著者
橋本 行洋
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.33-48, 2007-10-01

<夕食>を意味する「よるごはん」は、現在若年層を中心に使用される新語と見なされているが、その成立は少なくとも第二次大戦前後にまで遡ると見られる。当初は児童が用いる稚拙な印象の語であったため、文字資料に残されることが少なかったが、近年では夕食時間帯の遅延や朝食の欠食という食環境の変化に伴い、これが妥当な表現という意識が生じて使用が拡大し、新聞記事や国会発言および小学校教材等でも使用されるという、《気づかない新語》としての性格をも有するに至っている。「よるごはん」の成立要因としては、<夕食>時間帯表現における「よる」の使用があげられるが、さらにその遠因に、二食時代の「あさ」-「ゆう」の対応に「ひる」が加わった結果、「ひる」-「よる」という対応意識の生じたことが存すると考えられる。「よるごはん」の出現は、食事時間帯語彙に「よる」が加わった点で新しいものであるが、旧くは存在しなかった「よる」を前項要素とする複合語という点においても特筆すべき存在で、語彙史・語構成史の両面から注目すべき語と言える。
著者
橋本 行洋
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.92-107, 2006

本稿は、新語の成立および定着・普及の経緯を「食感」という語を通して観察するとともに、その要因について考察したものである。「食感」は近年広く用いられるようになった新語であるが、この語は教科書や公的文書にも使われ、筆者のいうところの《気づかない新語》の一つに数えることができる。この語はもと食品学・調理学研究者の間で、「味・香・触」を総合した〈広義の「食感」〉の意味で用いられたが、食品のテクスチャー研究が本格化した1960年代ころから、現在のような口内の触覚を示す〈狭義の「食感」〉の用法が多く見られるようになった。この〈狭義の「食感」〉発生の背景には、先行する同音の類義語「触感」の存在が関与しているものと考えられる。「食感」が《気づかない新語》となり急速に一般語化した要因としては、この語が漢字表記を本来の形とする漢字語であること、また「味」や「色」に対応する触覚を総合することばの欠を補うものであったことや、「食味」「食育」などの「食-」語彙の一つに位置づけられるといった、《語彙体系のささえ》の存在があげられるだろう。
著者
橋本 行洋
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.33-48, 2007-10-01 (Released:2017-07-28)

<夕食>を意味する「よるごはん」は、現在若年層を中心に使用される新語と見なされているが、その成立は少なくとも第二次大戦前後にまで遡ると見られる。当初は児童が用いる稚拙な印象の語であったため、文字資料に残されることが少なかったが、近年では夕食時間帯の遅延や朝食の欠食という食環境の変化に伴い、これが妥当な表現という意識が生じて使用が拡大し、新聞記事や国会発言および小学校教材等でも使用されるという、《気づかない新語》としての性格をも有するに至っている。「よるごはん」の成立要因としては、<夕食>時間帯表現における「よる」の使用があげられるが、さらにその遠因に、二食時代の「あさ」-「ゆう」の対応に「ひる」が加わった結果、「ひる」-「よる」という対応意識の生じたことが存すると考えられる。「よるごはん」の出現は、食事時間帯語彙に「よる」が加わった点で新しいものであるが、旧くは存在しなかった「よる」を前項要素とする複合語という点においても特筆すべき存在で、語彙史・語構成史の両面から注目すべき語と言える。
著者
橋本 行洋
出版者
愛知教育大学数学教育講座
雑誌
イプシロン (ISSN:0289145X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.95-102, 2015-12-12

「『自律的に学ぶ』という心の態度」- これは2013 年度入学生から始まった初年次導入教育で学生に是非身につけて欲しいと掲げたテーマでした[2]. その際もっとも重視したのが学生から自然に湧き上がる「なぜ, どうして」でした.その後の様々な講義においてもこの自然に湧く自発的な疑問と興味の下,学生各自が試行錯誤し自分で答えを探す活動が維持されることが理想ではあるけれど,初年次教育ではわずか5回の講義のため,あっという間に受動的な学習態度に戻ってしまいます.そこで通常の座学中心の数学講義とは異質なものになり得る「プログラミング」の講義において,受動的な学習習慣に埋もれててしまった「内発的動機による学び」をもう一度掘り起こすことを最大の目標に定め,講義を設計しなおしました.このノートはその一つの実践記録を兼ねた試論です.
著者
橋本 行洋
出版者
大阪大学国文学研究室
雑誌
語文 (ISSN:03874494)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.97-106, 2001-02

前田富祺教授退官記念国語学特輯
著者
新野 直哉 橋本 行洋 梅林 博人 島田 泰子 鳴海 伸一
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近現代の日本語における新語・新用法の事例に関する記述的研究とそれに関する言語規範意識の研究を行った論文の発表、従来学界で注目されてこなかった資料の紹介、さらに中国で開催の国際シンポジウムで計3回の研究発表・招待講演を行った。そして、メンバー全員による共同発表として、「代用字表記語」(「当用漢字表」にない字を使う漢字語の書き換えにより、新たに生じた漢字語)に関する発表を『日本語学会』で行い、それに関連する論文を計3件発表した。また、最終年度末には紙媒体(非売品)の「研究成果報告書」を作成した。