著者
村上 貴聡 立谷 泰久
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はスポーツ審判員を対象とした心理的ストレスに注目し,審判員のストレッサー並びにストレス反応を明らかにする.そして,審判員のストレスの実態とその効果的対処を理論的,実践的に検討することを通して,審判員を対象としたストレスマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことを目的に推進している.具体的には,審判員のストレスに関わる国内外の文献的研究を行い(研究1),面接調査を実施することにより審判員のストレッサー及びコーピングの実態を明らかにする(研究2).次に,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発し,その関連性を検討することにより審判員の心理的ストレスモデルを構築する(研究3).最後に,審判員に対するストレスマネジメントプログラムを考案し,その効果を検証する(研究4).2017年度は研究1及び2を実施した.調査対象者の収集においては,複数の競技団体と十分に連携して研究を実施することができた.実施にあたっては,国際審判員の資格を有するテニス審判員5名,ハンドボール審判員3名,サッカー審判員2名を対象として,「審判員のストレッサーとコーピング」について半構造化面接を行った.その結果,審判員のストレッサーとして,ジャッジへの不安,選手や観客からの抗議,時間的負担,金銭的負担,パフォーマンスの評価,対人関係などの内容が報告された.また,報告されたストレッサーに対して,どのようなストレスコーピングを活用しているかを分析した結果,認知的方略,メンタルスキル,ソーシャルサポート,回避などの内容が示された.さらに,サッカーの1級審判員52名を対象にして,メンタルヘルスの調査を行った結果,心理的ストレスや身体的ストレスは低いものの,社会的ストレスがやや高い傾向がみられた.2018年度はこの成果を踏まえ,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発する.
著者
村上 貴聡 岩崎 健一 徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.183-190, 2000-02-10

高校テニス部員6名を対象にして, 自律訓練とイメージトレーニングを用いたメンタルトレーニングを週2回, 約3カ月間実施しその効用性を検討した。結果は次のとおりである。1. 心理的競技能力はトレーニング後にすべて向上し, 忍耐力, 勝利意欲, 自己コントロール, リラックス, 集中力, 自信の尺度で1%水準の有意な変化がみられた。決断力および予測力においては10%水準の有意傾向がみられた。また, 総合得点においても顕著な向上が見られた。2. 特性不安はトレーニング後に減少した。トレーニング後にすべての因子で得点が減少し, 勝敗の認知的不安の因子で有意な変化がみられた。また, 有意差はみられなかったが, 動作緊張傾向, 競技意欲の低下, 自信喪失の各因子で不安の減少傾向がみられた。3. 競技状態不安は, トレーニング実施前の大会では試合が近づくにつれて認知的不安, 身体的緊張が高く, 自信が低い状態で出場しているが, トレーニング実施後の大会では大会当日には認知的不安, 身体的緊張が多少高まるが, 自信とともに比較的安定した状態で試合に出場していることがわかった。4. 試合中の実力発輝度では, トレーニング前の試合では自分の実力を発揮できたものが2名であったのに対し, トレーニング後の試合では実力を発揮できたものが5名に増加した。5. 内省報告から, メンタルトレーニングは試合前の睡眠や緊張感の減少, 試合中のリラクセーション, 冷静さ, 落ち着き, 集中力, そして, 試合に自信をもって出場できる心理的に良好な状態を作り出すのに有効に働いたことが推測された。