著者
添田 暢俊 斎藤 拓朗 竹重 俊幸 浅野 宏 武藤 亮 高間 朗 渡部 晶之 遠藤 俊吾 五十畑 則之 三潴 忠通 鈴木 朋子 金子 明代 伊関 千書 関本 信一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.011-018, 2015-01-31 (Released:2015-05-13)
参考文献数
25

要旨:消化器外科手術後では術後せん妄の併発により重篤な合併症を併発することがある。抑肝散はせん妄に対する効果が報告されているが,経口摂取が困難な時期には使用しにくい。そこで抑肝散の座薬を作成し安全性と効果を検討した。【方法】座薬は漢方薬エキス製剤にホスコH─15を加えて作成し1日4回使用した。消化器外科手術を行った227例を対象とし,せん妄の程度は8時間毎にNEECHAM Confusion Scale(以下,Nスケール)により評価し。治療は抑肝散を第一選択とし8時間後にNスケール20pt以上へ上昇した場合を有効と判定した。【成績】227例中,Nスケール19点以下のせん妄は26例(11.5%)に認めた。この26例中23例に対して抑肝散座薬を使用し,有害事象を認めず,17例(73.9%)で有効であった。【結論】消化器外科手術後のせん妄において,抑肝散座薬は安全に使用可能で73.9%で効果を認めた。
著者
塚田 学 斎藤 拓朗 土屋 貴男 佐藤 佳宏 見城 明 佐藤 直 阿部 幹 後藤 満一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1205-1209, 2003-08-01
参考文献数
23
被引用文献数
6

外傷性腹壁ヘルニアはまれな疾患である.今回,外傷直後にSpigelian腱膜部(傍腹直筋外緑部)に発症した外傷性腹壁ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は20歳の男性.平成13年6月10日,交通事故にて受傷し下腹部の痛みを主訴として当科へ搬送された.左右両側のSpigelian腱膜部にそれぞれ,自発痛と圧痛を伴う5×3cmの膨隆と3×2cmの腱膜欠損を触知した.腹部CT上,左傍腹直筋外縁の膨隆部には皮膚直下に小腸を認め嵌頓ヘルニアの状態であったが,徒手整復にて容易に還納できた.その他,腰椎骨折,左大腿骨骨折,肺挫傷,外傷性肝損傷(日本外傷学会分類Ib)を認めた.左大腿骨骨折に対する観血的整復術および腰椎骨折のため約3か月に及ぶ臥床を要し,この間の安静によりヘルニアは保存的に治癒した.外傷性腹壁ヘルニアは通常手術が必要とされているが本症例のように膨隆がなく経時的に腱膜欠損が縮小傾向を認める場合は保存的に治癒する可能性がある.
著者
斎藤 拓朗 大石 明雄 管野 隆三 菅野 智之 井上 仁 元木 良一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.573-578, 1991-08-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

HCG産生肺扁平上皮癌の1症例を報告する.症例は47歳の女性で, 胸部X線異常陰影を主訴に来院した.血中, 尿中HCGが高値で, 胞状奇胎の既往歴があることから子宮絨毛癌の肺転移を疑い, 化学療法及び単純子宮全摘術, 肺楔状切除術を施行した.摘出子宮には異常無く, 肺切除標本の病理学的検査からHCG産生肺扁平上皮癌の診断を得たため左肺切除術及び縦隔リンパ節郭清を追加した.術後1年8カ月を経た現在も再発の兆候は認められない.
著者
斎藤 拓朗 添田 暢俊 樋口 光徳 押部 郁朗 渡部 晶之 根本 鉄太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.299-313, 2017-07-25 (Released:2017-08-29)
参考文献数
123

わが国は,2035年には3人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎える.高齢者の周術期管理では術前,すでに複数の慢性疾患を有する場合が多く,特に糖尿病に対する対策は重要である.血糖コントロールの目標は日本糖尿病学会と日本老年医学会合同委員会の目標設定に準じる.周術期における具体的な血糖値は強化インスリン療法ではなく血糖180 mg/dlを目安とし,インスリンを併用する管理が推奨されている.手術に伴うリスク評価では,フレイル,サルコペニアなどに留意し,さらに社会的背景も考慮した高齢者総合的機能評価(CGA)に基づく総合的評価を要する.フレイル,サルコペニアは栄養障害と密接な関係にあり,感染症をはじめとする術後合併症を回避するという観点から,術前および術後における適切な栄養管理とリハビリテーションを行う必要がある.術後は術後回復力強化プログラムが注目されており,高齢者を対象とした研究でも一定の成果を認めている.しかし,高齢者では,術式によりその優位性が明らかとならない場合もあり,対象者の選択基準を詳細に検討するなどの慎重な適用が望まれる.術後せん妄は,多くの高齢者にみられ,また制御に難渋する合併症である.せん妄の治療には,まず原因の除去と環境調整を行い,適切な評価ツールにより鎮静レベルを評価しつつ薬物療法を併用する.周術期感染症管理では栄養状態の維持・改善につとめ,各種ガイドラインを遵守し適切な管理を行う.高齢であることはすでに手術部位感染(SSI)の高リスクであることを念頭におき,手術侵襲に応じた抗菌薬の選択と投与期間を設定する必要がある.