著者
江口 忠志 竹之内 盛志 樋口 直史 鈴木 智 長岡 可楠子 砂川 恵伸 八重樫 牧人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.981-988, 2021-05-10 (Released:2022-05-10)
参考文献数
10

62歳,男性.アルコール性肝硬変,門脈血栓症に対してダビガトランを約5年間内服していた.来院2週前より肉眼的血尿,1週前より間欠熱・労作時の息切れが出現し,採血で著明な腎機能障害と胸部CT(computed tomography)でびまん性のすりガラス影を認めた.膠原病・血管炎や感染症と鑑別を要したが,腎生検にて抗凝固薬関連腎症(anticoagulant-related nephropathy:ARN),臨床所見から肺胞出血と診断した.抗凝固薬を内服中の患者の肺腎症候群では,ARN及び肺胞出血を疑う必要がある.
著者
池尻 良平 池田 めぐみ 田中 聡 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45031, (Released:2021-11-05)
参考文献数
15

本研究では,若年労働者の思考のモデリングが,経験学習と職場における能力向上に与える影響と,思考のモデリングの実態を調査した.インターネット調査で取得したデータをもとに構造方程式モデリングを用い,仮説を検証した結果,思考のモデリングは経験学習の具体的経験,および職場における能力向上に正の影響を与えることが明らかになった.また,若年労働者は上司や先輩から,主に仕事や業務の仕方や方法や進め方,過去のものを含む資料といった対象に注目し,見る・聞く・読むことで思考のモデリングをしていることが示された.さらに,職場における能力向上の上位群では,仕事相手を含む対象まで観察できていたり,見る・聞く・読むことに加えて,分析することで,より深い思考を学んでいることが示された.
著者
笠松 雅彦 鈴木 智大 八幡 奈緒 村松 那美
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.99-109, 2022-09-01 (Released:2023-01-01)
参考文献数
31

受診トレーニングは,動物診療において自発的な無保定状態で対象動物に検査および治療に必要な体勢を維持させる方法であり,海棲哺乳類の飼育管理に不可欠なトレーニングである。本研究では2006年から2020年の間に鳥羽水族館において7種69頭の鰭脚類を対象に行った2653件の受診トレーニングの内容を調査し,受診トレーニングの実施が海棲哺乳類医学ならびに飼育管理に与えた影響について評価することを目的とした。受診トレーニング件数は2015年以降に著増しており,調査期間を通じてセイウチに関するものが最も多かった。受診トレーニングの内容は,採血と超音波検査がそれぞれ71.1%および26.5%と大半を占め,目的別割合は定期検査と繁殖に関連するものが,それぞれ48.4%および40.0%と多かった。繁殖関連では,継続した受診トレーニングによって,オタリアの着床遅延期間が排卵後15週であることやミナミアフリカオットセイの胎子成長率(子頭大横径)が0.85 cm/月であることが明らかになった。また,眼科診療や麻酔導入においてもその有用性が認められた。受診トレーニングは目的とその評価が重要であり,受診トレーニングによって得られた生体情報を詳細に検討し,海棲哺乳類の飼育管理や動物福祉に貢献できるトレーニング方法を発展させていく必要があると考えられた。
著者
鈴木 智之
出版者
日本労務学会
雑誌
日本労務学会誌 (ISSN:18813828)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.69-91, 2016-06-01 (Released:2018-01-24)
参考文献数
44

This report examines inter-rater reliability of recruiting interviews for new graduates based on existing data of the Japanese software development company A. Data of five components are used in this analysis.Inter-rater reliability of Spearman's correlation coefficient ranged from 0.04 to 0.41, revealing that reliability differs between components. Analysis through other coefficients demonstrates differing results according to the selected correlation coefficient. Construct of each component does not be seemed dependent.
著者
三浦 智 鈴木 智裕 小林 洋 藤江 正克
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.850, pp.16-00414, 2017 (Released:2017-06-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

