著者
見目 智紀 落合 信靖 山崎 博範 西須 孝 森石 丈二
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.593-596, 2011 (Released:2011-11-02)
参考文献数
8

The purpose of this study was to investigate the relationship between the loss of thoracic mobility and the stiffness of neck and shoulder. 61 persons (19 males, 42 females) who had no functional disorder in their shoulder were involved in this study. The average age was 34.0 ± 11.1 years old. The method of manipulation where we flex the subject's thoracic spine while holding the neck of the subject was the only maneuver in this study. We assessed VAS and place of the stiffness, change of sagittal spinal curvature in standing and banzai posture. The pop sound in the thoracic joint was obtained in 54 subjects. After the treatment, VAS was significantly decreased from 44.1 ± 29.8 to 18.8 ± 17.6. Among 29 persons feeling neck stiffness, 26 had improved. Among 44 feeling stiffness around upper scapula, 42 had improved. Among 14 feeling stiffness of medial scapula, 13 had improved. 2 felt stiffness on the scapula, 1 was improved after treatment. There was no significant difference between before and after manipulation in thoracic kyphosis, lumber lordosis and inclination of standing. But there was a significant relationship between the range of motion of the thoracic spine and VAS after manipulation. The improvement of the thoracic mobility induced significant improvement in the neck and shoulder stiffness. This result suggested the postural control disorder by the loss of thoracic mobility was one of the important factors of neck and shoulder stiffness.
著者
津村 一美 渡邊 裕之 橋本 昌美 嘉治 一樹 高橋 美沙 重田 暁 千葉 一裕 月村 泰規 見目 智紀 高平 尚伸
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0965, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】棘上筋の筋活動を高める方法として,従来からEmpty can training(ECT)が実施されている。ECTは棘上筋が働きやすい肢位で実施されるため,棘上筋に対して効果的なトレーニング方法であり,他の棘上筋トレーニングと比較しても,棘上筋のより高い筋活動が得られると報告されている。しかし,これらの報告の多くは横断的研究に基づいており,ECTの介入効果を検証した縦断的研究は少ない。そのため臨床現場では,経験則に基づいた治療方法として対象者に施行しているのが現状である。従来,棘上筋の機能評価として肩甲骨面挙上筋力の測定が実施されてきたが,近年では棘上筋の正確な評価が困難であると報告されている。一方で高橋らの報告より,棘上筋筋活動と棘上筋筋厚との間に相関関係があり,筋厚測定が筋活動を反映することが明らかになっている。そこで,本研究は筋厚を測定することにより,ECTが棘上筋筋活動に及ぼす影響を検証し,介入効果を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は肩関節疾患の既往がない成人男性15名(年齢20.8±0.9歳)の30肩とした。対象者の年齢,身長,体重,利き手,スポーツ歴を聴取した。トレーニング介入前に棘上筋筋厚,最大等尺性肩甲骨面挙上筋力を測定した。対象者は週5日,6週間にわたりECTを実施した。トレーニング介入後にトレーニング介入前と同様の項目を測定した。棘上筋筋厚測定は超音波画像診断装置(SSD-4000,ALOKA)を用いて行った。肩甲棘長を100%とし,肩甲棘基部から外側へ10%の部位を測定位置とした。測定位置において,プローブを肩甲棘に対して垂直に固定し,棘上筋の短軸画像を描出した。浅層筋膜と深層筋膜との最大距離を棘上筋筋厚として測定した。棘上筋筋厚は各2回測定し,平均値を採用した。測定肢位は座位とした。測定条件は肩関節内旋位,肩甲骨面挙上30°にて他動保持時とセラバンド負荷時の2条件とした。なお,2kg負荷はセラバンドを用いて手関節近位部に負荷した。最大等尺性肩甲骨面挙上筋力測定は肩関節内旋位,肩甲骨面挙上30°での肢位にて測定した。検者はHand-held dynamometer(μ-tas F-1,ANIMA)のセンサーを手関節近位部に固定し,対象者は3秒間の最大等尺性収縮を肩甲骨面上で2回発揮し,平均値を採用した。ECTは,手関節近位部にセラバンドを固定し,肩関節内旋位にて肩甲骨面0°~30°挙上位までの反復運動を実施した。1回の運動を2秒で完遂し,20回を1セット,インターバルを1分として,1日に3セットを実施した。