著者
楳村 春江 和泉 秀彦 小田 奈穂 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.691-700, 2015
被引用文献数
1

【目的】鶏卵・牛乳アレルギーであった児の除去解除が進み,完全解除が許可された時点における食生活の実態を評価した.【方法】2013年5月~12月の外来受診時に主治医より完全解除を許可された鶏卵アレルギー16名,牛乳アレルギー1名,鶏卵+牛乳アレルギー21名を対象にアンケート調査を実施した.さらに,その中で協力の得られた21名の保護者からは,写真判定を含む3日間の食事調査を行った.【結果】家庭内,外食,買い物においては改善がみられ,保護者の負担は軽減していた.しかし,大量摂取や卵低加熱料理については,未だに症状誘発に対する恐怖感,不安感を持っていた.食事調査の結果からは,一日当たりの鶏卵,牛乳そのものの摂取は過半数の患児が鶏卵1/2個,牛乳100ml以下であり,牛乳アレルギー児は,カルシウムの摂取量が目標量を下回っていた.【結語】除去食生活の長期化による食べないことの習慣化や保護者の不安などが要因となり,多くの患児にとって「真の解除」を得ることが困難である実態が明らかとなった.
著者
林 直史 中川 朋子 松井 照明 杉浦 至郎 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.37-45, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

【目的】ピーナッツアレルギー(PA)の診断におけるAra h 2特異的IgE抗体(sIgE)検査の有用性と,PA患者における他のナッツ類アレルギー合併について検討した.【方法】2014年4月~2015年3月に,ピーナッツsIgE陽性者にAra h 2-sIgE検査を行った.ピーナッツ経口負荷試験(OFC)又は明らかな摂取歴・誘発歴からPAの有無が確定できた217人(そのうちPA群90人)に関して,臨床像を後方視的に検討した.【結果】Ara h 2-sIgE≧0.35UA/mLにおけるPA診断の感度85.6%,陽性基準である≧4.0UA/mLであれば陽性的中率93.1%,特異度96.9%であった.Ara h 2-sIgEは,OFC(n=42)における誘発閾値量や症状の重症度と有意な関連を示さなかった.PA群における他のナッツ類アレルギー合併者は9人(10.0%)であった.【結語】Ara h 2-sIgE陽性基準の妥当性が再評価された.PA患者に対しても,他のナッツアレルギーの有無を適切に鑑別診断する必要性が再確認された.
著者
松井 照明 杉浦 至郎 中川 朋子 武藤 太一朗 楳村 春江 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-71, 2017
被引用文献数
1

<p> 【背景】卵黄の経口負荷試験 (oral food challenge : OFC) は, 微量の卵白負荷試験という位置づけで実施されることが多いが, 卵黄に残留する卵白量に関する情報は限られている.</p><p> 【目的】卵黄に残留する卵白量を推定したうえで, 症状誘発閾値の低い卵アレルギー患者に対する加熱卵黄摂取の可否について検討した.</p><p> 【方法】鶏卵から卵黄を分離したうえで加熱し, 卵黄表面の卵白と卵黄膜を用手的に剝離し, 重量を測定した. 2014年6月から2015年2月に施行した加熱卵白OFC陽性者から, 加熱卵白1.0gが摂取可能と判定された11人を対象として, 加熱卵黄OFCを施行した.</p><p> 【結果】卵黄に残留した卵白と卵黄膜の合計量は0.7g (0.6~1.0g, <i>n</i>=6) であった. 加熱卵黄OFCを施行した11例中9例は陰性, 1例は局所の紅斑, 1例は複数範囲の紅斑を認めた.</p><p> 【結語】加熱卵白1.0gの摂取が可能な卵アレルギー患者は, 生の状態で取り分けた加熱卵黄負荷試験で8割以上が陰性であった.</p>
著者
尾辻 健太 二村 昌樹 漢人 直之 林 啓一 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.971-982, 2011-08-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
35
被引用文献数
2

【目的】即時型小麦アレルギーに対するω-5グリアジン特異的IgE抗体(以下,ω-5グリアジンIgE)検査の診断的価値を検討する.【方法】2008年1月〜10月に当科で小麦特異的IgE抗体(以下,小麦IgE)検査を施行した全症例でω-5グリアジンIgEを測定し,小麦経口負荷試験又は病歴に基づいた小麦アレルギーの診断との関連を検討した.解析対象者は233人(年齢中央値3.6歳),小麦アレルギー群59人,非小麦アレルギー群174人であった.【結果】小麦アレルギー群の割合は,ω-5グリアジンIgEクラス2(n=31)で68%,クラス3(n=15)で87%,クラス4以上の3人は100%であった.一方小麦アレルギー群でも陰性(<0.35U_A/ml)を示す患児が24%存在した.これらのデータを元に,ω-5グリアジンIgEのプロバビリティーカーブを作成した.【結語】ω-5グリアジンIgE抗体は,小麦アレルギーの診断に高い陽性的中率を示すが,診断感度の低さから,必ず小麦IgEと併せて評価すべきである.
著者
手塚 純一郎 本村 知華子 池井 純子 井手 康二 漢人 直之 後藤 真希子 田場 直彦 林 大輔 村上 洋子 森安 善生 スビヤント ケイジ 柴田 瑠美子 岡田 賢司 小田嶋 博 西間 三馨
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1034-1042, 2008
被引用文献数
2 1

【目的】2006年9月よりブデソニド吸入用懸濁液(パルミコート吸入液^[○!R])の販売が開始され,乳幼児でpMDI+スペーサーによる治療以外にも吸入ステロイドの選択肢が増えた.しかし,メッシュ式ネブライザーを用いた検討の報告はない.今回,ブデソニド吸入用懸濁液のメッシュ式ネブライザーでの有効性・安全性について検討した.【対象および方法】6ヵ月以上5歳未満の気管支喘息と診断された児30名を対象に,2週間の観察期間後,Pari TurboBoy^[○!R]+LC Plus nebulizer^[○!R],Pari eMotion^[○!R],Omron MicroAir NE-22U^[○!R]の3機種に10名ずつ無作為に割り付け,ブデソニド吸入用懸濁液0.25mgを1日1回朝に投与した.有効性および安全性の評価を,投与前,4週後,12週後に喘息日誌と血漿コルチゾール値・身長を用いて行った.【結果】対象3群のうち,投与前の血漿コルチゾール値は,Omron MicroAir NE-22U^[○!R]で有意に高かった.投与後の血漿コルチゾール値はOmron MicroAir NE-22U^[○!R]で4週の時点で有意に低下したが基準値を超えての低下は認めなかった.他のネブライザーでは有意な変化は認めなかった.また,投与前後の有症状日数は投与後に有意に低下していたが,ネブライザー間での有意な差を認めなかった.【結論】メッシュ式ネブライザーを用いてブデソニド吸入用懸濁液0.25mgを投与することは,有効かつ安全であることが示唆された.