著者
古澤 優佳 斉藤 正一 千葉 翔 高橋 文
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.66-70, 2016 (Released:2017-12-01)
参考文献数
22
被引用文献数
2

全国的に個体数が増加傾向にあるニホンジカは,多雪地帯のため冬季の生存が困難とされてきた東北地方の日本海側でも急速に分布を拡大しており,山形県でも目撃され始めた。このため,初期動態の把握を目的に,寄せられた目撃情報の内容や目撃地の立地環境を分析した。その結果,シカは全県に生息している可能性が高く,近年は庄内地方南部と西置賜地方で目撃が多い傾向が見られた。また,目撃地は,周囲が森林で近くに道路や河川がある平坦な耕地で,特に,開けていて見通しが良く人的利用が多い場所の傾向が高く,日中に森林から一時的に出てきた際に目撃されている可能性が高かった。
著者
斉藤 正一 岡 輝樹
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.94-98, 2003
被引用文献数
2

山形県におけるクマ有害駆除数に関連する要因について解析し,駆除数予測の可能性を検討した。春季有害駆除数は消雪日から回帰することができたが,夏秋季有害駆除数を予測するための因子は検出できなかった。しかしながら各年の有害駆除数の増減は堅果類の凶作指数の増減に応答する傾向があり,堅果類の豊凶を予測するシステムの充実が適正な被害防除法の確立に寄与するであろうと考えられた。
著者
斉藤 正一 柴田 銃江
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.223-228, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
30
被引用文献数
13 15

ナラ枯れ被害を受けやすい森林特性や, 被害林再生の見込み, ナラ枯れが農山村の生活基盤に及ぼす影響を検討するため, 山形県において, ナラ林のタイプや被害程度の異なる林分の森林構造や, 被害木の分解過程などを調べた。ナラ枯れが始まってから10年内には, ほとんどのミズナラ林冠木は枯死したが, コナラ林冠木は少なくとも4割程度が生存した。激害ミズナラ林の林冠層植被率は28%だったが, 激害コナラ林では47%だった。さらに, コナラ林の亜高木層には少数ながら高木性樹種もみられた。そのため, ミズナラ林では高木層を欠く状態が長く続くが, コナラ林ではある程度の林冠修復が期待できる。しかし, 実生稚樹による天然更新は, ユキツバキを主とする常緑広葉樹が低木層を占有し続けるため, どちらのナラ林タイプでも困難だろう。また, ナラ枯れ枯死木の多くが5年ほどで倒伏したことから, 被害激化地域では, 倒木による電線切断や道路閉鎖などのライフラインの障害が数年内に頻繁に発生することが危惧される。
著者
斉藤 正一 中村 人史 三浦 直美 三河 孝一 小野瀬 浩司
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.58-61, 2001-02-16
被引用文献数
4

山形県内のナラ類の集団枯損被害地で, カシノナガキクイムシの脱出状況と被害木の枯死経過を6年間調査し, カシノナガキクイムシと枯死に関与する特定の菌類(仮称ナラ菌)の動態に関する試験を行って, これらの相互関係を検討した。カシノナガキクイムシは, 6月下旬に短期間かつ大量に羽化脱出し健全木に穿入して, 8月上旬に被害木は枯死することが確認された。また, 羽化脱出初期の時期と枯死に関する時間的経過との間には有意な関係が見出された。ナラ菌伝搬に関する実験と時期別のナラ菌の接種試験の結果から, カシノナガキクイムシは枯死に関与するナラ菌を樹幹内に伝搬し, 羽化脱出初期の時期と同様の接種時期にのみ枯死が発生したことから, ナラ類の枯死経過には, カシノナガキクイムシの穿入と伝搬されたナラ菌の樹幹内での動態が関連することが強く示唆された。