著者
梅田 泰圭 新海 明 宮下 直
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.95-99, 1996 (Released:2007-03-29)
参考文献数
12
被引用文献数
8 8

ミジングモ属 (Dipoena) 3種の捕獲していたアリの種, サイズ, 個体数を調査した. シモフリミジングモ D. punctisparsa は比較的小型のケアリ属を専食し, 大型の個体は一度に多数のアリを捕獲する傾向がみられた. ボカシミジングモ D. castrata の餌はケアリ属とオオアリ属が中心で, ほとんどが単数のアリを捕獲していた. 本種は成長にともない, 大きいアリを捕らえる傾向があった. カニミジングモ D. mustelina は非常に小型の種から大型の種までさまざまな種のアリを捕獲していた.
著者
新海 明 新海 栄一
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.149-154, 2002 (Released:2007-03-29)
参考文献数
17
被引用文献数
3 5

ムツトゲイセキグモは日本にいる稀産の2種のナゲナワグモ類のうちのひとつである. 本報告は, 野外におけるムツトゲイセキグモの生活史, 若令幼体がもちいる餌捕獲法, および本種のメス成体や亜成体がもちいる「投げ縄」網の作成行動についてのはじあての観察記録である. ムツトゲイセキグモは年一世代の多回 (3-6回) 産卵のクモであり, ふ化した幼体は卵のう内でそのまま越冬した. 若令幼体とオスは投げ縄を使わず, 葉の縁で狩りをしていると考えられた. 亜成体と成体のメスは蛾を捕獲するために投げ縄を使用した. 投げ縄作成行動は, 投げ縄を第1脚のかわりに第2脚でもつ以外はナゲナワグモ属のものとまったく同一だった. ときどき, 2個の粘球がついた投げ縄を作ることがあった.
著者
新海 明
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.11-22, 1985 (Released:2007-03-29)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

ジョロウグモとオオジョロウグモの網構造を比較した。両種の幼体の網は barrier web (迷網) の形状を除き同じ構造であり, その主網は普通の円網に似ていた。一方, 両種の雌成体の網にはいくつかの点で違いがみられた。すなわち, ジョロウグモの網はオオジョロウグモにくらべて非相称性がより強く, ジョロウグモの網には分枝•二分割糸•迷網が認められた。しかし, オオジョロウグモでは二分割糸と迷網は認められなかったが分枝は存在していた。そして, これらの違いからジョロウグモの方がオオジョロウグモに比較してより特殊化しており, ジョロウグモ属のクモは円網を張っていたクモを祖先として, それから派生してきたと考えられた。
著者
宮下 直 新海 明
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-10, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 7

網のデザインと餌捕獲能力との関係をジョロウグモとナガコガネグモを用いて調べた. 大型の厚紙のフレームでクモの網を枠取りし, 同じ微生息場所に設置した. ジョロウグモの網はナガコガネグモの網より多くの餌がかかる傾向があったが, これは前種で粘着糸が多いからである. しかし, 比較的大きな餌 (2-6mm) の比率はナガコガネグモの方が大きかった. これはおそらく網糸に付着している粘着物質の量が多いからであろう. 大型の餌 (20-25mm) に対する網の捕捉能力を評価するため, 大型餌を網に付加する実験を行った. 餌が網に捕えられている時間は, ばらつきが大きいものの種間で似かよっていた. ジョロウグモの網は, 非常に小型の餌とともに大型の餌を捕獲する機能も有していると考えられた.
著者
新海 明 新海 栄一
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-12, 1988 (Released:2007-03-29)
参考文献数
12
被引用文献数
7 10

