著者
新井 竜治
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-15, 2019-03-31

国家総動員法が施行された戦時下で開催された三越・髙島屋・白木屋の新作家具展示会の家具図は,実用家具の設計製作技術の情報共有の名目の下,洪洋社発行の『近代家具装飾資料』誌上で公開されたものであった。昭和戦前期の木材工芸界(家具産業界)を牽引した各百貨店の家具装飾部の家具図には,次のような標準化された共通点が見られた。①正投影図法の第三角法による三面図(正面図・側面図・平面図)の全部,または二面(正面図・平面図,または正面図・側面図)で描かれている。②寸法数値単位が尺寸である。③着彩はないが,木理(杢目),裂地模様などの意匠表記がある。④構造図,機能図,部品図という構造機能表記がある。
著者
新井 竜治
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.11-35, 2009-03-31
被引用文献数
1

平成15年度から19年度にかけて本学住居学科に在籍してインテリアの学びを志した学生に対する、インテリア関連の資格取得支援によって、多くの学生が在学中に希望する各種公的民間資格を取得することができた。特にこの間、インテリアコーディネーター資格試験という超難関の資格試験に合格して、在学中に学生インテリアコーディネーターになって卒業した学生を5名輩出できたことは大きな成果であった。そこには、学生本人の明確なモチベーション、信頼度が高く効率的なカリキュラム、一人一人に向かい合う指導姿勢が存在していた。しかしながら、難度の高い資格を取得できずに卒業した学生も大勢いたことも事実である。そこには、学生本人が培ってきた基礎学力の差という問題があった。この基礎学力は高校時代までに培うべきものであるが、昨今は入学時の学力不足問題もあることから、短大教育における専門教育と共に、幅広い基礎教養教育も重要である。
著者
新井 竜治
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.39-52, 2016-03-31

トーマス・チッペンデールは透視図法・投影図法という二つの異なる種類の製図法を自身の指導書に採用した。透視図は家具の全体像を顧客である貴族・紳士に伝えるためであった。対照的に、投影図は家具の詳細寸法を同業者もしくは下職の箱物家具職人に伝えるためであった。チッペンデールは投影図として平面図・正面図・側面図・断面詳細図を描いた。椅子はすべて透視図で描かれた。机・箱物家具は透視図・投影図のいずれか、もしくは両方で描かれた。
著者
新井 竜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

明治・大正・昭和戦前期の東京市芝区の「家具の図面屋の草分け的存在」であった木村貞は、東京家具之友社から発行された『西洋家具圖案カタログ』(1929・30年)において、顧客・家具商・家具職人の間の意思疎通を図るための家具図として、投影図の三面図を使用している。その主なものは「正面図・側面図」であり、台物家具等のみ三面図全部(正面図・側面図・平面図)を用いている。更に印影を施すことによって、正面図・側面図を立体的に見せている。そしてこの作画法は、東京市芝区の後久洋家具店や三越百貨店家具加工部においても見られた。それから木村貞は、東京家具之友社発行の『新國風家具圖案カタログ』(1936・37年)において、その約半数に印影を施した擬似2消点透視図を新たに導入している。それ以外については、印影が施された投影図の「正面図・側面図」又は「正面図のみ」を使用している。これらは顧客が洋家具の概観をより理解し易いようにするための対応であった。
著者
新井 竜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.85-94, 2009-03-31
被引用文献数
4

戦後日本の木製家具メーカー及びベッドメーカーの家具を評価する一つの有効な指標はグッドデザイン賞である。本研究では、先行研究文献資料及び日本産業デザイン振興会のグッドデザインファインダーにおける半世紀分のGマーク商品の精査により、以下のことが判明した。この間に選定された木製家具メーカー及びベッドメーカーの家具の大半は、戦後日本人の生活様式を大きく変えた脚物家具とベッドであった。秋田木工、天童木工、コスガ、ヤマカワラタン、飛騨産業、二葉工業といった主要木製家具メーカーは、社外デザイナーを積極的に活用しつつ、社内デザイン部門と連携して、主に脚物家具のデザイン開発に取り組んだ。その受賞時期は主に60年代であり、意匠はミッドセンチュリー・モダンスタイル及びジャパニーズ・モダンスタイルであった。また西川産業、フランスベッド、アイシン精機といった主要ベッドメーカー各社には強力な社内デザイン部門が存在しており、主に普通ベッドのデザイン開発に注力した。その受賞時期は主に80年代であった。
著者
新井 竜治
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.2_11-2_20, 2013-07-31 (Released:2013-09-30)
参考文献数
41

昭和戦前期の東京地区百貨店における新作家具展示会に出品された洋家具には、アール・デコ調、近代合理主義モダン、國風家具、様式家具、ペザント家具(農民家具)等、多様な家具スタイルが混在していた。またその家具設計者の中には戦前期・戦後期を通して活躍した人々がいた。一方、終戦直後期から高度経済成長期の東京地区百貨店の新作家具展示会では、一部に戦前の延長としての多様な家具スタイルが見られたが、全体として簡素なユティリティー家具、近代合理主義モダンの家具が比較的多く見られた。そして小住宅向け・アパート向けの簡素な量産家具が全盛になった。この百貨店専属工場で開発された新作家具の展示会は、1950 年代末頃から、家具製造業・販売業における位置が相対的に低下し始めた。代わりに欧米輸入家具展・官展・家具組合展・木製家具メーカーの個展等が百貨店各店において盛大に開催されるようになっていった。
著者
新井 竜治
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.47, 2013 (Released:2013-06-20)

木檜恕一による家具図の変遷には、家具図における第三角投影法の定着過程が見られる。また寸法表記が尺寸からセンチメートルへと変化する過程が見られる。木檜恕一の初期の著作の家具図は『Modern Cabinet Work: Furniture and Fitments』(1909年)等の家具図を原図として、自ら新しく描き起こしたものであった。このように木檜恕一らが指導して定着させた近代日本における木製家具産業は、20世紀初頭の英国・米国の木製家具産業の標準的な製作方法を日本国内に適用したものであった。そして遅くとも1924(大正13)年までに、家具の標準設計及び標準加工品が存在するようになった。また同時期までに、標準設計を変更する能力と精密な原寸図を描く能力が家具製作業者に備わった。また昭和戦前期には、断面詳細図・原寸図・仕様書・見積書を作成する能力までもが備わった。そしてこれは、木檜恕一を始めとする木材工芸研究者たちによる全国の家具木工業者への集中的かつ熱心な教育普及活動の成果であった。
著者
新井 竜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.93-102, 2009-07-31
被引用文献数
3

天童木工の一般家庭用家具シリーズは住宅の室内を総合的に構成するものであった。また官公庁・公共施設・一般企業向け家具シリーズには、日本で最初に開発されたオフィス・システム家具シリーズであるOFgroup-1とその後続シリーズ、図書館用家具・高齢者福祉用家具・ベンチ・テーブル・大会議テーブル等の各シリーズがあった。そして天童木工は1986年から93年まで官公庁・公共施設・一般企業向け家具に特化していた。次に、60年代の天童木工家具デザインコンクールには、その作品の量産化よりも、家具デザイナーに研鑽の場を提供したという意義があった。また天童木工名作家具のデザイナーの中では、特に剣持勇の貢献が大きかった。それから、天童木工は50・60年代にアメリカ、北欧、ブラジルのモダニズムの影響を受けたミッドセンチュリー・モダニズムの家具を製作した。またジャパニーズ・モダニズムの家具も製作した。更に80年代にはポスト・モダニズムの影響を受けた家具を製作した他、構造体の美を追求する後期モダニズムの影響を受けた家具も製作した。