Hemiplegic patients often have reduced typing speed due to finger paralysis. Our motivation is to develop a keyboard that enables their typing speed to increase. For this purpose, we have developed a three-dimensional keyboard that reduces the distance that fingers move while typing. In this paper, our objective was to construct the finger model that combines the motion speed and muscle fatigue for design of keyboard that can be typed with fast motion speed and low muscle fatigue. In experiment, we measured the finger position using a magnetic 3D motion device and EMG when the participant pressed the proposed key. The experiment was carried out in a variety of the finger postures. We qualified the motion speed and muscle fatigue at each joint angle. Then, we weighted and combined two of the objective functions. We found out the Pareto solution and get an effective keyboard design straight. In the future, we verify the typing speed and finger muscle fatigue during typing the three-dimensional keyboard that is designed based on our finger model.
著者
伊藤 信一 鈴木 智和 小南 陽亮
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.123-131, 2011-07-30

陸生のカニ(陸ガニ)が生息地の植物に対して果実採食と種子散布という作用を及ぼすことは熱帯・亜熱帯において数例知られているが、日本のような温帯では報告例が見当たらない。そこで、本研究では、陸ガニによる果実の選好性と採食・運搬行動を明らかにし、その結果から陸ガニが温帯海岸林において種子散布者や種子食者として作用するかを検討した。調査は浜松市にある海岸林とその周辺の竹林で行い、日本に広く分布するアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニを対象に、果実の選好性、種子の取り扱い、果実の採食場所を比較した。飼育下でも野外の生息地においても、3種の陸ガニは多様な果実を好む傾向がみられた。アカテガニでは採食時に種子を破損する頻度が他の2種よりも低く、海岸林の多様な植生で活動し、採食した果実の種子を巣穴から離れた場所にも落としていた。一方で、クロベンケイガニでは、種子を破損する割合が高く、生育可能な植物が限られる湿った環境で主に活動しており、巣穴近くに果実を運んで採食する傾向が強かった。ベンケイガニでも種子を破損する頻度が高かったが、活動する植生は多様であった。これらの結果から、種子散布者となる可能性はアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニの順に高く、種子食者となる可能性はその逆であると考えられた。すなわち、温帯の海岸林においても陸ガニは種子散布者または種子食者となっている可能性が高く、陸ガニの種によってその作用は異なることが示唆された。
著者
池田 めぐみ 池尻 良平 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.203-212, 2020-10-10 (Released:2020-10-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は,上司による業務プロセスへのフィードバックとジョブ・クラフティング,若年労働者の職場における能力向上の関連を明らかにすることである.そのために,インターネット調査を行い取得したデータをもとに,構造方程式モデリングを用い,仮説の検証を行った.分析の結果,第1に,上司による業務プロセスへのフィードバックがジョブ・クラフティングの全ての因子及び職場における能力向上の全ての因子に正の影響を与えること,第2に,ジョブ・クラフティングの次元によって,影響を与える能力に違いがあることが確認された.以上より,若年労働者の職場における能力向上および,ジョブ・クラフティングを促す上で,上司による業務プロセスへのフィードバックが有効である可能性が示唆された.
著者
田中 聡 池田 めぐみ 池尻 良平 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.147-157, 2021-09-10 (Released:2021-09-22)
参考文献数
36

個人が自己や環境に能動的・主体的に働きかけて組織適応を図るプロアクティブ行動は,業務能力向上など職場における能力向上を促すと言われているが,そのプロセスについては明らかになっていない.そこで,本研究の目的は,若年労働者のプロアクティブ行動が職場における能力向上に与える影響を,リフレクションの媒介効果に着目して検討することであった.国内企業に勤務する20代942名(平均26.6歳, 女性46.0%)に調査を実施した.因子分析によってプロアクティブ行動がフィードバック探索行動,組織情報探索行動,ネットワーキング行動から成ることを示した上で,それらがリフレクションを媒介して能力向上に与える影響を検討した.パス解析の結果,フィードバック探索行動と組織情報探索行動がリフレクションを媒介して,職場における能力向上に正の影響を与えることが明らかになった.以上の結果から考えられる本研究の意義と今後の課題について検討を行った.
著者
池田 めぐみ 城戸 楓 鈴木 智之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.69-71, 2022-07-06 (Released:2022-07-06)
参考文献数
10

