- 著者
-
李 賢京
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, pp.77-99, 2010-06-16 (Released:2013-02-28)
- 参考文献数
- 50
本稿の目的は,海外における日系新宗教信者の信仰深化過程を考察することである。多くの先行研究では,日系移民社会内における日系人の信仰継承が注目されてきた。だが,本稿では,日系移民社会内ではなく,過去に日本によって植民地支配された韓国における,韓国人信者の信仰継承に焦点を当てる。 第2次世界大戦後,多くの日本の宗教教団は朝鮮半島から撤退していったが,天理教は韓国人信者たちによって存続され,現在まで受け継がれている。本稿では,天理教の「3世信者」のライフヒストリーに基づき,彼らの信仰における深化過程を明らかにした。特に本稿では,「日常」あるいは「非日常」における「教団内他者」・「教団外他者」との関わり・相互行為・相互活動が,「3世信者」の信仰に,どのような影響を与えているのかについて分析し,韓国に特徴的な日系新宗教信者の信仰深化過程を明らかにした。 韓国天理教の「3世信者」における信仰の深化過程への考察から,以下の2点の知見が得られた。⑴韓国は日本植民地経験に起因する反日感情が強く(反日感情を現しているのが日系宗教に対する「似而非宗教」「倭色宗教」という呼称である),そうした感情を持つ「教団外他者」は,「3世信者」の信仰生活の「弱化」に強く影響を与えていた。⑵「教団内他者」である同輩の信者と,親の寛容な宗教教育態度は,「3世信者」の信仰の維持および深化に影響を与えていた。