著者
河村 麻果 入江 智也 竹林 由武 関口 真有 岩野 卓 本谷 亮 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.191-202, 2020-09-30 (Released:2020-12-23)
参考文献数
29
被引用文献数
1

セラピストが認知行動療法を効果的に実施するためには、クライエントとの良い治療的関係が必要である。そのなかでも特にアライアンスの質の向上が重要視されている。WAI-SRは、アライアンスを測定するうえで適切な心理測定的ツールであることが明らかとなっているが、その日本語版は作成されていない。そこで本研究では、WAI-SRの日本語版(J-WAI-SR)を作成し、その信頼性と妥当性を検討した。その結果、J-WAI-SRは3因子構造と捉えることが妥当であると判断した。収束的妥当性については、日本語版セッション評価尺度との間に想定されたとおりの強い正の相関があった。信頼性については、内的整合性(α=.93, .96)について十分な値が得られ、再検査信頼性についても、許容範囲内の値が得られた(ICCagreement=.75)。以上のことから、J-WAI-SRは一部の信頼性と妥当性が確認された。
著者
本谷 亮
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.411-417, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
28

緊張型頭痛は, 慢性頭痛の一種であり, 生活に支障をきたすきわめてありふれた疾患である. また, 緊張型頭痛は, 発症や維持に心理社会的要因が強く関係する神経・筋系の代表的な心身症であり, 生活障害の改善を目的とした心身医学的治療が不可欠であるとされる. 緊張型頭痛への心身医学的治療では認知行動療法が有効である. 今回, 疼痛の心理学的な維持モデルであるfear-avoidance modelに基づく認知行動療法プログラムを作成し, 試験的に実施した. その結果, 緊張型頭痛患者の痛みに対する破局的思考と回避行動が減少し, 生活障害の改善を示し, 3カ月後時点での効果維持を認めた. 本稿では, 緊張型頭痛に対する認知行動理論に基づく維持メカニズム, 上述した生活障害の改善を目的とした治療プログラムを紹介するとともに, プログラム実施における配慮や工夫, 課題について報告する.
著者
本谷 亮 松岡 紘史 小林 理奈 森若 文雄 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.13-20, 2011-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、緊張型頭痛患者を対象として、痛みの臨床症状と心理的要因である痛みに対する認知的要因・感情的要因が、緊張型頭痛患者の抱える生活支障度の身体的側面、社会的側面、精神的側面をそれぞれどの程度予測しているか明らかにすることであった。成人の緊張型頭痛患者73名を対象に質問紙調査を行い、重回帰分析を用いて、緊張型頭痛の生活支障度の各側面に対する予測要因を検討した。その結果、生活支障度の中でも身体的側面に関する生活支障度に対しては痛みの臨床症状が予測しているが、社会的側面や精神的側面に関する生活支障度に対しては、痛みに対する破局的思考や逃避・回避行動といった痛みに対する認知的要因・感情的要因が強く予測していることが明らかとなった。キーワード:緊張型頭痛頭痛症状痛みに対する破局的思考逃避・回避行動生活支障度
著者
河村 麻果 入江 智也 関口 真有 坂野 雄二 本谷 亮
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.73-88, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
31

認知行動療法をより効果的に提供するためには、セラピストを対象とした同盟の質の向上を促す訓練が必要である。そこで本研究では、同盟の質の向上に重要だと考えられる訓練要素から構成される訓練プログラムを作成し、その効果検証と、よりよい訓練プログラムを作成するための情報を得ることを目的としたパイロットスタディを実施した。その結果、同盟の質の向上についての訓練効果はわずかであったが、同盟の質の改善のためのスキルを用いる自信を高めることができた。今後は、同盟の質を評価する方法を改善し、基礎的な治療関係スキルの訓練と困難事例を対象に治療関係スキルを用いるための2つのステップから訓練を構成する必要性があることが明らかとなった。
著者
本谷 亮 松岡 紘史 坂野 雄二 小林 理奈 森若 文雄
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1193-1200, 2009
参考文献数
26

本研究の目的は,腰背部痛などの慢性疼痛の先行研究で提唱されてきているモデルに基づき,緊張型頭痛における,痛みの維持・悪化のメカニズムの臨床的妥当性を検証することであった.成人の緊張型頭痛患者72名を対象に,共分散構造分析を用いてモデルを検討した結果,モデルの適合度はGFI=0.86,CFI=0.94,RMSEA=0.078であり,モデルの妥当性が確認された.この結果から,腰背部痛などの慢性疼痛を対象として提唱されている「痛みの維持・悪化モデル」が緊張型頭痛患者に適用され,緊張型頭痛の日常生活への支障度は,痛みに対する破局的思考と痛みに対する恐怖の行動的側面である逃避・回避行動の両方の変数の影響を受けていることが示された.
著者
本谷 亮
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.68-74, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
11
被引用文献数
8

東日本大震災の被災者・避難者の多くは、心身両面においてさまざまな健康問題を抱えている。健康問題の例としては、PTSD症状の出現、抑うつ、不安、焦燥、怒りの増加、睡眠障害、血圧上昇、アルコール依存症、生活習慣病、あるなどがあげられる。震災がもたらしたこのような健康問題は、震災直後の急性期のみならず、中長期においても大きな問題となっており、被災者に対する継続的なアプローチが必要である。今回の震災では、津波や原発事故のために、強制的に避難をせざるをえず、震災後、住環境が大きく変化した者も多い。動かないことで全身の心身機能が低下する“生活不活発病(廃用症候群)”も、避難している高齢者を中心に散見され、心身の健康問題の悪循環を生んでいる。加えて被災三県の中でも放射線の影響が懸念されている福島県では、住民の屋外活動の減少や食品摂取の過剰制限など、放射線不安が要因で引き起こされている健康問題への対応も課題の一つとなっている。被災者・避難者の抱える健康問題に関しては、ハイリスク者の早期発見、早期支援を行うことが重要である。また、ハイリスク者や対応困難者に対しては、医師、看護師、保健師、心理士など多職種がチームとなって連携したアプローチをすることが不可欠であり、支援に臨床心理学的視点や行動医学的視点が必要となることもある。そして、被災者・避難者の健康増進を考える際には、個々人に対するアプローチに加えて、地域やコミュニティーに対するアプローチも非常に重要であり、いかに地域やコミュニティーを取り込んだアプローチができるかが長期におよぶ被災者・避難者の健康増進のカギとなる。
著者
古川 洋和 松岡 紘史 樋町 美華 小林 志保 庄木 晴美 本谷 亮 齊藤 正人 安彦 善裕 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.363-372, 2009-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
33

本研究の目的は,歯科治療恐怖に対する認知行動療法(CBT)の有効性をメタ分析によって検討することであった.(1)研究デザインとして無作為化比較試験(RCT)が用いられている,(2)CBTによる介入が行われている,(3)プラセボ群,あるいは未治療統制群との治療効果の比較検討が行われている,(4)不安・恐怖に関する評価項目の平均値と標準偏差が記載されている,(5)英語で書かれている,という5つの選定基準を満たす論文を対象にメタ分析を行った結果,CBTが実施された群の治療効果は有意に大きかった(d=2.18).したがって,CBTは歯科治療恐怖の改善に有効であることが示された.本研究の結果は,歯科治療恐怖の治療において質の高いエビデンスを示すことができた点で有益である.今後は,わが国においても歯科治療恐怖に対するCBTの効果を検討する必要性が示唆された.