This study examined the internal consistency and convergent validity of the Japanese version of an Employee Agility and Resiliency Scale (EARS-J), a job domain-specific resilience scale. The analysis was conducted using Internet survey data collected from 20–29. The results confirmed that EARS-J had a one-factor structure similar to the original scale. Furthermore, we confirmed certain convergent validity of the EARS-J by examining its relationships with employee engagement, task performance, and K6.
著者
久保 大輔 髙木 武蔵 鈴木 智高 菅原 憲一
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
pp.JJPTF_2021-05, (Released:2022-06-21)
参考文献数
21

【目的】本研究の目的は,予測的姿勢調整を制御するために補足運動野が活動するタイミングを経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:以下,TMS)を用いて検討することである。【方法】健常成人11 名は,ビープ音に反応して上肢を挙上する課題を行った。課題中,ビープ音から0 ms,30 ms,50 ms,70 ms 後のタイミングで補足運動野へTMS を付与し,三角筋と大腿二頭筋から筋電図を記録した。【結果】三角筋の筋活動開始のタイミングから前100 ms の時間帯にTMS が補足運動野へ付与された場合,TMS のない試行と比較して大腿二頭筋の筋活動開始のタイミングが有意に遅延した。【結論】立位での上肢挙上課題において,補足運動野が活動するタイミングは三角筋の筋活動開始から前100 ms の時間帯にあると推察された。
著者
大和田 直希 鈴木 智也
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020)
巻号頁・発行日
pp.2L4GS1305, 2020 (Released:2020-06-19)

本研究では新しいアセットクラスである暗号資産に着眼し,共和分ペアトレード戦略の有用性を検証した.暗号資産は通貨間の相関関係が強く,互いに共和分関係にある可能性が高い.もし通貨ペアが共和分の関係にあれば,ペアの価格差は定常過程となり平均回帰性を有する.そこで価格差が均衡水準から乖離した時,相対的に割高な通貨を売り,割安な通貨を買う.そして乖離が元の水準に回帰した後に反対売買により収益を得る.この共和分ペアトレードが暗号資産市場においてどの程度機能するか検証すべく,実際の暗号資産データを用いて投資シミュレーションを実施した.さらに共和分関係が壊れるリスクを考慮し,分散投資によって収益を安定化できることを確認した.
著者
池尻 良平 池田 めぐみ 田中 聡 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.247-255, 2021-09-10 (Released:2021-09-22)
参考文献数
17

本稿では,木村ほか(2011)の職場における経験学習尺度を用いて,若年労働者の経験学習を測定する際,どのように因子構造を解釈するのが妥当なのかを考察した.その結果,若年労働者を対象にした場合は,「具体的経験」で1因子,「内省的観察」,「抽象的概念化」,「能動的実験」で1因子の合計2因子構造が,最も妥当性が高いことが示された.この結果を踏まえ,経験学習の測定時における因子構造については,4因子構造に固定化せず,経験学習モデルと因子構造の対応を柔軟に解釈する方が分析の質の向上につながる可能性があることを示した.
著者
秋山 朋也 杉本 誠忠 酒本 隆太 鈴木 智也
出版者
一般社団法人 日本金融・証券計量・工学学会
雑誌
ジャフィー・ジャーナル (ISSN:24344702)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.57-78, 2021 (Released:2021-04-23)
参考文献数
22

