著者
李 賢京
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.59-77, 2008 (Released:2012-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

近年,韓国内ではプロテスタント人口が年々低下している状況であるが,福音主義教会は依然としてその教勢を維持し,海外宣教活動に積極的に取り組んでいる。特に,日本で成長している韓国プロテスタント教会の展開過程を通じて,韓国プロテスタント教会による宣教活動を再考することが本稿の目的である。  本稿は以下の章で成り立つ。  (1)韓国プロテスタント教会が海外宣教に目を向けることになった要因と,それを期に本格的に始まった海外宣教活動上の特徴を考える。(2)韓国に本部をもちながら日本で積極的に展開している「汝矣島(ヨイド)純福音教会(Yoido Full Gospel Church)」を中心に,韓国での特徴が日本においてもそのまま適用あるいは維持されているかを確認する。このために韓国においてのヨイド純福音教会がもつ特質について分析しつつ,日本における宣教活動の実態を把握する。(3)大都市を中心として展開している純福音教会(Japan Full Gospel Association)が,実際の伝道現場でどのように信徒の宗教的ニーズに応じているのかを,参与観察および聞き取り調査から検討する。
著者
李 賢京
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.77-99, 2010-06-16 (Released:2013-02-28)
参考文献数
50

本稿の目的は,海外における日系新宗教信者の信仰深化過程を考察することである。多くの先行研究では,日系移民社会内における日系人の信仰継承が注目されてきた。だが,本稿では,日系移民社会内ではなく,過去に日本によって植民地支配された韓国における,韓国人信者の信仰継承に焦点を当てる。 第2次世界大戦後,多くの日本の宗教教団は朝鮮半島から撤退していったが,天理教は韓国人信者たちによって存続され,現在まで受け継がれている。本稿では,天理教の「3世信者」のライフヒストリーに基づき,彼らの信仰における深化過程を明らかにした。特に本稿では,「日常」あるいは「非日常」における「教団内他者」・「教団外他者」との関わり・相互行為・相互活動が,「3世信者」の信仰に,どのような影響を与えているのかについて分析し,韓国に特徴的な日系新宗教信者の信仰深化過程を明らかにした。 韓国天理教の「3世信者」における信仰の深化過程への考察から,以下の2点の知見が得られた。⑴韓国は日本植民地経験に起因する反日感情が強く(反日感情を現しているのが日系宗教に対する「似而非宗教」「倭色宗教」という呼称である),そうした感情を持つ「教団外他者」は,「3世信者」の信仰生活の「弱化」に強く影響を与えていた。⑵「教団内他者」である同輩の信者と,親の寛容な宗教教育態度は,「3世信者」の信仰の維持および深化に影響を与えていた。
著者
李 賢京 田島 忠篤
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.3-28, 2020 (Released:2020-12-30)

本稿は、グローバル化する奄美大島の宗教と地域社会のかかわりについて、トランスナショナリズムの視点から考察することを目的とする。奄美を舞台に国際移住したカトリック信者・宗教者を手掛かりに、カトリックという宗教を軸に越境を捉え、出身地と移住過程、移住先とでトランスナショナル宗教的紐帯およびコミュニティが、どのように形成されるのかについて確認する。本稿では、具体的な事例として、奄美出身日系ブラジル人一世、日系ブラジル人二世、ブラジル帰国者のシスター、日本人女性と結婚した韓国人、中国人元留学生、ベトナム人司祭およびベトナム人たちを取り上げ、聞き取り調査および現地参与観察を通して検討した。結果として、奄美国際移住者たちは地域コミュニティを維持する人材として包摂されたため、教会を媒介とした出身国と奄美間の宗教的紐帯は見られず、トランスナショナル宗教的コミュニティとしてのディアスポラも確認できなかった。
著者
李 賢京
出版者
Hokkaido Sociological Association
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.77-99, 2010

本稿の目的は,海外における日系新宗教信者の信仰深化過程を考察することである。多くの先行研究では,日系移民社会内における日系人の信仰継承が注目されてきた。だが,本稿では,日系移民社会内ではなく,過去に日本によって植民地支配された韓国における,韓国人信者の信仰継承に焦点を当てる。<br> 第2次世界大戦後,多くの日本の宗教教団は朝鮮半島から撤退していったが,天理教は韓国人信者たちによって存続され,現在まで受け継がれている。本稿では,天理教の「3世信者」のライフヒストリーに基づき,彼らの信仰における深化過程を明らかにした。特に本稿では,「日常」あるいは「非日常」における「教団内他者」・「教団外他者」との関わり・相互行為・相互活動が,「3世信者」の信仰に,どのような影響を与えているのかについて分析し,韓国に特徴的な日系新宗教信者の信仰深化過程を明らかにした。<br> 韓国天理教の「3世信者」における信仰の深化過程への考察から,以下の2点の知見が得られた。⑴韓国は日本植民地経験に起因する反日感情が強く(反日感情を現しているのが日系宗教に対する「似而非宗教」「倭色宗教」という呼称である),そうした感情を持つ「教団外他者」は,「3世信者」の信仰生活の「弱化」に強く影響を与えていた。⑵「教団内他者」である同輩の信者と,親の寛容な宗教教育態度は,「3世信者」の信仰の維持および深化に影響を与えていた。
著者
李 賢京
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
no.15, pp.43-65, 2009-06-06

近年、韓国系教会においては、聖霊体験や現世利益を求める日本人信者たちと、「韓流」との接触を目的とする日本人たちが存在するようになり、過去に例のない教会参加者の多様性を見せている。そのため、韓国系教会では、教会への帰属意識を持つ「信者」と信者になることに抵抗感を持つ「非信者」、そして信者と非信者の間に位置する「信者周辺」というメンバーの複層化が顕在化している。このような複層化は、韓国人および韓国文化に接したい「韓流」ファンたちの強いニーズだけでなく、韓国系教会の宣教方法と韓国人信者の協力が重なり合うことによって生じている。一方で、こうした複層化の背景には、日本での「韓国」に対するイメージの変化があるのではないかと考えられる。本稿は、こうした韓国系教会におけるメンバーの複層的構成を明らかにすることで、現代日本社会における韓国系教会の宣教活動を検討するものである。