著者
杉浦 健之 徐 民恵 幸村 英文 平手 博之 藤田 義人 薊 隆文 伊藤 彰師 笹野 寛 祖父江 和哉
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.384-387, 2011 (Released:2011-10-10)
参考文献数
12

プラミペキソールの服用後に有痛性下肢運動障害疾患が軽快した症例を報告する.患者は60歳代の男性で,右膝関節の再置換術後から右足趾(第2~5)に痛みと不随意運動が発現した.足趾の痛みは,持続性で歩行時に増強していた.不随意運動は,安静時に足趾内転位を示すジストニアと,1-2 Hzの不規則な持続性の振戦であった.下肢遠位側の病変で,痛みと不随意運動を特徴とする“痛む脚と動く足趾症候群”を疑ったが,確定診断には至らず,有痛性運動障害疾患として取り扱った.仙骨硬膜外ブロックとプラミペキソールの内服後に,足趾の痛みと不随意運動は軽減した.プラミペキソールを増量後に,不随意運動はほぼ消失し,歩行が円滑にできるようになった.その後は,坐骨神経ブロックを隔週に行い,プラミペキソールの内服を継続している.下肢静止不能症候群の治療薬であるプラミペキソールは,本症例のような有痛性下肢運動障害疾患にも効果がある可能性がある.
著者
平手 博之 笹野 寛 藤田 義人 伊藤 彰師 薊 隆文 杉浦 健之 祖父江 和哉
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.769-774, 2009 (Released:2009-06-11)
参考文献数
11

血清ナトリウム異常は単にナトリウムの過不足をあらわしているのではなく、水に対する相対的な変化をあらわしている。ナトリウムの動態は水の移動に連動している。ナトリウム濃度異常を管理するに際しては体内水分量過不足の評価、体内総ナトリウム量の評価、血漿浸透圧、尿中ナトリウム濃度などを手がかりにして動態を理解する必要がある。中枢神経症状がみられるような重篤な濃度異常は補正を必要とするが、原疾患に対する治療に加え、ナトリウムの絶対量の増減、水分増減の関係をもとに、高張塩化ナトリウム液、生理食塩水、0.45%塩化ナトリウム液、5%糖液、水制限、利尿剤などを組み合わせ、急激な補正自体も重篤な神経系合併症を発症するリスクを伴う事を念頭に置き、適度な速度と十分なモニタリング下に適切な補正管理をおこなうことが重要である。
著者
杉浦 健之 祖父江 和哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

神経絞扼性モデル動物では、温冷水を用いた行動実験では、水への接触の影響が出た。マウス足底皮下へのDiI注入後数週間で脊髄後根神経節細胞までDiIは輸送された。足底に分布する培養神経細胞では、カプサイシンへの反応性からTRPV1を発現した細胞の頻度は比較的少なかった。皮膚と内臓へ分布する神経では、TRPV1の関与と酸に反応するイオンチャネルも異なることが示唆された。最近TRPA1阻害が神経原性炎症を抑制することが報告され、TRPA1の神経分泌能への関与が示唆される。
著者
加藤 利奈 杉浦 健之 酒井 美枝 草間 宣好 藤掛 数馬 祖父江 和哉
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.5-8, 2022-01-25 (Released:2022-01-25)
参考文献数
7

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の病態生理には,脳腸相関が重要な役割を果たす.発症と増悪にはストレスが深く関わり,治療として心身医学的アプローチも有効とされる1).今回IBSに対し,心理療法と漢方療法の併用が有効であった症例を経験した.症例は49歳の女性.腹痛により日常生活に支障をきたし,さらに全身のしびれが出現したため,当院いたみセンターへ紹介された.初診時,臨床心理士の評価で,不適切な養育や配偶者暴力体験などの背景に加え,実父による心理社会的ストレスが明らかになり,これらが消化器症状増悪に関与していると判断した.心理療法開始後,全身のしびれがなくなり,行動が活性化した.しかし,消化器症状は継続したため,抗不安作用のある桂枝加竜骨牡蛎湯と芍薬甘草湯を併用したところ,症状の改善が得られ,生活の質および日常生活動作が向上した.IBS症状増悪に関連する心理社会的背景や心理特性を踏まえて心理療法を行い,その後に漢方療法を導入したことが,著明な症状の改善やQOLの改善につながったと考えられた.