著者
木村 崇
出版者
日本スラヴ・東欧学会
雑誌
Japanese Slavic and East European studies (ISSN:03891186)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.79-113, 2008-03-30

死生観をめぐる問題は、宗教や人文・社会科学だけでなく、文学も独自の立場で取り扱っている。文学における死生観論は個別の作家や作品を扱う研究において展開されることが多い。そのため日露の文学における死生観の比較を行おうとすれば、体系化された見取り図に、膨大な数にのぼる両国の作家や作品を配置し、縦横あるいは斜めに相互比較をして、そこから総括的結論を導き出す作業が必要となる。本論は紙幅が限られているので、そのような方法を採ることができない。そこで筆者は、死生観が典型的な形で現れる状況をいくつか設定し、同様の状況を描いている日露の作品をランダムに選んで並列させて考察することにした。論文冒頭では、この比較方法をめぐって、その肯定的意義が述べられるが、またその限界についても言及される。「1章 肉親や近親者が死んだとき…」では、有吉佐和子『恍惚の人』、A.ソルジェニーツィン『マトリョーナの家』、ドストエフスキー『罪と罰』などを用いて、葬儀や追善供養などの慣習に見られる生者の戸惑い、疑念について分析し、これらの儀式が死者と対峙する人々にとって、なぜ欠かせない行為なのかを考察する。「2章 死後の世界と死ぬまでの世界」ではまず、「あの世」があるのかないのかをめぐって対立する二つの考え方が、日露の文学作品にどのような形で描かれているかを検討する。もちろん取り上げるべき作品は多数に上るが、本論では、トルストイ『戦争と平和』におけるアンドレイとピエールの対話を別に、ロシアにおける無神論的立場と有神論的立場の代表的な例を考察する。そのうえで正岡子規が『病牀六尺』で到達した観点をアンドレイのそれに対置してみる。また、避けることのできない死をどのようにして受け入れるかという問題を、日露の「水生生物」を主人公にした小作品、すなわち井伏鱒二『山椒魚』とサルティコフ・シェドリンの『スナモグリ』を素材に論じている。さらに、トルストイ『イワン・イリイチの死』をとりあげ、思索者トルストイとは異なる小説家トルストイの「死」へのアプローチについて分析する。「3章『死』に至る様々な道」では、無神論的な確信もなければ有神論的な達観もできない生者の迷いを通して、おそらくは大多数の人々がとるにちがいないこの典型的な態度に現れる死生観の「ゆらぎ」の問題を考察している。中心的に扱った作品は夏目漱石『門』である。また後半では「捕虜となる恥辱」よりも「死」が優先された第2次世界大戦時の日本とソ連の兵士の運命を通じて、「生」が限りなく軽んじられる状況における「生への執着」、「死者への思い」の問題を比較している。扱った作品は大岡昇平の『野火』とブイコフの『死者に痛みはない』である。「結語にかえて」では、このきわめて限られた比較作業から何が見えてきたか、また今後同様な比較研究を行うことによってどのような新知見が得られそうかについて、国際会議での口頭報告などに対する聴衆の反応などを紹介しつつ、言及している。
著者
木村 崇
出版者
中京大学
雑誌
中京大学教養論叢 (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.101-171, 1978-07-01
著者
木村 崇
出版者
中京大学
雑誌
中京大学教養論叢 (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.765-789, 1978-03-20
著者
木村 崇 生嶋 君弥 若家 冨士男 蒲生 健次
出版者
公益社団法人 日本磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 = Journal of Magnetics Society of Japan (ISSN:02850192)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.695-698, 2001-04-01
参考文献数
5

Hall resistance (HR) of a cross-shaped NiFe wire of submicron scale was investigated experimentally and numerically. We found that the HR curve showed various properties depending on the direction of the magnetic field and that the HR had three jumps corresponding to the switching fields in each probe. In order to control the magnetic fields where the HR shows the jumps, the effect of the pad pattern connecting to the wire on the switching field was investigated. The minor loop of the HR was also studied.
著者
木村 崇是 若林 茂則
出版者
日本第二言語習得学会
雑誌
Second Language (ISSN:1347278X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.89-103, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
35

Tom ate an apple/applesという文において,目的語がもつ数素性や定性に応じて,動詞句によって表される事象の(非)完結性が決定される.本稿では,そういった文がもつ完結性の解釈を通して,冠詞などの語彙項目および数,定性などの形式素性の第二言語習得について,母語からの転移や意味・語用的計算などの観点から考察する.これまでの研究で,the applesのような定複数名詞を目的語として取る場合の完結性の解釈が困難であることが知られてきた(Kaku, 2009; Kimura, 2014; Wakabayashi & Kimura, 2018).また,初級学習者は(非)完結性解釈の際,数素性や定性の違いをうまく計算に取り込めないことも示されてきた(Kimura, 2014; Wakabayashi & Kimura, 2018).その原因として,先行研究では,定複数名詞句の計算の複雑性や発達中の中間言語における機能範疇の欠落などが提案されてきた.本稿では,これらの研究の問題点を指摘し,代案となる,以下の説明を提示する.すなわち,完結性は語用論的知識に基づいて尺度含意(scalar implicature)によって計算される(Filip, 2008)ため,語用論的知識の使用が難しい初級学習者にとっては,この尺度含意の計算が実行できず,その結果,表面的には形式素性が形態統語の計算にうまく取り込まれていないように見える.また,中級学習者になれば,尺度含意計算に基づく完結性の計算は行われるが,定冠詞theで示され,数が複数(plural)である名詞句の完結性解釈に問題が残る.これは,学習者の母語には,形式素性「定(definite)」を表すtheと同等の語彙項目が存在しないため,尺度含意の計算の基となる定冠詞the の習得が難しいためである.
著者
木村 崇 生嶋 君弥 若家 冨士男 蒲生 健次
出版者
公益社団法人 日本磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:02850192)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4_2, pp.695-698, 2001 (Released:2007-02-02)
参考文献数
5

Hall resistance (HR) of a cross-shaped NiFe wire of submicron scale was investigated experimentally and numerically. We found that the HR curve showed various properties depending on the direction of the magnetic field and that the HR had three jumps corresponding to the switching fields in each probe. In order to control the magnetic fields where the HR shows the jumps, the effect of the pad pattern connecting to the wire on the switching field was investigated. The minor loop of the HR was also studied.