著者
酒井 一徳 杉浦 至郎 尾辻 健太
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.135-144, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
15

【目的】鶏卵アレルギー(EA)の自然歴及びEA遷延のリスク因子を同定する.【方法】沖縄協同病院小児科でEAと診断された児を対象に後向きコホートを作成した.鶏卵耐性獲得率の経年的変化を示し,6歳時点における鶏卵除去継続に関連する1歳台の背景因子に関して検討を行った.【結果】対象210例の鶏卵耐性獲得率は2歳12%,3歳34%,4歳54%,5歳68%,6歳で79%(134/170)であり,6歳時点で解除群134例,遷延群36例,脱落群40例であった.多重ロジスティック回帰分析では,鶏卵完全除去(オッズ比:13.8,P<0.01),卵白sIgE値(class)高値(オッズ比:3.84,P<0.01)が6歳時のEA遷延と有意に関連していたが,性別及びアナフィラキシーの既往とは有意な関連を認めなかった.【結語】約8割の鶏卵アレルギーは6歳までに寛解するが,1歳台の鶏卵完全除去と卵白sIgE高値は6歳以降もEAが遷延するリスク因子である.
著者
林 直史 中川 朋子 松井 照明 杉浦 至郎 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.37-45, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

【目的】ピーナッツアレルギー(PA)の診断におけるAra h 2特異的IgE抗体(sIgE)検査の有用性と,PA患者における他のナッツ類アレルギー合併について検討した.【方法】2014年4月~2015年3月に,ピーナッツsIgE陽性者にAra h 2-sIgE検査を行った.ピーナッツ経口負荷試験(OFC)又は明らかな摂取歴・誘発歴からPAの有無が確定できた217人(そのうちPA群90人)に関して,臨床像を後方視的に検討した.【結果】Ara h 2-sIgE≧0.35UA/mLにおけるPA診断の感度85.6%,陽性基準である≧4.0UA/mLであれば陽性的中率93.1%,特異度96.9%であった.Ara h 2-sIgEは,OFC(n=42)における誘発閾値量や症状の重症度と有意な関連を示さなかった.PA群における他のナッツ類アレルギー合併者は9人(10.0%)であった.【結語】Ara h 2-sIgE陽性基準の妥当性が再評価された.PA患者に対しても,他のナッツアレルギーの有無を適切に鑑別診断する必要性が再確認された.
著者
石黒 智紀 松井 照明 松本 圭司 渡邊 由香利 濵嶋 浩 池山 貴也 窪田 祥平 北村 勝誠 高里 良宏 杉浦 至郎 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.1207-1210, 2021 (Released:2021-11-10)
参考文献数
7

12歳,女児.既往に気管支喘息,アレルギー性鼻炎あり.自宅で作ったたこ焼きを4個摂取直後にアナフィラキシーショック,呼吸不全を認めた.開封後1カ月間室温で保存したたこ焼き粉を使用したこと,ダニ抗原特異的IgEがクラス6と強陽性であったことからパンケーキ症候群を疑った.被疑粉が破棄されていた為,冷蔵保存されていたたこ焼きから虫体数と抗原量の測定を試みた.ワイルドマン・フラスコ法によるダニの洗い出しとELISA法による抗原量測定を実施した.結果は,コナヒョウヒダニ430匹/gを認め診断に至った.ELISAではDer f 1 21.1ng/gを検出したが,これは虫体数に比して少なかった.検出されたダニ抗原量が少なかった原因として,加熱や還元剤による抗原性の減弱,ダニ抗原とグルテンとのジスルフィド結合による不溶化等が考えられた.パンケーキ症候群が疑われるが被疑粉の入手が困難な場合,調理された食品の鏡検を行うことで直接ダニ虫体を確認することを考慮すべきである.
著者
大瀧 悠嗣 北村 勝誠 松井 照明 高里 良宏 杉浦 至郎 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.490-498, 2022-12-20 (Released:2022-12-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2

目的日本の小児における木の実類アレルギーの増加が報告されているが,小児の救急受診患者の背景や誘発症状を検討したものはなく,当センターにおける状況を分析した.方法2016年2月~2021年10月に木の実類の即時型症状で救急外来を受診した29例(27名)について,原因食物,患者背景,誘発症状,治療を診療録から後方視的に検討した.結果原因はクルミ12例(10名),カシューナッツ12例,マカダミアナッツ3例,アーモンド1例,ペカンナッツ1例で,年齢中央値は3歳であった.15例がアナフィラキシー,うち5例はアナフィラキシーショックであった.13例がアドレナリン筋肉注射,うち1例がアドレナリン持続静脈注射を要した.11例が入院し,うち3例は集中治療室へ入院した.初発は22例で,そのうち14例が他の食物に対する食物アレルギーを有していた.結語木の実類アレルギーの救急受診患者は,年少児がアナフィラキシーで初発した事例が多かった.予期せぬ重篤事例を未然に防ぐため,何らかの医学的及び社会的対策が望まれる.
著者
松井 照明 田島 巌 牧野 篤司 内藤 宙大 森山 達哉 渡邊 弥一郎 北村 勝誠 高里 良宏 杉浦 至郎 和泉 秀彦 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.234-240, 2022-08-20 (Released:2022-08-22)
参考文献数
19

目的:ボンラクトⓇ iの原料である酵素分解分離大豆たんぱく(酵素分解SPI)は,熱処理と酵素処理により低アレルゲン化されている可能性があり,そのアレルゲン性を確認することを目的とした.方法:1.酵素分解SPI及びその原料のSPIのポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)及び免疫ブロッティングを行った.2.大豆アレルギー患者に対して皮膚プリックテスト(SPT),豆腐または豆乳とボンラクトⓇ iの経口負荷試験(OFC)の比較を行った.結果:1.SDS-PAGEではSPIよりも酵素分解SPIで全体に低分子化されたバンドが確認され,免疫ブロッティングではGly m Bd 28K及び30Kに特異的なバンドが検出されづらくなった.2.2/3例で,大豆と比較して酵素分解SPIのSPT膨疹径が小さかった.OFCでは3/4例でボンラクトⓇ iの症状誘発閾値たんぱく量が多く,全例で重症度が低かった.結語:ボンラクトⓇ iは低分子化されており,アレルゲン性が低いことが示唆された.
著者
松井 照明 杉浦 至郎 中川 朋子 武藤 太一朗 楳村 春江 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-71, 2017
被引用文献数
1

<p> 【背景】卵黄の経口負荷試験 (oral food challenge : OFC) は, 微量の卵白負荷試験という位置づけで実施されることが多いが, 卵黄に残留する卵白量に関する情報は限られている.</p><p> 【目的】卵黄に残留する卵白量を推定したうえで, 症状誘発閾値の低い卵アレルギー患者に対する加熱卵黄摂取の可否について検討した.</p><p> 【方法】鶏卵から卵黄を分離したうえで加熱し, 卵黄表面の卵白と卵黄膜を用手的に剝離し, 重量を測定した. 2014年6月から2015年2月に施行した加熱卵白OFC陽性者から, 加熱卵白1.0gが摂取可能と判定された11人を対象として, 加熱卵黄OFCを施行した.</p><p> 【結果】卵黄に残留した卵白と卵黄膜の合計量は0.7g (0.6~1.0g, <i>n</i>=6) であった. 加熱卵黄OFCを施行した11例中9例は陰性, 1例は局所の紅斑, 1例は複数範囲の紅斑を認めた.</p><p> 【結語】加熱卵白1.0gの摂取が可能な卵アレルギー患者は, 生の状態で取り分けた加熱卵黄負荷試験で8割以上が陰性であった.</p>