ヨリメグモの網構造について調査した。このクモは流水面上に網を張り, 二つの型がみられた。一つは網の上部に支持糸を持った水平円網であり, 他の一つは基本的には水平円網だが, ヨコ糸が垂れ下がって水面に達しているために変形していた。そして, ヨコ糸と水面との接点には多くの細かい糸がみられた。ヨコ糸を張り終えたクモは, こしき部とヨコ糸との間においてタテ糸を切断し, それらのタテ糸をゆるめた。タテ糸がゆるめられると, 変形網のヨコ糸は流水上に浮遊するために, この網を浮遊網と名付けた。網の形は, 造網場所の条件に影響された。浮遊網は水面上の比較的低いところにみられたが, 水平円網は水のない場所や水面上の比較的高い場所にみられた。これらのことから, ヨリメグモは円網種に由来し, 流水環境に適応したクモであると考えられた。
著者
新海 明
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.53-57, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

キンヨウグモの網には二つのタイプがみられた. ひとつは普通の水平円網で, これはおもに初期の幼体が作っていた. 他のひとつはタテ糸だけからできた特殊な網で, これはおもに後期の幼体と成体が作っていた. 餌の捕獲行動についても調べたが, 餌は双翅類とクモ類であり, それらが網に接近したりその上を歩いてくるといきなり「ひっつかんで」捕らえていた.
著者
新海 明 新海 栄一
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.9-17, 1985 (Released:2007-03-29)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

カラカラグモの網構造と餌捕獲行動を観察した。このクモの張る円網は大変ユニークであった。すなわち。網にはこしきがなく数本のタテ糸が中心付近でまとめられていた。クモは中心においてtrapline と呼ばれる1本の糸で網を支えているので網はちょうどカサをひっり返した状態になっていた。昆虫が網にかかるとこの糸は解き放たれ, そのため網は弾かれるように戻り昆虫を絡めてしまった。造網過程も調査した。この網は最初はこしきとこしき糸を持った典型的な円網と同じように張られるのだが, 後にその部分が噛み切られ無こしきとなった。この一連の造網過程はカラカラグモが円網を張るクモの祖先から生じてきたことを示唆している。
著者
吉田 真 新海 明
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.21-25, 1993 (Released:2007-03-29)
参考文献数
9
被引用文献数
5 8

富士山麓の溶岩洞の一つである蝙蝠穴とその付近で, サンロウドヨウグモの捕食行動と網構造の調査を行った. このクモはヤマジドヨウグモと同様に, 網にかかった特定のタイプの餌に対して糸の投げかけによって攻撃した (攻撃ラッピング). オオドヨウグモ属の各種は攻撃ラッピングを行わず, ドヨウグモ属の2種はそれを行うことから, 攻撃ラッピングはドヨウグモ属の行動上の一特性かもしれない.
著者
平松 毅久 新海 明
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.181-185, 1993 (Released:2007-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

ユアギグモ1種 Patu sp. の網構造と造網過程を観察した. 網は完全な水平円網で体長にくらべて大きく, タテ糸が極めて多かった. このタテ糸の大部分は普通の円網種と同様な過程でヨコ糸まで張り終えた後に付加されたものであった. また, 造網の最後にタテ糸を緩めて付け直すというこしき部の修正を行った. このような特徴的な造網行動は, 本種が普通の円網種より派生したことを示し, さらに網構造と造網行動の類似性から, 本種がヨリメグモ科やコツブグモ科のクモと近縁であることを示唆している.
著者
新海 明 新海 栄一
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.149-154, 2002
被引用文献数
5

ムツトゲイセキグモは日本にいる稀産の2種のナゲナワグモ類のうちのひとつである. 本報告は, 野外におけるムツトゲイセキグモの生活史, 若令幼体がもちいる餌捕獲法, および本種のメス成体や亜成体がもちいる「投げ縄」網の作成行動についてのはじあての観察記録である. ムツトゲイセキグモは年一世代の多回 (3-6回) 産卵のクモであり, ふ化した幼体は卵のう内でそのまま越冬した. 若令幼体とオスは投げ縄を使わず, 葉の縁で狩りをしていると考えられた. 亜成体と成体のメスは蛾を捕獲するために投げ縄を使用した. 投げ縄作成行動は, 投げ縄を第1脚のかわりに第2脚でもつ以外はナゲナワグモ属のものとまったく同一だった. ときどき, 2個の粘球がついた投げ縄を作ることがあった.