検者は週2日,代償動作が生じずに適切な肢位でトレーニングを実施できているかを確認した。統計学的解析にはWilcoxonの符号付順位検定を用い,棘上筋筋厚および最大等尺性肩甲骨面挙上筋力をトレーニング介入前後で比較した。なお,すべての解析において有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は同学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2012-014)。なお,対象者には書面にて同意を得た。【結果】棘上筋筋厚は他動保持時,セラバンド負荷時の条件において,トレーニング介入前と比較し,トレーニング介入後に有意に増大した(p<0.01)。最大等尺性肩甲骨面挙上筋力はトレーニング介入前後で有意な変化を認めなかった(p>0.05)。【考察】先行研究より,筋厚は筋活動を反映すると報告されていることから,トレーニングによる棘上筋筋厚の増大は棘上筋筋活動の増加を示唆していると考えられた。しかし,最大等尺性肩甲骨面挙上筋力に変化は認められなかった。最大等尺性肩甲骨面挙上は,運動時に三角筋による張力加重が生じるため棘上筋の筋張力に対する寄与は少ないと報告されている。そのため,最大等尺性肩甲骨面挙上筋力測定は,棘上筋の機能向上を反映する指標としては不十分であり,トレーニング介入前後で変化が認められなかったと考えられた。今回の研究では,対象者を健常成人男性とし,ECTの介入効果を検証した。しかし,実際に臨床で棘上筋トレーニングを実施する対象は,腱板断裂や反復性脱臼等の疾患を有する者である。そのため,今後は,実際に棘上筋の機能を高める必要のある対象者に対しトレーニングの効果を検証していく必要がある。また,ECTと同様に,従来から実施されてきたFull can trainingとの比較を検討し,臨床現場において,それぞれのトレーニングをどのような特徴のある患者に適応させるのかを検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】ECTによる治療介入に対して,棘上筋筋活動量の向上が認められ,理学療法としてのエビデンスを構築する一助となった。
著者
落合 信靖 山﨑 博範 佐々木 裕 山口 毅 木島 丈博 松木 圭介 見目 智紀
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.461-463, 2013 (Released:2013-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Background: Diffusion-weighted imaging (DWI) based on magnetic resonance imaging (MRI) can provide valuable information regarding the microstructure of tissues by monitoring the random movement of water molecules. The diffusion data can be used for determination of quantitative diffusion values such as the apparent diffusion coefficient (ADC). The purpose of this study was to evaluate rotator cuff muscle activity using DWI.Methods: DWI was performed before and after loaded on empty can test and full can test and compared before and after those tests.Results: ADC of supraspinatus, infraspinatus and superior portion of subscapularis were increased after empty can test. ADC of supraspinatus, superior portion of infraspinatus and superior portion of subscapularis were increased after full can test. Anatomical study showed that the infraspinatus had contributed in shoulder abduction in shoulder internal rotation.Discussion: This study showed the agreement with the anatomy of the previous study, an increase of ADC in supraspinatus and infraspinatus in empty can test and an increase of ADC in supraspinatus mainly in full can test. There were possibilities that DWI could evaluate the activity of rotator cuff muscle.
著者
宮島 玄陽 見目 智紀 中脇 充章 佐々木 秀一 大寺 亜由美 落合 信靖
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.619-622, 2015

肩関節脱臼によって損傷した関節唇が外旋位によって整復されることは知られているが回旋による動態は未だ不明である.我々は手術を行った外傷性肩関節前方不安定症患者10名10肩について,損傷した関節唇の肩関節他動回旋時の動態をCine-MRIを用いて評価した.Cine-MRI上で関節唇が関節窩に圧着された肩関節下垂位での回旋角度(以下圧着角)と関節唇が関節窩から離開した回旋角度(以下離開角)を計測した.平均圧着角は15.7±24.6°,平均離解角は-1.1±20.9°であり,10肩中3肩は内旋域のみでも関節唇の関節窩への圧着がみられた.本研究より,関節唇は外旋により関節窩に圧着されても回旋角度が最大内旋に向かうに従い全例離開してしまうことが確認された.一方で内旋域のみでも角度により関節唇の関節窩への圧着が維持される例を30%認め,内旋位固定でも反復脱に移行しない症例が存在する一因と考えられた.