著者
永野 茜 奥村 紗音美 青山 謙二郎 上北 朋子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.603-609, 2016

Previous studies have reported that lesions of the orbitofrontal cortex (OFC) in rats induce impulsive choices in delayed reinforcement tasks.<b> </b>However, some studies have suggested that the OFC is not related to impulsivity but instead to compulsivity.<b> </b>In this study, we investigated the effects of OFC lesions on choice in a T-maze.<b> </b>First, 14 rats were trained to discriminate spatially between a high-reward arm with a delay of 15 seconds and a low-reward arm without a delay.<b> </b>The high-reward arm contained 10 food pellets, whereas the low-reward arm contained only one pellet.<b> </b>In the presurgery test, all rats chose the high-reward arm in most trials.<b> </b>In the postsurgery test, both OFC lesioned (<i>n</i> = 7) and control (sham-lesioned and intact; <i>n</i> = 7) rats continued to choose the high-reward arm in most trials.<b> </b>Following the postsurgery test, the high- and low-reward arms were reversed.<b> </b>In the reversal test, OFC lesioned rats made significantly fewer high-reward choices than did control rats.<b> </b>These results indicate that OFC lesions induced compulsive choices rather than impulsive choices.
著者
上北 朋子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

豊かな社会性をもつ齧歯類デグーを対象とし、そのコミュニケーション能力を支える脳機構の解明を目的とした。動作を正しい順序で行い、他者の行動の順序性を理解することは、円滑なコミュニケーションに不可欠な能力である。本研究は、脳の特定領域の損傷実験により、コミュニケーションの第1段階である他者認知の神経基盤を明らかにした。これまで社会行動への関与については注目されなかった海馬が他者認知に関与することが明らかになった。
著者
岡ノ谷 一夫 入來 篤史 時本 楠緒子 上北 朋子 沓掛 展之
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

社会性齧歯類デグーは豊富な音声レパートリーを有し,約20種類の音声を状況別に使い分けコミュニケーションをする。デグーの発声中枢PAGの電気刺激実験の結果から、状況依存的発声はより上位の領域において制御され,特定の文脈における適切な発声が可能になっていると考えられる。学習・記憶研究において,海馬は文脈認知の有力な候補であるが,発声と海馬の関与は未だ明らかでない。文脈依存的な発声行動における海馬の役割を明らかにするため,海馬損傷を施した個体の発声の変化を飼育場面と求愛場面において検討した。海馬損傷個体において歌頻度が減少し、求愛開始時に特徴的な導入行動が欠落するなどの歌の変化が見られたほか、機能の異なる音が求愛歌中に出現した。求愛行動に関しても、海馬損傷個体では雌の拒絶の発声にも関わらず、雌に対する接触行動が増加した。また、海馬損傷個体では、同性個体に対しても接触頻度が増加し、喧嘩頻度の増加がみられた。ただし、海馬損傷個体が喧嘩の開始をすることはなく、他個体の拒絶にも関わらず接近行動を繰り返すなど、対他個体への反応様式の変化が喧嘩を誘発する傾向があった。親和行動に関しては、グルーミング行動や他個体に寄り合って寝る行動の減少がみられた。物体に対する馴化や新奇物体の認知に関しては、海馬損傷個体に異常はなかった。これらの結果から、海馬が音声・非音声コミュニケーションにおける状況の認知に寄与していることが示唆された。