著者
朴 光駿
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.6, pp.51-67, 2010-03

東アジア国家・地域では共通的にみられる現象であるが,韓国においても少子高齢化が急速に行われている。そして,2005年少子高齢化に対処するために「低出産・高齢社会基本計画」が策定され,さまざまな政策プログラムが実施されている。同計画は大きく3部門からなっており,その1つが「低出産対策部門」である。 低出産対策は中央政府と地方政府のレベルで行われていて,莫大な公費が投入されている。本稿はその具体的な政策プログラムを考察し,その課題を提示することを研究目的としている。そのためには,韓国において出生率が急激に低下した原因に対する分析が必要であり,その原因については統計学的説明と社会経済的説明に区分して議論している。もし,少子化の真の原因に対する事実認識を誤ってしまうと,政策の実効性が期待できないにもかかわらず莫大な財源負担だけが残る可能性もあるのでこの点についての論議は重要である。 低出産対策のプログラムについては,中央政府プログラムと自治体プログラム,そして国民年金における出産クレジット制度とに分けて紹介している。韓国の福祉低出産対策少子高齢化社会出生率低下東アジア福祉
著者
朴 光駿 呉 英蘭
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.63-78, 2006-09-01

この研究は1987年成立した韓国の男女雇用平等法の成立過程を,社会統制理論の観点から分析し,同法律成立の政治過程を明らかにするとともに,その法律の成立過程に対する社会統制理論の説明可能性と限界を明らかにすることをその目的としている。社会統制理論そのものについても,その発展と内容,限界や批判,そして適用上の問題などを中心に,多少詳しく紹介している。研究方法は文献研究とともに,当時の男女雇用平等法案づくりに携わっていた担当者に対する面談調査が併用された。男女雇用平等法の形成過程については,主につぎの3点を中心に分析された;(1)その立法化が女性団体の立法要求に対する政府の反応であったのか,(2)政府,与党からみた政治的状況は,女性有権者を政治的に包摂する必要に迫られていたものなのか,(3)実際成立した法律の内容は,事前に計画されたものなのか,それとも予期されなかったものであったのか。研究結果は次のようにまとめられる;(1)男女雇用平等法は1980年代後半から成長してきた女性運動の組織化がその背景にあり,それは立法化の重要な圧力になっていた,(2)同法の立法化論議の時期は,総選挙と大統領選挙の時期と一致していて,その重要な目的は女性有権者の政治的動員であった,(3)実際に成立された同法律の内容は必ずしも女性団体の要求が反映されたものではない。平等法成立における女性包摂も女性平等労働権保障より既存の統治権維持を優先視し,核心的な政策決定に関する女性側の提案は受け入れられていない。
著者
朴 光駿
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 = Journal of the Faculty of Social Welfare (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.11, pp.79-99, 2015-03

The Homenyiin System combined with the public assistance implemented by the Japanese Government-General of Korea had disappeared just after the Nation Independence of 1945, but the System of that of Japan has existed till now. The paper attempts to explainabout that from the three points of view. The first explanation concerns that the Homenyiin System was originated by the Japanese indigenous culture, the region initiative development and the paternalistic atmosphere of the society, and it was quite different from that of Korea. The second explanation is relating to the personnel of the system, and the Korean members of Homenyiin was tended to be defined by the people as the national traitor. And the third one concerns that how the system relevant to the relief of poverty, the original aim of the public assistance. As far as in colonial Korea is concerned, the Homenyiin system was less relevant to the essential function of the poverty relief in Korea.HomenyiinSystemHistory of KoreanSocial WelfarePublic AssistanceComparative Social Policy
著者
朴 光駿
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 = Journal of the Faculty of Social Welfare (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.14, pp.133-152, 2018-03

本研究の目的は,朝鮮王朝の防貧・救貧制度である倉制度(還穀制度)が大規模化したことの説明を思想的観点から試みることである。倉制度は中国の産物であり法家的制度であったが,それを輸入した朝鮮王朝ではそれを全くの儒家的制度として解釈しており,それがその大規模化の一因をなしたことを明確にしたい。法家思想においても倉制度の目的の1つは飢饉の際に貯蔵穀をもって貧民を救済することにあったが,米価格の変動から農民の生活を安定化すること,勤勉で自立した農民を養成することがより重要な目的であった。ところが,儒家の影響がほぼ絶対的であった朝鮮王朝では,還穀はもっぱら国王の仁政を実現する手段として捉え,ほぼ全人民への穀物提供が日常化された。また,本研究は,還穀制度が大規模に実施されたことが,朝鮮社会の貧困観,民衆の貧困に対する態度,そして全体としての社会経済システムにどのような影響を与えたのかについても検討する。本研究は基本的には文献研究であるが,韓国で倉制度を専門的に研究してきた歴史学者からのヒアリング,そして韓国歴史研究会での研究報告と意見聴取などの研究方法を併用した。朝鮮王朝救貧政策倉制度環穀制度法家思想