本研究では,貿易通貨取引比率の偏りによって生じる外国為替レートのアノマリーについて分析した.日本では江戸時代以前より五十払い(ごとばらい)という商習慣があり,ゴトオビに国内輸入企業の資金決済が集中しやすい.その結果,海外企業への支払いのために円売り需要が一時的に高まり,日本時間10時頃に公示される仲値に向けて円安になりやすい.これは「ゴトオビアノマリー」と呼ばれ,投資家らの経験則として俗世間的に知られているが,ゴトオビの性質上サンプルサイズが小さいため,統計的な信頼性を確保することが難しい.そこで本研究では,前倒しゴトオビ(ゴトオビが休日の場合の前営業日)を加え,サンプルサイズを拡張したうえで,ゴトオビアノマリーの妥当性について統計的仮説検定を行った.その結果,国内輸入における貿易通貨取引比率が最も高い米ドル(USD/JPY)において本アノマリーの傾向が強く,続くユーロ(EUR/JPY)やクロスレート(EUR/USD)において徐々にアノマリーの傾向が弱まることを確認した.さらに本アノマリーの活用事例として投資シミュレーションを実施し,有益なパフォーマンスを得るためのエントリータイミングについて検証した.
著者
蔭山 雅洋 鈴木 智晴 藤井 雅文 中本 浩揮 和田 智仁 前田 明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.517-535, 2016 (Released:2016-12-14)
参考文献数
37
被引用文献数
2 5

The purpose of this study was to clarify the profiles of lower limb and trunk motion during baseball pitching in relation to differences between the mound and the flat ground, and to determine the motion characteristics while pitching from the 2 locations.  The subjects were 12 baseball pitchers (age 18.6±2.5 yr, height 173.4±6.5 cm, weight 74.7±11.0 kg) who belonged to high school or university baseball teams. Three-dimensional positions of 36 reflective markers attached to each subject were tracked by an optical motion capture system (Mac3D System) with 12 cameras. The ground-reaction forces (GRF) of the pivot and stride legs during pitching were determined using 2 multicomponent force plates. Pitching motion was divided into two phases: phase 1 was defined as the period from when the knee of the stride leg reached maximal height (MKH: 0%time) until the point when the stride foot made contact with the ground (SFC: 100%time), while phase 2 was defined as the period from the SFC until the point when the ball was released (REL: 200%time). Ball velocity was measured using a radar gun.  The results were as follows: 1) The maximum and average ball velocities were significantly higher when pitching was performed from the mound than from the flat ground (p<0.05). 2) Hip/knee flexion angles and hip abduction/extension angular velocities on the pivot leg were significantly greater for mound pitching than for flat ground pitching, and the hip/knee extension angle and hip adduction/internal rotation/flexion angular velocities on the stride leg were significantly greater for the former (p<0.05). 3) The GRF of the stride leg was significantly greater for mound pitching than for flat ground pitching (p<0.01). 4) Upper torso and pelvis angle/angular velocities at SFC and the maximum pelvis, upper torso and trunk tilt angular velocities were significantly greater for mound pitching than for flat ground pitching (p<0.05).  The present results indicate that baseball pitchers show biomechanical differences in the kinematic and kinetic profiles of the trunk and lower limbs when pitching from the mound in comparison with the flat ground, and that high school or collegiate baseball pitchers can increase their pitched ball velocity by using the height of the mound.
著者
蔭山 雅洋 鈴木 智晴 岩本 峰明 中島 一 前田 明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.737-757, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
39

The purpose of the present study was to clarify the profiles of the lower limb and trunk motion during baseball pitching in relation to their differences between the wind-up and the set positions, and to determine how the ball pitching velocity can be increased in the set position. The subjects were 12 high school baseball pitchers (age: 16.4±0.5 yr, height: 173.7±4.8 cm, weight: 64.8±8.1 kg). Pitching was assessed using a three-dimensional motion system and 2 multicomponent force plates. It was found that 1) the maximum and average pitched ball velocities were significantly lower in the set position than in the wind-up position, 2) the maximum ground-reaction force of the pivot and stride legs and the impulse of pivot during the stride phase (from the time of maximal stride knee height to the time of maximal anterior push-off force) were significantly lower in the set position than in the wind-up position, and 3) the maximum upper torso/trunk twist angular velocity and the pelvis/upper torso angular velocity at moment of the stride foot contact were significantly lower in the set position than in the wind-up position. These results indicate that 1) the ball pitching velocity in the set position is lower than in the wind-up position. In addition, the factors associated with this lower ball velocity are suggested to be 2) decreased momentum of the pivot leg and 3) decreased rotation motion of the trunk during the arm acceleration phase.   Therefore, in order to increase ball pitching velocity in the set position, increasing the moment to the rear of the pivot leg during a short period and improvement of lower limb strength/power with the extension movement of the hip and knee joint may be important factors.
著者
柴田 雅士 上嶋 健治 平盛 勝彦 遠藤 重厚 佐藤 紀夫 鈴木 知己 青木 英彦 鈴木 智之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.25-31, 1998-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
38

