著者
松田 雅弘 大山 隆人 小西 由里子 東 拓弥 高見澤 一樹 田浦 正之 宮島 恵樹 村永 信吾 小串 健志 杉浦 史郎 三好 主晃 石井 真夢 岡田 亨 亀山 顕太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】加齢に伴う運動器障害のために移動能力の低下をきたし,要介護になったり,要介護になる危険の高い状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と定義し,中高齢者の運動器に起こる身体状態として知られている。子どもの発育の偏りや運動不足,食育などが原因となり,筋肉,骨,関節などの運動器のいずれか,もしくは複数に障害が起き,歩行や日常生活に何らかの障害を引き起こすなど,子どもでも同様の状態が起こりうる。さらに,転んでも手がつけない,片脚でしっかり立つ,しゃがみ込むなど基本動作から,身を傷害から守る動作ができない子が急増している。幼稚園児36.0%,就学児42.6%,小学校40%で片足立ち。しゃがみ込み,肩180度挙上,体前屈の4項目の検査で1つでも当てはまる児童生徒が存在する。【活動報告】千葉県浦安市の児童に対するロコモの検診を行政と連携し,千葉県スポーツ健康増進支援部中心に実施した。参加者は3~12歳の334名であった。検査項目は先行研究にある片脚立ち,肩180度挙上,しゃがみ込み,体前屈以外に,四つ這いバランス,腕立て・腹筋などの体幹筋力,2ステップテスト,立ち上がりテストなど,柔軟性・筋力・バランス能力など12項目とした。また,食事・睡眠などのアンケートを実施した。当日は理学療法士が子どもと1対1で検査することで安全性の確保と,子どもの集中力を維持させ,検診を楽しむことで計測が可能であった。【考察】この検診で成長にともなう運動発達が遅れている子の把握が可能であった。親を含めた検診を通じて家族の運動への関心が高まったことや,自分の子どもの運動能力の把握,日頃の運動指導にもつながった。【結論】今回の検診で子どもの運動機能の現状を把握するのに,この取り組みが有益なことが示唆された。今後は広く地域と連携して子どものロコモ検診を行い,健康状態の把握と運動の啓発を理学療法士の視点として取り組んでいきたい。
著者
宮島 恵樹 三好 主晃 東 拓弥 石井 真夢 村永 信吾 田浦 正之 小西 由里子 小串 健志 亀山 顕太郎 関 俊昭 松田 雅弘 高見澤 一樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】我々は,千葉県民の能動的で活発な健康社会づくりに寄与するため,2010年度より「千葉県から転倒を減らそうプロジェクト」を展開している。本取り組みは県内士会員による転倒予防を目的とした転倒予防セミナーの開催と,歩行年齢測定会の実施である。また,ロコモティブシンドロームの概念の普及,健康日本21プロジェクトの一環として活動の展開を広げている。高齢者の転倒予防の実践は,各個人の健康寿命延命のみならず,実益的な医療費削減や介護費削減,地域・自治体の活性への貢献として今後の重要課題といえる。【活動報告】測定会は,有志の県士会員の協力を得ながら千葉県内各地の健康増進,福祉関連イベントへの出展や,県・開催市町・医師会などからの後援を受け,県内各地で開催される健康増進,福祉関連イベントなどに出展を行ってきた。歩行年齢測定は,測定項目は,体組成,ファンクショナルリーチ,2ステップテスト,TUG,立ち上がりテストの5項目で行い,測定結果の説明は,転倒予防に対する危険度,機能低下が明らかな点,改善目標を自己管理の為の運動指導とあわせて説明した。運動動機能の維持向上への取り組みを歩行機能の低下を自覚する世代から,その予備軍まで幅広い働きがけをしている。これまでの4年間で4000名以上の県民の皆様が参加されており測定会場によっては毎年会場に足を運ぶ県民も少なくはない。【考察】理学療法士が国民の健康寿命延伸や,転倒予防活動に積極的に参加することで理学療法士の認知向上はもとより。理学療法士の知識技術が健康増進分野へも十分寄与することが示唆され,予防分野への職域拡大に貢献すること考える。【結論】進行する要介護状態への早期発見,運動習慣への動機付けという早期対応の促進にも繋がり,要介護状態への抑制の一助となり得ると考える。
著者
宮島 恵樹 関 俊昭 高見澤 一樹 七尾 真理子 早川 政人 彦田 直 森 大 東 拓弥 岡田 亨 村永 信吾 秋葉 洋介 石田 隆 亀山 顕太郎 河田 聡巳 小串 健志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101926, 2013

