著者
米地 敦 樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.193-198, 2002-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

症例は56歳女性.持続腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: 以下CAPDと略す) 施行中に透析液の消失と胸水貯留があり精査のために当院に入院した.胸腔腹腔シンチで横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下に手術施行し横隔膜に責任病変を認め外科的な治療にてCAPDの再開に成功した.横隔膜交通症は保存的に加療されることが多く, その半数でCAPDを断念し血液透析に移行している.外科的に治療された症例を検索したところ12例の報告があり, 10例でCAPDの再開に成功していた.胸腔鏡下手術は侵襲が少なく優れた術式であり, 責任病変の有無を調べるという診断的意味も含めて有効な手段だと考えられる.
著者
樋口 光徳 郡司 崇志 鈴木 弘行 櫛田 正男 矢内 康一 管野 隆三 大石 明雄 薄場 彰 井上 仁 元木 良一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.34-39, 1997-01-15 (Released:2009-11-10)
参考文献数
28
被引用文献数
4 2

検診で胸部異常陰影を指摘され原発性結節性肺アミロイドーシスと診断された48歳の男性を経験したので報告する。胸部X線写真およびCT上, 両側肺に石灰化を伴う多発性の結節影 (2~20mm) を認めた.術前, 気管支鏡下検査で確定診断が得られず, 胸腔鏡下に最も大きな左肺S9の腫瘍 (20×18×15mm) を切除した.組織学的検索でAA型アミロイドーシスであることが判明した。術後の全身検索では他臓器にアミロイドの沈着を認めず, 原発性肺アミロイドーシスと診断した.退院後16ヵ月の現在も特記すべき症状の変化もなく経過良好である.原発性肺アミロイドーシスは術前に診断を確定することは困難であるが肺癌との鑑別および確定診断のため胸腔鏡検査は有用である.また, AA型アミロイドーシスは, 結合織疾患や原発性マクログロブリン血症, あるいは悪性リンパ腫などを併発することがあり, 長期にわたる経過観察が必要である.
著者
斎藤 拓朗 添田 暢俊 樋口 光徳 押部 郁朗 渡部 晶之 根本 鉄太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.299-313, 2017-07-25 (Released:2017-08-29)
参考文献数
123

わが国は,2035年には3人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎える.高齢者の周術期管理では術前,すでに複数の慢性疾患を有する場合が多く,特に糖尿病に対する対策は重要である.血糖コントロールの目標は日本糖尿病学会と日本老年医学会合同委員会の目標設定に準じる.周術期における具体的な血糖値は強化インスリン療法ではなく血糖180 mg/dlを目安とし,インスリンを併用する管理が推奨されている.手術に伴うリスク評価では,フレイル,サルコペニアなどに留意し,さらに社会的背景も考慮した高齢者総合的機能評価(CGA)に基づく総合的評価を要する.フレイル,サルコペニアは栄養障害と密接な関係にあり,感染症をはじめとする術後合併症を回避するという観点から,術前および術後における適切な栄養管理とリハビリテーションを行う必要がある.術後は術後回復力強化プログラムが注目されており,高齢者を対象とした研究でも一定の成果を認めている.しかし,高齢者では,術式によりその優位性が明らかとならない場合もあり,対象者の選択基準を詳細に検討するなどの慎重な適用が望まれる.術後せん妄は,多くの高齢者にみられ,また制御に難渋する合併症である.せん妄の治療には,まず原因の除去と環境調整を行い,適切な評価ツールにより鎮静レベルを評価しつつ薬物療法を併用する.周術期感染症管理では栄養状態の維持・改善につとめ,各種ガイドラインを遵守し適切な管理を行う.高齢であることはすでに手術部位感染(SSI)の高リスクであることを念頭におき,手術侵襲に応じた抗菌薬の選択と投与期間を設定する必要がある.
著者
樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-39, 2003-02-20

背景.野口の分類A,B型の微小肺腺癌の予後は良好であり,この型の肺癌に悪性胸水を認めたとする報告はない.症例.42歳,女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院受診.胸部CTにて左S^<1+2>に径4mm大のGGO(ground glass opacity)を認めた.全身検索では他病巣を認めなかった.2000年8月11日,術直前にCTガイド下に腫瘍近傍にマーキングを行った後,左上大区区域切除術(ND0)を施行した.この際,胸腔内に漿液性の胸水を少量認め,細胞診にてclass V (高分化型腺癌)と診断された.主病巣はlocalized bronchioloalveolar carcinoma (野口の分類A型)と診断された.術後補助化学療法を施行し,1年9ヶ月経過した現在,局所再発・遠隔転移の兆候なく生存中である.野口A,B型では悪性胸水を認めたとする報告はなく,本症例ではその発生機序に疑問が残る.検体の再評価では上皮性マーカーに陽性であり,悪性所見は否定できなかった.結論.整合性のない病理所見に対しては検体の再評価を行い,臨床経過も考慮して総合的に診断する必要があると思われた.(肺癌.2003 ; 43 : 35-39)