著者
寺本 研 森 森裕介 長野 邦寿 早坂 郁夫 沓掛 展之 池田 功毅 長谷川 寿一
出版者
一般社団法人 日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-43, 2007 (Released:2009-01-01)
参考文献数
23
被引用文献数
6 6

Chimpanzees are a naturally highly sociable species. Therefore, it is desirable to keep captive individuals in a social group. Although the dyadic introduction method has been commonly used to form social groups, it has not always been successful. In the present study, we tested a new method to create three all-male groups, two of which consisted of .ve individuals, and one of nine individuals. This method requires three stages. First, male dyads were put into neighboring cages in which the individuals could see each other. Tentative social rank was determined by observing the males' behaviors in these dyadic encounters. Next, they were moved to an unfamiliar environment and housed individually. Several days later, they were introduced one by one to an outside enclosure. Three allmale groups have been maintained so far, suggesting that group formation was successful. The occurrence of severe injury was considerably lower than that seen commonly in multi-male multi-female groups. Moreover, signi.cant effects of the group formation on male behavior (e.g., increased number of active social behaviors and decreased abnormal behaviors) were observed. These results demonstrate the effectiveness of our new method of forming all-male chimpanzee groups.
著者
沓掛 展之
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、真社会性ハダカデバネズミを対象に、群れ生活の維持に重要な役割を果たす集団的意思決定(個体が協調して複数の選択肢からひとつの選択肢を選ぶ意思決定)を研究する。同種は、複数個体が協調した労働行動によって地下トンネル内に複数の部屋を形成し、それぞれの部屋をネストや巣材溜め場に使い分ける。本研究では、この決定過程における決定個体、労働コストとの関連、個体間コミュニケーションを実験的に検証する。また、シミュレーションを用い、個体の行動ルールと集団的意思決定の関係を検証する。理論と実証の併用により、カースト制という複雑な社会的特徴を持つ真社会性哺乳類における集団的意思決定の理解を進める。
著者
岡ノ谷 一夫 入來 篤史 時本 楠緒子 上北 朋子 沓掛 展之
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

社会性齧歯類デグーは豊富な音声レパートリーを有し,約20種類の音声を状況別に使い分けコミュニケーションをする。デグーの発声中枢PAGの電気刺激実験の結果から、状況依存的発声はより上位の領域において制御され,特定の文脈における適切な発声が可能になっていると考えられる。学習・記憶研究において,海馬は文脈認知の有力な候補であるが,発声と海馬の関与は未だ明らかでない。文脈依存的な発声行動における海馬の役割を明らかにするため,海馬損傷を施した個体の発声の変化を飼育場面と求愛場面において検討した。海馬損傷個体において歌頻度が減少し、求愛開始時に特徴的な導入行動が欠落するなどの歌の変化が見られたほか、機能の異なる音が求愛歌中に出現した。求愛行動に関しても、海馬損傷個体では雌の拒絶の発声にも関わらず、雌に対する接触行動が増加した。また、海馬損傷個体では、同性個体に対しても接触頻度が増加し、喧嘩頻度の増加がみられた。ただし、海馬損傷個体が喧嘩の開始をすることはなく、他個体の拒絶にも関わらず接近行動を繰り返すなど、対他個体への反応様式の変化が喧嘩を誘発する傾向があった。親和行動に関しては、グルーミング行動や他個体に寄り合って寝る行動の減少がみられた。物体に対する馴化や新奇物体の認知に関しては、海馬損傷個体に異常はなかった。これらの結果から、海馬が音声・非音声コミュニケーションにおける状況の認知に寄与していることが示唆された。