著者
山﨑 久道 小川 千代子 飯尾 淳 李 東真
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 = Records management : journal of the Records Management Society of Japan (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.70, pp.57-74, 2016-03

わが国の研究開発においては、STAP問題に見られるように、研究倫理のあり方と研究におけるデータや記録の適正な管理、利用が大きな問題になっている。これまで、研究ノートの「不備」や「正しい書き方」などを指摘する文献は数多くあるものの、研究における記録管理のあり方やプロセスを示し考察した文献は少ない。今回は、最新の情報技術の動向もにらみ、実際に研究を進める研究機関の立場からもこの問題をとらえ、記録管理についての知見がこの問題にどのように貢献できるのかを検討した。その結果として、以下の諸点を提言した。(1)科学の手法の変遷や研究分野の特徴に見合った情報の管理の必要性を追究する。(2)情報通信技術の進化を見据えて、データ取扱いの技術的側面と倫理的側面の検討と研究における情報取扱いのガイドラインの作成を行う。(3)研究現場での「アーカイブ」概念の意義と必要性を啓蒙する。(4)実務面での実験ノート作成・管理などの実践的手法の提唱と普及に着手する。(5)研究開発を効果的に支援できる「理系分野に強い」データ管理、記録管理の専門家の育成を目指す。(6)記録管理を実行することが研究の不正防止のみならず、効率や品質の向上に資することを証明して、そのことを社会に広く周知する。
著者
李 東真
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.385, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)

今月号の特集は,「海外学術出版社の研究支援サービスの変化」と題してお届けします。約20年の間,学術コミュニケーションは大きな変革を遂げました。近年でも,研究成果のドラスティックなオープンアクセス(以下,OA)化を求めるPlan Sの発表とcOAlition Sの発足は,学術界,出版業界に大きな衝撃を与えました。また,COVID-19パンデミックにより,研究成果(論文,研究データ,ソースコードなど)のオープン化,迅速な情報共有を目的としたプレプリントサービス,厳密かつ透明性の高い査読(ピアレビュー)などへの関心が以前にも増して高まったといえるでしょう。本特集では,学術コミュニケーションが絶え間なく発展する中で,学術出版社がそれらの動向をどのように捉え事業を展開してきたのかあるいは展開していくのか,当事者の視点からご解説いただきます。総論として,増田豊氏(ユサコ株式会社)に,国際STM出版社協会の活動から学術出版社の近年の動向をご説明いただきます。各論では,大手出版社の方々にOA,アナリティクス事業の拡大,新たな研究出版ソリューション,プレプリントサービスの動向についてご解説いただきます。Liz Ferguson氏およびBen Townsend氏(Wiley社)には,同社が新規OAジャーナルの創刊や既存ジャーナルのフルOA転換などを通じてOA出版へのニーズの高まりに対応してきたことをご紹介いただきつつ,コンソーシアムとの契約を事例に転換契約(Transformative Agreement)の仕組みやその影響力をご説明いただきます。高橋昭治氏(Elsevier社)には,同社がアナリティクス事業に注力することになったきっかけをご紹介いただいた後,研究力分析ツールを含めた同社の製品・技術面での進展,研究評価者などへの利用者の拡大,今後期待される研究支援のDX(デジタルトランスフォーメーション)への貢献の展望についてご解説いただきます。Taylor & Francis社傘下F1000 Research社のLiz Allen氏には,学術出版における最近の変化の要因とその影響,今後の動向をご考察いただいた後,研究・出版などに関わるステークホルダーの連携によって生まれる研究エコシステムおよびそのインパクトを最大化するF1000 Research社の研究出版ソリューションについてご説明いただきます。最後に,野村紀匡氏(Digital Science社)に,文献調査および動向分析によって得られたプレプリントサービスのビジネスモデル,プレプリント投稿数の推移,プレプリントサービス運営における課題などを示していただきます。読者のみなさまが,これからの学術コミュニケーションを展望するうえで,ご参考となれば幸いです。(会誌編集担当委員:李東真(主査),南雲修司,野村紀匡,光森奈美子)
著者
李 東真
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第16回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.61-65, 2019 (Released:2019-06-14)

科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency)は、科学技術情報プラットフォーム(Japan Information Platform for S&T Innovation)において、学術情報の流通に関するニュースを短くまとめたSTI Updates(学術情報流通ニュース)というニュース発信サービスを提供している。本稿では、2018年度のニュース720件を対象に、当該年度の地域、主題を分析した。その結果、対象となった地域は、ヨーロッパ、北米・中南米が全体の95%以上を占め、そのほかのアジア・オセアニア、中東・アフリカ地域のニュースはほとんど取り扱っていないことが明らかになった。また、主題に関して、テキストマイニングツールを利用して分析した結果、「①オープンアクセス」「②Plan S」「③EU著作権」「④プラットフォームの提供」「⑤JST、NBDCのイベント告知およびNISTEPの調査報告」「⑥研究データ」の6つであった。最後に、今後の課題として、ニュースの対象地域についての偏りの解消、地域の詳細な分析、主題の分析の質の向上が必要であることを示した。
著者
李 東真
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.241-246, 2013-05-25 (Released:2013-07-25)
参考文献数
15

フィルムアーカイブに限らず動的映像資料を製作, 収集, 保管する機関では, 過去の事象を記録した資料の組織化が課題となっている. 資料の活用を促すには, 文献の場合にそうであるように, 各々の組織が主体的に資料へのアクセスを改善するような仕組みを構築することが求められる. 本稿では主題アクセス, とりわけ動的映像用のシソーラスに着目し, 主に海外における取り組みについて考察し, その適用可能性を検討する.
著者
李 東真
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.29-44, 2012

動的映像は、歴史や過去の事象を生々しく伝えることのできる資料として高い価値を有する。動的映像を研究資料としてまたは、創作活動の素材として利用するためには、動的映像を収集して、利用できる形に整理する、つまり組織化する必要がある。ニュースや映画などの完成作品としての動的映像は、提供元などが提示した情報を基に目録規則に従い記述することで組織化できる。一方で、素材もしくは半製品として存在する動的映像を記録として組織化する場合、動的映像そのものから目録、メタデータに対応する情報を生成することが求められる。動的映像資料の利用者研究を考察することにより、「制作者」、「タイトル」、「主題」がアクセスポイントして有効であること、さらに「制作者」、「タイトル」が与えられない素材、未完成・未公開作品などの動的映像から生成可能な情報は「主題」であることが示された。しかし、動的映像そのものからの主題を生成する場合、イメージを語で表現する作業を伴うことから、本稿ではさらに、その際に生じる問題点を考察、分析した。その結果に基づき、問題点を1)抽出する動的映像の階層レベル、2)抽出する素性の抽象度、3)抽出された主題の表現法の3つに分類した。