- 著者
-
新海 明
新海 栄一
- 出版者
- 日本蜘蛛学会
- 雑誌
- Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.1, pp.1-12, 1988 (Released:2007-03-29)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
-
7
10
ヨリメグモの網構造について調査した。このクモは流水面上に網を張り, 二つの型がみられた。一つは網の上部に支持糸を持った水平円網であり, 他の一つは基本的には水平円網だが, ヨコ糸が垂れ下がって水面に達しているために変形していた。そして, ヨコ糸と水面との接点には多くの細かい糸がみられた。ヨコ糸を張り終えたクモは, こしき部とヨコ糸との間においてタテ糸を切断し, それらのタテ糸をゆるめた。タテ糸がゆるめられると, 変形網のヨコ糸は流水上に浮遊するために, この網を浮遊網と名付けた。網の形は, 造網場所の条件に影響された。浮遊網は水面上の比較的低いところにみられたが, 水平円網は水のない場所や水面上の比較的高い場所にみられた。これらのことから, ヨリメグモは円網種に由来し, 流水環境に適応したクモであると考えられた。