著者
崔 光煥 木村 建一
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.51, pp.43-51, 1993-02-25
被引用文献数
1

再生器,熱交換器,蓄乾槽,および除湿器からなる太陽熱利用開放形吸収式除湿乾燥システムのうち,再生器について屋内で行った実験の結果を報告する.従来の屋外の実験では,外気条件の変動,特に風速の変動が激しいため,再生器の特性を把握することが困難である.そこで,開放式模型再生器を製作し,定常状態で再生表面の温度を一定にし,水溶液の流量を制御しながら再生器の空気層の高さと風速を変え屋内実験を行い,風速と風量の再生量に及ぼす影響を調べた.その結果,空気層の高さが異なる場合,風量の水分蒸発量への影響はほとんどなく同じ空気層の場合には風速が大きいほうの再生量が多かった.また,吸収剤として使用した塩化リチウム水溶液の電導率と温度を測定しあらかじめ作っておいた塩化リチウム水溶液用標準濃度曲線を用いて運転中に水溶液の抽出をせずに濃度を容易に連続して求める新しい方法を提案した.実際にこの方法で濃度を求め連続記録することができた.実験結果から計算して求めた無次元数間の関係は文献所載の層流に対する物質移動の式に比べ0.5m/s以上の風速域ではやや離れるが,より低風速域ではかなり異なる結果となった.
著者
品田 宜輝 木村 建一 桂木 宏昌 宋 城基
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.153, pp.45-56, 2009-12-05

北九州市の大学校舎建築に導入されたソーラーチムニーと地中ピットとを組み合わせた自然換気システムを対象とし,運用下におけるその性能を把握することを目的として開校後4年間に渡って実施した実測調査の結果を述べる.本報では実測対象建物の自然換気システムと補助空調システムの概要,本システムの運用状況,自然換気作用時の給排気風量の実測結果について報告する.自然換気が作用する時間は開校3年目まで増え続け,2年目から4年目の自然換気作用時間は冷房期間の33〜61%を占めた.自然換気作用時間の80%程度が夜間であった.自然換気作用時の給排気風量は,年間の全時間平均で,地中ピットからの給気量は6,000m^3/h程度,ソーラーチムニーからの排気量は4,000m^3/h程度であり,4年間を通してほぼ安定していた.この差は主に排気ファンによる影響であり,ソーラーチムニーからの排気量は風量の多い便所排気ファンの運転停止に左右されていた.給排気風量は,中間期に増加し,夏期に減少する傾向が見られた.
著者
北山 研二 川上 善郎 村瀬 鋼 木村 建哉
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

課題研究「なぜ人々は物語なしに生きていけないのか------多メディアの中の物語の発生・展開・終焉------」を遂行するための本研究会は、理論的研究部門と事例調査研究部門とに分けて、それぞれに必要な多種多様なレクチャー・研究会(21回)、国際シンポジウム(1回)、現地調査(2回)・討論会(6回)等を3年間実施した。理論的研究としては、物語の定義、物語の成立条件、物語の存在論などが研究され、狭義の物語よりは多分野横断の物語の再定義、物語の存在論的可能性が提起された。事例調査研究では、既存の特定の分野には限定できず複数分野横断の研究となったが、あえて分類すれば、文学(4件)、メディア(5件)、映画(3件)、美術(2件)、文化制度(2件)、哲学(1件)、消費社会(1件)、演劇・オペラ(1件)、経済(1件)、心理(1件)であった。そこで論点となったのは、どの分野でも物語が大きな役割を果たし、「大きな物語」(国家論、革命改革論、資本主義、社会正義、会社至上主義、大義名分、文化制度、新旧論争、モダニスムとポストモダニスム、成功物語、共同体神話、良妻賢母、女性差別等々)とその細部にはそれとは矛盾するような無数の「小さな物語」(失権復活、隠れた天才、娯楽優先、事実優先、対象固執、恋愛至上主義、個人利益優先、個性尊重、怨恨復讐、青春回顧、年功序列、伝統墨守、自分探し等々)がせめぎ合っている、あるいは現代特有の現象として「大きな物語」に回収されない「小さな物語」の集合などが確認された。しかし、「大きな物語」の復権の可能性があることも確認された。今回の課題研究では、こうした理論的研究と事例調査研究を相互に連携させて研究会・レクチャー・討論会を組織したので、新しい視点と論点が交錯し研究に奥行きを与えることができ、多分野への総括的問題提起型の内容豊かで刺激的な報告書が作成できた。
著者
宇田川 光弘 木村 建一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.265, pp.125-132, 1978-03-30
被引用文献数
3

1) 多数室の室温, 除去熱量の計算に壁体の熱伝導を含んだ形で室についての熱平衡式よりなる連立方程式を室温あるいは除去熱量を未知数として解く方法を用いた。この方法では収束計算は不要であり, 室数の次元の連立方程式を解けばよい。また, 熱伝導, 室温変動の計算には後退差分を用いたので計算途中に部材の熱的性質や計算時間間隔の変更が可能であり, 応答係数を用いる方法に比べより広い条件についてのシミュレーションを行なうことができる。2) 室温の計算に必要な連立方程式は対象室数の次元であるため冷暖房システムと室とを組み合わせたシミュレーションにも適用しやすい。この場合, あらかじめ自然室温を計算しておき, 自然室温と除去熱量との関係を用いれば室についての方程式を簡単することができ, シミュレーションの実行上便利である。3) 室温, 除去熱量と外乱との関係をそれぞれの外乱別に表現したが, これを用いて気象条件の室内に及ぼす影響を建築全体について定量的に把握することができる。4) 屋根10cm, 外壁5cmの外断熱を施し, 2重ガラスとしたタウンハウス中間住戸について断熱戸のある場合とない場合の暖房の状態をシミュレートした。断熱戸のない場合でも晴天日は夜間においても南室は暖房が不要であり, 北室でも約500kcal/hの暖房を行なえば室温20℃の設定を保つことができた。また, 断熱戸は負荷を60%程度に減少させ, 室温を0.5〜1.5℃高める効果があることが示された。5) 室内相互ふく射は連立方程式には含まれていないが, 計算精度を高めるためには考慮する必要がある。相互ふく射の扱いは壁体での熱平衡式に線型化したふく射の項を入れれば可能であるが, 各壁面の温度が相互に関連するため室数のみの方程式とするのは困難であり, 方程式が建築全体の壁の総数+室数の次元となる。このため実用的には何らかの簡略化を行なう必要がある。6) 計算時間間隔はここでは1時間としたが, 時間間隔と計算精度との関係を明らかにし, 計算目的, 精度に応じ適切な計算時間間隔を選定する必要があろう。