【はじめに、目的】高齢者の転倒予防の実践は,各個人の健康寿命延命のみならず,実益的な医療費削減や介護費削減,さらには地域,自治体の活性への貢献として今後の重要課題といえる.加えて運動機能の維持向上への取り組みは,現在,歩行機能の低下を自覚する世代から,その予備軍的な世代に対する幅広い働きがけが必要である.我々,千葉県理学療法士会は,県内における専門領域職能団体として,千葉県民の能動的で活発な健康社会づくりに寄与するため,千葉県理学療法士会公益事業局スポーツ健康増進支援部の取り組みとして2010年度より「千葉県から転倒を減らそうプロジェクト」を展開している.本取り組みは県内士会員による転倒予防を目的とした転倒予防セミナーの開催と歩行年齢測定会の実施を行なっている.測定会は,有志の県士会員の協力を得ながら県内各地で開催される健康増進,福祉関連イベントなどに千葉県理学療法士会として出展を行い実施している.各測定会では測定結果をもとに,その場でフィードバックと自己管理方法としてのエクササイズ指導を合わせて行っている.今回は我々が実施した歩行年齢測定会の結果を基に今後我々理学療法士が改めて目を向けるべきであろう予防について考察する.【方法】測定項目は,体組成(身長,体重,体脂肪率),Functional reachテスト(以下FR),Timed up&goテスト(以下TUG),立ち上がりテスト,2stepsテストの5項目を行った.対象者は2010年10月~2012年10月イベントに参加した1437名(30~85歳,平均58.6±18.2歳,男性338名・女性1099名)であった. 2stepsテストは最大に2歩前進した距離を計測する方法であり,その後身長で正規化した.FRは両上肢を肩関節90°屈曲し,両肘伸展位で出来るだけ前方にリーチさせたときの指先の移動距離を測定した.今回は上記の項目のうち年齢における差をFR,2stepsテストの2項目について検討した.統計処理は年齢とFR,2 stepsテストの関係をPearsonの積率相関係数を用いて分析し,また30~90歳までを5歳毎に分類し,その分類でFRと2stepsテストに一元配置分散分析を行い,その後の検定としてTukeyの検定,サブグループの作成を行った.危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】測定に参加する県民には文章ならびに口頭にて十分な説明を行い参加する意志を確認した上で,測定を行った.また,測定会運営スタッフに対しては事故対応としてスポーツ健康増進支援部でイベント保険に加入した.【結果】年齢とFR,2stepsテストでは,FRはr=-0.45,2stepsテストではr=-0.46と有意な負の相関があった.各年代とFRは近い年代で有意な差を認めるのは60~64歳と,65歳~69歳の間であり,6つのサブグループに分かれ若年者との境の年代は50~54歳の世代となった.各年代と2stepsテストは近い年代で有意な差を認めるのは65~69歳と,70歳~74歳の間であり,6つのサブグループに分かれ若年者との境の年代は45~49歳の世代となった.どちらのテストも65歳以上は細かなサブグループに分割され,年齢の上昇とともに数値が低下していた.【考察】年齢と2stepsテスト・FRには,有意な負の強い相関が認められ,年齢とともにバランス能力が低下していることが示唆された.また,各項目とも65歳以上にサブグループが細かく分類され,バランス能力の低下が急激に進行していることが考えられる.特にFRでは60~64歳,2stepsテストでは65~69歳で次の年代と比較して急激にバランス能力の指標でもある両項目とも低下しており,その急激に低下する以前の60歳前半で予防的に運動介入することに意義があると考えられる.また,その急激になる以前のグループの区切れの年代はFRで50~54歳,2stepsテストで45歳~49歳となり,この年代より段階的に運動指導を実施して,65歳以降の転倒を未然に防ぐことが可能ではないかと考えられる.このように幅広い年代のデータを集積することで,バランス能力の低下だけではなく,急激に低下をする年代の発見につながり,ロコモティブシンドロームなどに対する予防的な取り組みを段階的に各年代にそった運動プログラム作成への足掛かりとして進めていきたいと考えている.【理学療法学研究としての意義】理学療法士が国民の健康寿命延伸や,転倒予防活動に積極的に参加することで理学療法士の認知向上はもとより.理学療法士の知識技術が健康増進分野へも十分寄与することが示唆され,予防分野への職域拡大に貢献すること考える.また,測定会を継続することによって,千葉県民各年代の転倒リスク,運動機能の指標が示され,行政施策の中で理学療法士として役割が求められると考える.
