_1受容体作動薬であるR-phenylisopropyl adenosine(R-PIA)の陰性変力作用の最大効果も有意に減少させた.しかし, R-PIAの濃度反応曲線の右方移動は観察されなかった.ホモジネートまたは一部精製膜標本を用いた薬物-受容体結合実験で, ドキソルビシンは[^3H]quinuclidinyl benzilateの結合量を減少させたが, [^3H]R-PIAの結合には影響を与えなかった.カルバコールの陰性変力作用のドキソルビシンによる最大効果の減少は, ムスカリン受容体とアデノシンA_1受容体機構に共通した情報伝達系に関係して起こっているものと思われた.