著者
木村 宏恒
出版者
熊本学園大学
雑誌
熊本学園大学経済論集 (ISSN:13410202)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.163-187, 2003-03

冷戦終了後1990年代は、それまで抑圧されてきた諸民族の権利主張が噴出し、民主化の下での多民族国家のあり方が改めて問われることになった。インドネシアにおいても、1998年のスハルト政権崩壊後、各地の地方騒擾は収拾のつかない規模で拡大してきた。本稿は、西カリマンタン州を例に地方騒擾の質はどうなっているのか検討する。インドネシア31州中、アチェとイリアンジャヤ(パプア)の2州を除く大部分の州は、独立という方向では動いていない。州人口の4割を占める先住民であるダヤック人の伝統的共同体は組織的に破壊されてきたが、それは国家による抑圧だけではなく、国民教育や近代化、生活水準の向上、高学歴層の公務員化といった潮流に若い世代が取り込まれていくインドネシア国家の高文化の浸透という脈絡でもとらえる必要がある。現在進行中の地方分権化も中途半端ではあるが、その不満は反中央ではなく、新たな国民国家の枠組みに向かっている。After the cold war, the world entered into the age of ethnic conflicts and the new paradigm of democratic nation-state has been pursued. In Indonesia, after the fall of president Suharto in 1998, there occurred many ethnic conflicts throughout the nation. This article analyses the case of West Kalimantan province to understanding the quality of ethnic disturbance that is different from independence oriented two provinces (Aceh and Papua other than East Timor) among 31 provinces. It is true that the traditional communities of indigenous Dayak were systematically destroyed. But we need to have the understanding that comes not only from the state suppression, but also the expansion of high-culture Indonesian government systematically introduced that were symbolized by national education, modernization, leveling up of living standard, young guys entering into local government etc. The present decentralization framework has many shortcomings but it doesn't have the orientation against the central government but it moves to the new paradigm for democratic nation-building.
著者
木村 宏恒 Kimura Hirotsune
雑誌
熊本学園大学経済論集(清野健先生退官記念号) (ISSN:13410202)
巻号頁・発行日
vol.9(3/4), pp.163-187, 2003 (Released:2006-09-29)

冷戦終了後1990年代は、それまで抑圧されてきた諸民族の権利主張が噴出し、民主化の下での多民族国家のあり方が改めて問われることになった。インドネシアにおいても、1998年のスハルト政権崩壊後、各地の地方騒擾は収拾のつかない規模で拡大してきた。本稿は、西カリマンタン州を例に地方騒擾の質はどうなっているのか検討する。インドネシア31州中、アチェとイリアンジャヤ(パプア)の2州を除く大部分の州は、独立という方向では動いていない。州人口の4割を占める先住民であるダヤック人の伝統的共同体は組織的に破壊されてきたが、それは国家による抑圧だけではなく、国民教育や近代化、生活水準の向上、高学歴層の公務員化といった潮流に若い世代が取り込まれていくインドネシア国家の高文化の浸透という脈絡でもとらえる必要がある。現在進行中の地方分権化も中途半端ではあるが、その不満は反中央ではなく、新たな国民国家の枠組みに向かっている。After the cold war, the world entered into the age of ethnic conflicts and the new paradigm of democratic nation-state has been pursued. In Indonesia, after the fall of president Suharto in 1998, there occurred many ethnic conflicts throughout the nation. This article analyses the case of West Kalimantan province to understanding the quality of ethnic disturbance that is different from independence oriented two provinces (Aceh and Papua other than East Timor) among 31 provinces. It is true that the traditional communities of indigenous Dayak were systematically destroyed. But we need to have the understanding that comes not only from the state suppression, but also the expansion of high-culture Indonesian government systematically introduced that were symbolized by national education, modernization, leveling up of living standard, young guys entering into local government etc. The present decentralization framework has many shortcomings but it doesn't have the orientation against the central government but it moves to the new paradigm for democratic nation-building.
著者
木村 宏恒 大坪 滋 長田 博 北村 友人 伊東 早苗 新海 尚子 内田 綾子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、「開発途上国における貧困対応総合政策の学際的研究」と題し、これまでの経済学中心の国際開発研究の世界を止揚し、開発政治学、開発社会学、教育と開発といった諸側面から総合的に国際開発にアプローチした。貧困削減を例にとって、真に学際の名に値する途上国貧困対応の総合政策を明らかにすることを通じて、開発学の学際的構築についての展望を示すことをめざした。3年目には、締めの国際シンポジウムも行い、国際開発研究科の紀要で特集を組んだ。結論として、現在の国際開発の綱領的文書になっている国連2000年決議「21世紀開発目標(MDGS)は、貧困・基礎教育・基礎保健といった社会開発中心の構成になっているが、構造的に貧困を減らし、その目標を達成する要因は、第一義的に経済成長であり、第二にその経済成長の枠組みをつくるのは政府の役割(ガバナンス)である。政府の対応能力が欠けると経済成長はできない。また、経済成長が第一と設定される故に、貧困削減の切り札のように言われる貧困層への小規模金融は、その重要性を認識しつつも、中小企業振興政策や農業開発政策一般より重要性は低いと位置付けられなければならない。教育投資はもちろん重要であるが、それによって生み出された人材が、経済成長の中で適所に配置されなければ、改革前の共産国(中国、ベトナム)やスリランカ、インドのケララ州のように「高い人間開発と低い経済成長」と特徴づけられることになる。教育立国は、政府の役割に支えられた経済成長の中で生きてくるという点を確認した。