著者
亀山 顕太郎 高見澤 一樹 鈴木 智 古沢 俊祐 田浦 正之 宮島 恵樹 橋川 拓人 岡田 亨 木島 丈博 石井 壮郞 落合 信靖
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1000, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】成長期の野球選手において野球肘の有病率は高く予防すべき重要課題である。その中でも離断性骨軟骨炎(以下,OCD)は特に予後が悪く,症状が出現した時にはすでに病態が進行していることが多いため,早期発見することが重要である。OCDを早期発見するためにはエコーを用いた検診が有効であり,近年検診が行われる地域が増えている。しかし,現状では現場に出られる医師数には限界があり,エコー機器のコストも考慮すると,数十万人といわれる少年野球選手全体にエコー検診を普及させるのは難しい。もし,エコー検査の前段階に簡便に行えるスクリーニング検査があれば,無症候性のOCDを初期段階で効率的に見つけ出せる可能性が高まる。本研究の目的は,問診・理学検査・投球フォームチェックを行うことによって,その選手のOCDの存在確率を推定し,二次検診が必要かどうかを判定できるスクリーニングシステム(以下OCD推定システム)を開発することである。【方法】調査集団は千葉県理学療法士会・スポーツ健康増進支援部主催の「投球障害予防教室」に参加した小中学生221名とした。この教室では問診・理学検査20項目・投球フォームチェック5項目の他に医師による両肘のエコー検査が行われた。OCDが疑われた選手は病院での二次検査に進み,そこでOCDか否かの確定診断がなされた。上記の記録をデータベース化し,OCDの確定診断がついた選手と有意に関連性のある因子を抽出した。この抽出された因子をベイズ理論で解析することによって,これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率を推定するシステムを構築した。推定されたOCDの存在確率と実際のデータを照合し,分割表を用いてシステムの妥当性を評価した。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ条約に基づき,事前に各チームの監督,保護者に対して検診の目的,内容について説明し同意を得た。また,「プライバシーの保護」「同意の自由」「参加の自由意志」を説明し,協力・同意を得られなかったとしても,不利益は生じないことを記載し当日文書にて配布した。【結果】221名中17名(7.7%)の選手が,エコー上で骨頭異常を認め二次検診を受けた。結果,4名(1.8%)の選手がOCDと確定診断された。OCDに関連性の高かった問診項目は「野球肘の既往があること」「野球肩の既往がないこと」であり,理学検査項目は「肘の伸展制限があること」「肘と肘をつけた状態で上肢を鼻の高さまで上げられないこと(以下 広背筋テスト)」「非投球側での片足立ちが3秒間安定できないこと」,投球フォームチェックでは「投球フォームでの肩肩肘ラインが乱れていること(以下 肘下がり)」であった。これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率をベイズ理論を用いて推定した。推定したOCD存在確率のcut off値を15%に設定し,二次検査が必要か否かを判別し,実データと照らし合わせたところ,感度100%,特異度96.8%,陽性的中率36.4%,陰性的中率100%,正診率96.8%と高精度に判別できた。【考察】本システムは,OCDの危険因子を持った選手を抽出し,その存在確率を推定することによって,危険性の高い選手にエコー検査を積極的に受けるように促すシステムである。このシステムでは問診や理学検査を利用するため,現場の指導者でも簡便に使うことができ,普及させやすいのが特徴である。こうしたシステムを用いることで,選手や指導者のOCDに対する予防意識を高められるという効果が期待される。本研究でOCDと関連性の高かったフィジカルチェック項目は,投球フォームでの肘下がりや非投球側の下肢の不安定性,肩甲帯・胸椎の柔軟性を評価するものが含まれている。こうした機能の低下はOCDに対する危険因子の可能性があると考えられた。今後普遍性を高めるために,他団体とも連携し縦断的かつ横断的観察を進めていく予定である。【理学療法学研究としての意義】OCD推定システムを開発し発展させることで,理学療法士がOCDの予防に貢献できる道筋を開ける。今後,より簡便なシステムを確立し,無症候性のOCDを高精度にスクリーニングできれば,より多くの少年野球選手を障害から守ることが可能になる。