著者
太田 修平 土屋 綱紀 木島 丈博 渡邉 英一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1003, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】成長期の野球肘の中で,上腕骨小頭障害(離断性骨軟骨炎;OCD)は永続的な障害となりうるため,早期発見の重要性が高く,近年,野球肘検診は全国で広まりつつある。当院にて行った野球肘検診に関し,その活動の報告とともに,上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検証を行ったので,ここに報告する。【方法】平成22年から25年に行われた野球肘検診に参加した小学1年生から6年生(平均年齢11歳3ヶ月±5歳)の少年野球団,及びリトルリーグに所属する男子544名,女子17名,計561名を対象とした。これらに対しアンケートによる問診,超音波検査,レントゲン撮影,理学検査を行い,その結果から上腕骨小頭障害群(以下O群)と,健常群(以下N群)528名に分類し,比較検討を行った。上腕骨小頭障害の判定は,両側の肘関節に対し超音波エコー(日立アロカメディカル社製ProSoundα7)と,3方向のレントゲン撮影を施行し,医師の診断により行った。遠投距離については,事前に各チームに依頼し,C級軟式ボールを使用し,助走制限のない条件下で距離の計測を行い,回答があったものを集計した。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に沿って,事前に配布した検診内容の案内書に研究目的を明記し,各家庭に配布した上で同意に基づいて参加申し込みをいただき,倫理的配慮を行った。また当院倫理委員会の承認を得た。【結果】O群33名,N群528名であり,O群は全体の5.88%であった。遠投距離は,O群は20名,回答率60.6%,N群は309名,回答率58.5%の回答を得た。結果は,全体ではO群45.71±8.67m,N群43.35±10.25mであった。小学6年生ではO群56.52±9.80m,N群50.74±9.04m。小学5年生ではO群45.84±3.54m,N群44.13±7.41m。小学4年生ではO群41.62±6.80m,N群36.85±6.93m。小学3年生ではO群33.70±3.82m,N群30.61±6.79mであった。【考察】遠投距離は各学年ともO群で高く,O群の方が高い投球能力を示した。またアンケート結果から,野球経験年数もO群3年1ヶ月,N群2年11ヶ月と,O群でやや長い傾向にあった。さらに,投手経験においてもO群100%,N群では73.14%であった。今回の検討から,上腕骨小頭障害群は,早い段階から野球を始め,高い投球能力を有するものに生じる傾向があった。つまり,低学年から野球を開始し,繰り返しの動作により動作を習得してきたことや,投手や捕手といった投球する機会の多いポジションにつくことは,肩,肘関節に負荷がかかりやすいことが考えられた。【理学療法学研究としての意義】今回,主に上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検討を行ったが,上腕骨小頭障害と関連の大きい理学所見なども明らかにできれば,さらなる障害予防につながると考えられ,今後の検討課題としたい。
著者
落合 信靖 山﨑 博範 佐々木 裕 山口 毅 木島 丈博 松木 圭介 見目 智紀
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.461-463, 2013 (Released:2013-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Background: Diffusion-weighted imaging (DWI) based on magnetic resonance imaging (MRI) can provide valuable information regarding the microstructure of tissues by monitoring the random movement of water molecules. The diffusion data can be used for determination of quantitative diffusion values such as the apparent diffusion coefficient (ADC). The purpose of this study was to evaluate rotator cuff muscle activity using DWI.Methods: DWI was performed before and after loaded on empty can test and full can test and compared before and after those tests.Results: ADC of supraspinatus, infraspinatus and superior portion of subscapularis were increased after empty can test. ADC of supraspinatus, superior portion of infraspinatus and superior portion of subscapularis were increased after full can test. Anatomical study showed that the infraspinatus had contributed in shoulder abduction in shoulder internal rotation.Discussion: This study showed the agreement with the anatomy of the previous study, an increase of ADC in supraspinatus and infraspinatus in empty can test and an increase of ADC in supraspinatus mainly in full can test. There were possibilities that DWI could evaluate the activity of rotator cuff muscle.
