著者
村山 信雄 田村 一朗 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.157-159, 2006 (Released:2006-10-12)
参考文献数
9

5歳齢,雌のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルに,眼囲,口囲,肘,踵,肉球,陰部周囲におよぶ角化性皮疹が生じた。発症に先行して,出産と食餌変更があった。病理組織学的検査で毛漏斗部におよぶ錯角化と著しい表皮肥厚を認め,一部に浮腫がみられた。真皮乳頭では多形核球や単核球の浸潤が観察された。血液検査,甲状腺ホルモン検査,血清アレルギー検査で特記すべき異常はみられなかった。以上より亜鉛反応性皮膚症と診断した。亜鉛製剤の内服後角化の改善を認めたが痒みは持続し,前医にて単独投与では奏効しなかったプレドニゾロンの内服を併用したところ皮疹は消退した。寛解後亜鉛補充療法もステロイドも必要としなかった。自験例が本症の好発犬種ではないことから,病因として食餌による一時的な亜鉛吸収傷害が予想された。
著者
村山 信雄 高橋 尚子 樋詰 俊章
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.61-64, 2005 (Released:2006-10-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

8歳齢, 未去勢雄の雑種猫に発熱, 体表リンパ節腫脹, 多発性関節炎, 顔面と耳介の脱毛を伴う落屑性紅斑, 肉球の角化亢進を認めた。皮膚病理組織学的検査で液状変性と真皮浅層および付属器周囲の単核球浸潤がみられた。関節X線検査で手根および足根関節に骨破壊像が観察された。血液検査で好中球増加症がみられたが, FeLVとFIVは陰性, 尿検査で特記すべき異常なく, 抗核抗体検査で明らかな陽性所見は認められなかった。以上より, 全身性エリテマトーデスの不完全型が疑われた。プレドニゾロン5mg/kgBIDで治療したが改善なく, トリアムシノロン4mg/kgBIDが奏功した。
著者
山﨑 真大 加納 塁 原田 和記 村山 信雄 佐々木 崇 折戸 謙介 近藤 広孝 村井 妙 山岸 建太郎 西藤 公司 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.127-134, 2017 (Released:2017-09-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

犬の表在性膿皮症は,皮膚表面に常在するブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermedius,S. schleiferiなど)が表皮や毛包に存在,あるいは侵入して発症する。近年では薬剤耐性菌が病変部から分離される症例が増加しており,治療に苦慮することも多い。そこで,日本獣医皮膚科学会では犬の表在性膿皮症の治療ガイドラインの作成を試みた。近年,海外では複数のシステマティックレビューや,ガイドラインが報告されていることから,これらを参考にしつつ日本独自のガイドラインの作成を目指したが,エビデンスとなる論文が十分でなく,現時点では困難であることが明らかになった。この中で,現時点で有効であると考えられるいくつかの知見が得られたので治療指針として提示したい。また,現時点での問題点についても述べる。
著者
村山 信雄 榊原 一夫 永田 雅彦
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.239-241, 2006
被引用文献数
1

6歳齢,避妊雌のメイン・クーンの両耳介と外耳道に暗青色を呈した丘疹と結節を多数認め,耳道は狭窄していた。これら皮疹は幼少よりみられ,徐々に拡大した。病理組織学的検査で耳垢腺の拡張と内腔分泌物の貯留を認めた。全身症状はなく,血液検査の異常も認められなかった。以上よりFeline ceruminous cystomatosisと診断した。0.05%クロルヘキシジン液による洗浄とオフロキサシン・ケトコナゾール・トリアムシノロンアセトニド配合薬の点耳により,1年後に明らかな改善を認めた。<br>