著者
塚田 学 斎藤 拓朗 土屋 貴男 佐藤 佳宏 見城 明 佐藤 直 阿部 幹 後藤 満一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1205-1209, 2003-08-01
参考文献数
23
被引用文献数
6

外傷性腹壁ヘルニアはまれな疾患である.今回,外傷直後にSpigelian腱膜部(傍腹直筋外緑部)に発症した外傷性腹壁ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は20歳の男性.平成13年6月10日,交通事故にて受傷し下腹部の痛みを主訴として当科へ搬送された.左右両側のSpigelian腱膜部にそれぞれ,自発痛と圧痛を伴う5×3cmの膨隆と3×2cmの腱膜欠損を触知した.腹部CT上,左傍腹直筋外縁の膨隆部には皮膚直下に小腸を認め嵌頓ヘルニアの状態であったが,徒手整復にて容易に還納できた.その他,腰椎骨折,左大腿骨骨折,肺挫傷,外傷性肝損傷(日本外傷学会分類Ib)を認めた.左大腿骨骨折に対する観血的整復術および腰椎骨折のため約3か月に及ぶ臥床を要し,この間の安静によりヘルニアは保存的に治癒した.外傷性腹壁ヘルニアは通常手術が必要とされているが本症例のように膨隆がなく経時的に腱膜欠損が縮小傾向を認める場合は保存的に治癒する可能性がある.
著者
米地 敦 樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.193-198, 2002-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

症例は56歳女性.持続腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: 以下CAPDと略す) 施行中に透析液の消失と胸水貯留があり精査のために当院に入院した.胸腔腹腔シンチで横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下に手術施行し横隔膜に責任病変を認め外科的な治療にてCAPDの再開に成功した.横隔膜交通症は保存的に加療されることが多く, その半数でCAPDを断念し血液透析に移行している.外科的に治療された症例を検索したところ12例の報告があり, 10例でCAPDの再開に成功していた.胸腔鏡下手術は侵襲が少なく優れた術式であり, 責任病変の有無を調べるという診断的意味も含めて有効な手段だと考えられる.
著者
樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-39, 2003-02-20

背景.野口の分類A,B型の微小肺腺癌の予後は良好であり,この型の肺癌に悪性胸水を認めたとする報告はない.症例.42歳,女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院受診.胸部CTにて左S^<1+2>に径4mm大のGGO(ground glass opacity)を認めた.全身検索では他病巣を認めなかった.2000年8月11日,術直前にCTガイド下に腫瘍近傍にマーキングを行った後,左上大区区域切除術(ND0)を施行した.この際,胸腔内に漿液性の胸水を少量認め,細胞診にてclass V (高分化型腺癌)と診断された.主病巣はlocalized bronchioloalveolar carcinoma (野口の分類A型)と診断された.術後補助化学療法を施行し,1年9ヶ月経過した現在,局所再発・遠隔転移の兆候なく生存中である.野口A,B型では悪性胸水を認めたとする報告はなく,本症例ではその発生機序に疑問が残る.検体の再評価では上皮性マーカーに陽性であり,悪性所見は否定できなかった.結論.整合性のない病理所見に対しては検体の再評価を行い,臨床経過も考慮して総合的に診断する必要があると思われた.(肺癌.2003 ; 43 : 35-39)
著者
別府 真琴 左近 賢人 後藤 満一 疋田 邦彦 平井 健清 村井 紳浩 谷口 積三 吉本 信次郎 青木 栄三郎 上原 教良
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.269-274, 1979-04-01

1897年Dieulafoyは,胃上部の微小な孤立性粘膜欠損の底部において動脈が破裂する大量出血を経験し,Exulceratio simplex(以後Esとよぶ)と命名し報告した.以来欧州圏では,このような胃上部にみられる動脈性出血をEsと呼ぶようになったが,英語圏においてはEsについての報告はほとんどみられず,本邦においてもこのような症例がみられても出血性胃炎あるいは胃潰瘍出血としてとりあつかわれていると思われる.しかしこの病態は手術による止血以外に救命しえなく,保存的療法で止血しうる可能性のある上記2疾患とは臨床上はっきり区別してとりあつかい,適切な処置がなされる必要があると考えられる.著者らはEsと考えられる3例を経験したので報告し,その臨床的意義ならびに問題点について考察を加えた.