- 著者
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林 優子
末光 茂
- 雑誌
- 川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.2, pp.237-244, 2001-12-25
重症心身障害児(重症児)施設旭川児童院では, 在宅訪問事業や通園事業, および外来の充実により, 短期入所利用が急増している.重症児では, 短期入所の際に不適応反応を示す例が多く, かつて環境変化や母子分離が引き金となり体調が悪化し, 死亡に至った例を経験した.今回, 我々は, 在宅重症児の重度化傾向が進む中, より安全に短期入所を受け入れられるよう様々な取り組みを行い, その成果と今後の課題について検討した.平成11,12年度短期入所利用者73名には医療的問題を有する例が多く含まれていたが, 利用時の死亡例はなく取り組みは有用であった.しかし, 大島分類1の40名中半数に, 摂食困難, 過緊張, 不眠, 呼吸障害の悪化などの症状が見られ, 特に呼吸, 摂食障害を伴う年少児の症状が重篤であった.また, 2名に骨折があり, より安全な受け入れに向けての対策が必要と考えられた.今後も, 医療ニードの高い重症児の短期入所が増加すると予測される.在宅重症児を支援していくために, 短期入所を単に一時的な預かりではなく, 重症児の自立への支援の一つととらえる視点が必要である.そのためには, 保護者と信頼関係を築き, 専門性を生かしたより安全で質の高い短期入所の受け入れ体制の整備が重要と考えられた.