- 著者
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堀 泰智
- 出版者
- 日本獣医循環器学会
- 雑誌
- 動物の循環器 (ISSN:09106537)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.1-9, 2011 (Released:2011-09-08)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
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近年,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)やB-タイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)などの心臓バイオマーカーに関する基礎的および臨床的研究成果が蓄積され,心臓バイオマーカーを応用した診療が広く普及しつつある。本総説では,基礎的および臨床的研究データを交えながら心臓バイオマーカーの生理的分泌および代謝機構,測定値の臨床的解釈,測定時の注意点などについて解説したい。ヒトをはじめイヌおよびネコの慢性心疾患患者では,血中ANPやBNP, NT-proBNP濃度が重症度に関連して上昇している。これら心臓バイオマーカーは慢性心不全犬の診断や予後予測に有用であると考えられるが,ANPとBNPの臨床的意義は異なっている。ANPは主に心房筋の伸展刺激によって即座に血中へ分泌され,BNPは主に心室筋の伸展刺激によって血中に放出される。また,ANPは心房が伸展刺激を受けた直後から血中濃度に反映されるが,BNPは心室筋が伸展刺激を受けた後から血中濃度に反映されるまでにタイムラグが存在する。これらのことから筆者は,ANPは急性および慢性のうっ血マーカーとして,NT-proBNPは心室筋の負荷や障害のマーカーとして使い分けている。しかし,心臓バイオマーカーの測定値のみで病態を判断することは危険であり,一般身体検査や胸部X線検査,心エコー図検査などと組み合わせた評価が必要である。