著者
木村 賛
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.169-174, 2014 (Released:2016-04-16)
参考文献数
32

直立二足歩行は地球上でヒトのみが行う特異なロコモーション様式である.この歩行がいつ,どこで,どのように,なぜ獲得されたかを知ることは人類進化過程最大の課題の一つである.ロコモーションという動きを知るためにヒトと類縁であるサルのロコモーションを調べる比較運動学の研究が進み,化石の証拠と相まって二足獲得過程を明らかにしてきた.ヒトはアフリカにおいて700 万年ほど前に二足歩行を行うことでサルと分岐した.二足歩行能力はサル特有の樹上三次元での生活へ適応する中から発達してきた.これにより,ヒトは樹上より地上に降り立った時点から,すでにかなり優れた二足能力を持っていたと考えられる.これらの考え方は化石の証拠と矛盾しない.なぜヒトが二足歩行を始めたかに関してはいまだ不明なところが多い.
著者
木村 賛
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.13-16, 2006-03

大学院看護科学論授業で問題となった,検証可能性というものについて,ヒトの進化過程に関する仮説の例を引いて考察した.
著者
木村 賛
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.1-3, 2006 (Released:2006-06-23)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
岡 秀郎 岡田 守彦 木村 賛 葉山 杉夫
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.207-220, 1996 (Released:2009-09-07)
参考文献数
16

サル類の樹上運動への最高の適応としての腕渡り動作を取り上げ,喉頭腔を特殊化しなかったヒトの動作時の喉頭動態について,新たに開発された高解像度内視鏡ビデオシステムを用い,直接,喉頭の動態を観察すると共に,動作ならびに筋の作用機序の面から喉頭括約作用の動作への関与について検討した。腕渡り動作時,被験者の経験している運動形態の差異により,喉頭動態ならびに上肢・上肢帯筋群の活動様式に差異が認められた。喉頭動態に関しては,二次元平面運動(柔道・剣道)経験者では喉頭閉鎖が観察されたが,三次元空間運動(体操)経験者では喉頭は終始開放されていた。筋活動様式に関しては,二次元平面運動経験者の場合,右手懸垂スイング時に上腕骨の内転動作に参画していると考えられる,三角筋前部,大胸筋胸肋部に顕著な放電の出現・増大が観察され,これらの放電の増大時に喉頭括約が認められた。二次元平面運動経験者の場合,内転動作時に運動支援として胸郭の固定が必要となり,胸腔内圧をあげるための喉頭括約作用が要求されるようになったものと考えられる。一方,三次元空間運動経験者の場合,同時期,三角筋前部,大胸筋胸肋部の顕著な放電の出現は観察されず,喉頭括約は認められなかった。また,二次元平面運動経験者でも右手懸垂スイング時,三角筋前部の放電は減少傾向を示し,大胸筋胸肋部に顕著な放電の減少が認められた場合,喉頭括約は認められなかった。これらのことから,肩関節への負荷状態により,運動支援としての胸郭の固定が必要となり,胸腔内圧をあげるための喉頭括約作用が要求されるようになったものと考えられ,ヒトの動作と喉頭括約作用との関係について,肩関節への負荷量の状態に起因する運動支援としての前庭ヒダ・声帯ヒダの関与の存在を強く示唆するものであった。