- 著者
-
斉藤 正一
柴田 銃江
- 出版者
- 日本森林学会
- 雑誌
- 日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
- 巻号頁・発行日
- vol.94, no.5, pp.223-228, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
- 参考文献数
- 30
- 被引用文献数
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ナラ枯れ被害を受けやすい森林特性や, 被害林再生の見込み, ナラ枯れが農山村の生活基盤に及ぼす影響を検討するため, 山形県において, ナラ林のタイプや被害程度の異なる林分の森林構造や, 被害木の分解過程などを調べた。ナラ枯れが始まってから10年内には, ほとんどのミズナラ林冠木は枯死したが, コナラ林冠木は少なくとも4割程度が生存した。激害ミズナラ林の林冠層植被率は28%だったが, 激害コナラ林では47%だった。さらに, コナラ林の亜高木層には少数ながら高木性樹種もみられた。そのため, ミズナラ林では高木層を欠く状態が長く続くが, コナラ林ではある程度の林冠修復が期待できる。しかし, 実生稚樹による天然更新は, ユキツバキを主とする常緑広葉樹が低木層を占有し続けるため, どちらのナラ林タイプでも困難だろう。また, ナラ枯れ枯死木の多くが5年ほどで倒伏したことから, 被害激化地域では, 倒木による電線切断や道路閉鎖などのライフラインの障害が数年内に頻繁に発生することが危惧される。