著者
亀山 顕太郎 高見澤 一樹 鈴木 智 古沢 俊祐 田浦 正之 宮島 恵樹 橋川 拓人 岡田 亨 木島 丈博 石井 壮郞 落合 信靖
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1000, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】成長期の野球選手において野球肘の有病率は高く予防すべき重要課題である。その中でも離断性骨軟骨炎(以下,OCD)は特に予後が悪く,症状が出現した時にはすでに病態が進行していることが多いため,早期発見することが重要である。OCDを早期発見するためにはエコーを用いた検診が有効であり,近年検診が行われる地域が増えている。しかし,現状では現場に出られる医師数には限界があり,エコー機器のコストも考慮すると,数十万人といわれる少年野球選手全体にエコー検診を普及させるのは難しい。もし,エコー検査の前段階に簡便に行えるスクリーニング検査があれば,無症候性のOCDを初期段階で効率的に見つけ出せる可能性が高まる。本研究の目的は,問診・理学検査・投球フォームチェックを行うことによって,その選手のOCDの存在確率を推定し,二次検診が必要かどうかを判定できるスクリーニングシステム(以下OCD推定システム)を開発することである。【方法】調査集団は千葉県理学療法士会・スポーツ健康増進支援部主催の「投球障害予防教室」に参加した小中学生221名とした。この教室では問診・理学検査20項目・投球フォームチェック5項目の他に医師による両肘のエコー検査が行われた。OCDが疑われた選手は病院での二次検査に進み,そこでOCDか否かの確定診断がなされた。上記の記録をデータベース化し,OCDの確定診断がついた選手と有意に関連性のある因子を抽出した。この抽出された因子をベイズ理論で解析することによって,これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率を推定するシステムを構築した。推定されたOCDの存在確率と実際のデータを照合し,分割表を用いてシステムの妥当性を評価した。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ条約に基づき,事前に各チームの監督,保護者に対して検診の目的,内容について説明し同意を得た。また,「プライバシーの保護」「同意の自由」「参加の自由意志」を説明し,協力・同意を得られなかったとしても,不利益は生じないことを記載し当日文書にて配布した。【結果】221名中17名(7.7%)の選手が,エコー上で骨頭異常を認め二次検診を受けた。結果,4名(1.8%)の選手がOCDと確定診断された。OCDに関連性の高かった問診項目は「野球肘の既往があること」「野球肩の既往がないこと」であり,理学検査項目は「肘の伸展制限があること」「肘と肘をつけた状態で上肢を鼻の高さまで上げられないこと(以下 広背筋テスト)」「非投球側での片足立ちが3秒間安定できないこと」,投球フォームチェックでは「投球フォームでの肩肩肘ラインが乱れていること(以下 肘下がり)」であった。これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率をベイズ理論を用いて推定した。推定したOCD存在確率のcut off値を15%に設定し,二次検査が必要か否かを判別し,実データと照らし合わせたところ,感度100%,特異度96.8%,陽性的中率36.4%,陰性的中率100%,正診率96.8%と高精度に判別できた。【考察】本システムは,OCDの危険因子を持った選手を抽出し,その存在確率を推定することによって,危険性の高い選手にエコー検査を積極的に受けるように促すシステムである。このシステムでは問診や理学検査を利用するため,現場の指導者でも簡便に使うことができ,普及させやすいのが特徴である。こうしたシステムを用いることで,選手や指導者のOCDに対する予防意識を高められるという効果が期待される。本研究でOCDと関連性の高かったフィジカルチェック項目は,投球フォームでの肘下がりや非投球側の下肢の不安定性,肩甲帯・胸椎の柔軟性を評価するものが含まれている。こうした機能の低下はOCDに対する危険因子の可能性があると考えられた。今後普遍性を高めるために,他団体とも連携し縦断的かつ横断的観察を進めていく予定である。【理学療法学研究としての意義】OCD推定システムを開発し発展させることで,理学療法士がOCDの予防に貢献できる道筋を開ける。今後,より簡便なシステムを確立し,無症候性のOCDを高精度にスクリーニングできれば,より多くの少年野球選手を障害から守ることが可能になる。
著者
橋本 瑛子 落合 信靖 佐々木 裕 山口 毅 木島 丈博 山崎 博範 松木 圭介
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.779-783, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
14

近年,肝臓等で報告があるIDEAL法は脂肪と水を分離して描出でき,定量評価可能なMRI撮像法である.本研究の目的は,IDEAL法,単純T2強調像,単純CT像からの腱板筋脂肪変性を比較し,大・広範囲腱板断裂の一次修復の可否を検討することである.IDEAL法を撮像した47例50肩を対象とした.IDEAL法では,斜位矢状断で各腱板筋にROIを設定し,In Phase,Fat Imageの信号値から脂肪を定量した.同撮像面で単純T2強調像,単純CT像から腱板筋脂肪変性の割合を算出した.IDEAL法と単純T2強調傍矢状断像から分類したGoutallier分類は解離し,単純T2強調像での脂肪変性評価はIDEAL法に比較し過小評価する傾向を認めた.また,大・広範囲腱板断裂の一次修復不能群ではIDEAL法での棘上筋実質部成分・棘下筋の脂肪含有率と単純T2強調像での棘下筋の脂肪含有率が有意に高値で,一次修復可否の判断材料となり得た.