マグネシウム(Mg)は細胞内へのカルシウム(Ca)流入を抑制するCa拮抗物質で,インターロイキン6(IL-6)は臓器の侵襲程度を反映するサイトカインである。心筋梗塞症(AMI)急性期に硫酸Mgを投与し,再灌流障害を示唆する現象の抑制効果を検討した。再灌流療法施行患者連続22例を,再灌流療法前に硫酸Mg0.27mmol・kg-1を静脈内投与する群11例(Mg群)と非投与群11例(C群)とに無作為に割り付け,血中Mg2+濃度とIL-6を測定した。再灌流時の現象は再灌流不整脈,12誘導心電図上のST再上昇および胸痛の増悪とした。再灌流成功は20例(Mg群9例,C群11例)で,Mg群の平均血中Mg2+濃度は投与前0.39mmol・l-1から投与後1.04mmol・l-1に上昇した。再灌流不整脈の出現率はMg群がC群より有意に低く,ST再上昇度はMg群がC群より低い傾向にあった。血中IL-6ピーク値はMg群がC群より低かった。AMI急性期再灌流療法時の硫酸Mg投与は,虚血再灌流障害から心筋細胞を保護する可能性がある。
著者
清水 基之 田中 英夫 高橋 佑紀 古賀 義孝 瀧口 俊一 大木元 繁 稲葉 静代 松岡 裕之 宮島 有果 高木 剛 入江 ふじこ 伴場 啓人 吉見 富洋 鈴木 智之 荒木 勇雄 白井 千香 松本 小百合 柴田 敏之 永井 仁美 藤田 利枝 緒方 剛
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.271-277, 2023-08-31 (Released:2023-09-21)
参考文献数
22

目的:日本の新型コロナウイルス第6波オミクロン株陽性者の致命率を算出し,これを第5波デルタ株陽性者と比較する.方法:2022年1月に7県3中核市3保健所で新型コロナウイルス感染症と診断され届出られた40歳以上の21,821人を,当時の国内での変異型流行状況からオミクロン株陽性者とみなし,対象者とした.死亡事実の把握は,感染症法に基づく死亡届によるpassive follow up法を用いた.2021年8月~9月にCOVID-19と診断された16,320人を当時の国内での変異株流行状況からデルタ株陽性者とみなし,同じ方法で算出した致命率と比較した.結果:オミクロン株陽性者の30日致命率は,40歳代0.026%(95%信頼区間:0.00%~0.061%),50歳代0.021%(0.00%~0.061%),60歳代0.14%(0.00%~0.27%),70歳代0.74%(0.37%~1.12%),80歳代2.77%(1.84%~3.70%),90歳代以上5.18%(3.38%~6.99%)であった.デルタ株陽性者の致命率との年齢階級別比は,0.21,0.079,0.18,0.36,0.49,0.59となり,40歳代から80歳代のオミクロン株陽性者の30日致命率は,デルタ株陽性者のそれに比べて有意に低かった.また,2020年の40歳以上の総人口を基準人口とした両株の陽性者における年齢調整致命率比は0.42(95%信頼区間:0.40-0.45)と,オミクロン株陽性者の致命率が有意に低値を示した.結論:日本の50歳以上90歳未満のCOVID-19第6波オミクロン株陽性者の致命率は,第5波デルタ株陽性者に比べて有意に低値であった.