著者
杉浦 郁子
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.73-90,222, 2002

Since Saitama Medical University applied to carry out a sex reassignment surgery (so called "sex change surgery") in 1995, medicalization of "gender identity disorder" is actively encouraged in Japan. There has been a corresponding increase in number of treatises on this mental disorder published by specialists. By analyzing those professional discourses, I will illustrate how a domain of "the sexual" is socially constructed.<br> The social constructionism has argued two important views: First, objects are produced in and through a series of linguistic practices of signification; second, some knowledge is cited/referred when the practices are intelligible. The question of how "the sexual" is constructed will not be limited to the work of showing the particular way of construction of "the sexual." I will also show how and what kind of knowledge is cited in the constructing process.<br> Having learned constructionism from Judith Butler, this paper keeps the interest of describing gaps and fissures that are produced in the very process of the constructing practices. Those gaps and fissures are observed as logical discontinuity, and are taken as the possibility to change the hegemonic meaning of "the sexual."<br> I hold the attention of its changeablity because I am anxious that the construct of "the sexual" by professionals becomes standard and legitimate knowledge. Examining carefully the practices, we will find cited knowledge there operates against not only other "sexual minorities" but also transsexuals themselves.
著者
杉浦 郁子 SUGIURA Ikuko
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 = The study of sociology (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.93, pp.79-92, 2014-01

この小論では、クィア・スタディーズ領域の研究活動にまつわるある倫理課題を示し、論ずる。LGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)などのセクシュアル・マイノリティを対象に行われる調査研究では、調査者もマイノリティとしてのアイデンティティを有していることが少なくない。「同じような立場の者=ピア」による調査、「調査者と協力者がともに当事者である」という関係性において行われる調査のことを、ここでは「ピア調査」と呼び、ピア調査で起こりやすい問題について具体的に検討していく。なお、本論は、日本クィア学会の会員有志によるワーキング・グループ(世話人 溝口彰子氏)の成果の一部である。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.10, pp.159-178, 2017-03

本稿は、日本のレズビアンたちによる集合的な活動が発信したテクストを分析し、その主要な言説を跡づけようとするものである。1970年代から1980年代前半までのミニコミ誌が、1960年代に一般に流通した「レズビアンには男役(タチ)と女役(ネコ)がある」という言説へどのように介入したのかを中心に記述する。なお、本稿は、近代日本形成期(1910年代から1960年代まで)の「女性同性愛」の言説史を整理した拙稿(杉浦2015)の続編に位置づけられるものであり、レズビアン解放運動がさらなる盛り上がりを見せる1985年以降の言説分析へと橋渡しされるものである。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.159-178, 2017-03-10

本稿は、日本のレズビアンたちによる集合的な活動が発信したテクストを分析し、その主要な言説を跡づけようとするものである。1970年代から1980年代前半までのミニコミ誌が、1960年代に一般に流通した「レズビアンには男役(タチ)と女役(ネコ)がある」という言説へどのように介入したのかを中心に記述する。なお、本稿は、近代日本形成期(1910年代から1960年代まで)の「女性同性愛」の言説史を整理した拙稿(杉浦2015)の続編に位置づけられるものであり、レズビアン解放運動がさらなる盛り上がりを見せる1985年以降の言説分析へと橋渡しされるものである。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-24, 2022-03-17

性的マイノリティの権利獲得運動では、「不可視であること」を解決すべき問題と見なし「存在や困難の可視化」を目標として共有してきた。そのため、運動を牽引する者らは、性的マイノリティの当事者として自己開示することで、一般社会と対話を重ねることを要請されてきた。しかし、たとえ活動のリーダーであっても、カミングアウトは簡単なことではない。本稿は、東北地方で性的マイノリティのための活動に取り組む団体主催者へのインタビューから、かれらが「可視化」の要請をどのように経験してきたのか、また「可視化」の要請にどのように取り組み、対処してきたのかを明らかにする。インタビュー協力者らの経験や実践を通して、市民活動の担い手の多様なあり方を示すとともに、可視化を強調する運動を「地方」の視点から批判的にとらえ直すことを試みる。本稿の問題意識は、「可視性の政治」を強調することが「地方」の性的マイノリティの生活や活動、可視化以外の運動手法を周縁化する効果をあわせもつ、という点にある。まさに周縁化の対象となってきた「東北」のアクティヴィストたちは、自らの「露出」を管理したり、「露出」を前提にしない手法を模索してきた。その実践の合理性と、その実践がもつ「周縁化」への抵抗の契機を考察する。
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.61-81, 2019-03-08

2015年、東京都渋谷区は、同性カップルのパートナーシップを認定する制度を開始した。本稿は、その制度を利用した人、利用を検討している人を対象としたインタビューを取りあげ、制度を媒介にした解釈過程で認識された同性カップルの法的保障ニーズを分析する。日本では、渋谷区の制度ができるまで、同性パートナーシップ制度を求める当事者の存在が見えづらく、制度に対するニーズが当事者に広く共有された結果として制度が作られた、という経過を必ずしもたどらなかった。また、先行研究は、当事者が同性カップルの法的保障ニーズを認識しづらいメカニズムがある可能性を指摘していた。本稿は、制度がない状況で認識されなかったニーズが、制度ができた後に認識されやすくなったのではないか、という問題意識のもと、制度の利用をめぐってなされた解釈過程に注目し、そこでどのようなニーズが認識されたのかを分析した。制度ができた後につき合い始めたカップルは、渋谷区の制度を長期的な関係を担保するものと理解していた。「生涯を共にするだろう」という予期は、パートナーとの関係で生じるニーズを認識させるだけでなく、様々な他者との関わりや出来事の可能性を想像させ、自分たちを取りまく環境に対するニーズも意識させていた。制度ができる前から渋谷区で同居してきたカップルは、「区に認めてもらうことによる安心の獲得」という個別的・心理的ニーズの存在を、制度の利用後に認識していた。
著者
杉浦 郁子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.148-160, 2013-10-31 (Released:2015-09-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本稿では,性別違和感のある人々の経験の多様性が顕在化したことを背景に,「性同一性障害であること」の基準として「周囲の理解」が参照されるようになった可能性を指摘する.また「性同一性障害」がそのように理解されるようになったとき,性別違和感のある子とその親にどんな経験をもたらしうるのかを考察する.まず,1980年代後半から90年代前半に生まれた若者へのインタビュー・データを用いて,「周囲の理解」という診断基準が出現したプロセスについて分析する.次いで,「性同一性障害」の治療を進めようとする20代の事例を取り上げ,医師も患者も「親の理解」を重視していることを示す.そのうえで,親との関係調整の努力を要請する「性同一性障害」という概念が,親子にどのような経験を呼び込むのかを論じる.
著者
杉浦 郁子
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-26, 2015-03-13

近代以降の日本社会は「女同士の親密な関係」「女を愛する女」に対してどのような意味を与えてきたのだろうか。「女性同性愛」言説の変容をたどる研究成果を「性欲」の視点から整理することが本論文の目的である。ここで「性欲」の視点とは、大正期に定着してから現在まで様々な仕方で構築されてきた「性欲」という領域が、女性同性愛に関する言説をどのように枠づけてきたのか、反対に、女性同性愛に関する言説が「性欲」をどのように枠づけてきたのか、という視点のことをいう。したがって、本論文が注目するのは、「性欲」が女同士の親密性をめぐる経験や理解の仕方に関わっていることを示し得ているような研究成果である。この「性欲」の視点を軸にして、「女性同性愛」言説をめぐる歴史研究の現在における到達点と今後の課題を明らかにしたい。