著者
村田 久行
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-8, 2011 (Released:2011-02-04)
参考文献数
9
被引用文献数
3

緩和医療の臨床で生の無意味,無価値,空虚などの苦しみを訴える終末期がん患者のスピリチュアルペインを「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」と定義して,それを人間存在の時間性,関係性,自律性の三次元から分析した.その結果,終末期がん患者のスピリチュアルペインを,将来の喪失(時間性),他者の喪失(関係性),自律性の喪失(自律性)から生じる苦痛であると解明し,この構造解明に基づきスピリチュアルケアの指針は,死をも超えた将来の回復,他者の回復,自律の回復にあることを示した.そして,終末期がん患者のスピリチュアルペインの緩和が患者の身体的苦痛の軽減に影響を与えることを示唆した.
著者
的場 康徳 村田 久行 浅川 達人 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.321-329, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【目的】がん患者の終末期医療に携わる医師のスピリチュアルペイン(SPP)を明らかにする.【方法】医師の臨床体験レポートを記述現象学と3次元存在論で分析した.【結果】すべてのレポートで医師のSPPが抽出され,時間性,関係性,自律性に分類された.とくに医師の意識の志向性が,がん治療や症状緩和の限界や患者の訴えるSPPに対応できないことに向けられ,それが医師としての無力・無能として現れる自律性のSPPが大多数を占めた.自律性のSPPの体験の意味と本質は,[治療(キュア)の限界に直面している自己が無力として現れる][患者のSPPに対応できない自己が無力として現れる][自分を取り巻く外的な環境の問題(過重労働や教育の不備など)が原因で自己の無力が生じる]という三つの構造で示された.またキュアの限界で医師が患者に会いづらくなる,避けるという体験は医師の自律性のSPPへの対処(コーピング)の可能性が示唆された.
著者
村田 久行
出版者
東海大学
雑誌
東海大学健康科学部紀要 (ISSN:13474162)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.29-38, 1996

対人援助の実践の場において、「傾聴」はそれ自身で援助として独自の意味をもっているのではないか。このことはこの数年の傾聴ボランティアの養成と実践の経験から想定される。この研究はこのような経験的事実から傾聴の援助的意味を解明する理論的な基礎を探究しようとするものである。研究の方法として、援助者と被援助者との「自己-他者」関係を存在論的側面から明きらかにするために、「独我論を語ること」の意味の考察から「語る-聴く」場での援助者の他者に対する態度の分析を行う。そして援助者が自ら「聴く」態度をとることによって、傾聴が他者に存在を与えることを明きらかにする。さらに対人援助における傾聴の援助的意味を「他者の存在の回復と支持」にあると結論する。
著者
的場 康徳 村田 久行 浅川 達人 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.321-329, 2020

<p>【目的】がん患者の終末期医療に携わる医師のスピリチュアルペイン(SPP)を明らかにする.【方法】医師の臨床体験レポートを記述現象学と3次元存在論で分析した.【結果】すべてのレポートで医師のSPPが抽出され,時間性,関係性,自律性に分類された.とくに医師の意識の志向性が,がん治療や症状緩和の限界や患者の訴えるSPPに対応できないことに向けられ,それが医師としての無力・無能として現れる自律性のSPPが大多数を占めた.自律性のSPPの体験の意味と本質は,[治療(キュア)の限界に直面している自己が無力として現れる][患者のSPPに対応できない自己が無力として現れる][自分を取り巻く外的な環境の問題(過重労働や教育の不備など)が原因で自己の無力が生じる]という三つの構造で示された.またキュアの限界で医師が患者に会いづらくなる,避けるという体験は医師の自律性のSPPへの対処(コーピング)の可能性が示唆された.</p>
著者
的場 康徳 村田 久行 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-54, 2021 (Released:2021-02-16)
参考文献数
27

【目的】スピリチュアルケア(SPC)の実践力の習得を目的とした研修の医師での効果を測る.【方法】自記式質問法により,教育介入前,直後,3カ月後,6カ月後に測定.【結果】医師30名が研修を修了.すべての主要評価項目が有意に改善し,その効果は介入6カ月間持続(すべてP=0.0001).スピリチュアルペイン(SPP)を訴える患者とのコミュニケーションの自信が高まり(6カ月後の効果量(Effect Size=1.3),SPCの実践の自己評価が高まり(ES=1.2),SPPを訴えられたときの無力感が軽減し(ES=0.8),SPCの経験を肯定的に捉えるようになり(ES=0.8),SPPを訴える患者にすすんで関わりたいと思うようになった(ES=0.4).96〜100%の医師が,SPCの概念理解と実際にSPCの方法を知ることについて本研修が「とても役に立った」または「役に立った」と評価した.
著者
村田 久行
出版者
東海大学
雑誌
東海大学健康科学部紀要 (ISSN:13474162)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.109-114, 2000
被引用文献数
3

対人援助においてなぜ他者の理解が必要なのか、それはどのような援助的意味を持つのか。あるいは、他者の理解とは何をどうすることなのか。それは具体的な援助技術としてどのように可能なのか。また、その技術を身につけるには、どのような教育と訓練を必要とするのか。これらの根本的な問いに答えるために、この研究では現象学的なアプローチで援助者とクライエントの関係性を研究し、対人援助における専門的な援助関係の中での「他者の理解」の意味と特性を解明することを試みた。結論として、対人援助における他者の理解は、援助者とクライエントとの専門的な援助関係の相互作用、循環性、固有性に基づき、援助者とクライエントの相互理解の状態を実現することから、クライエントに最適の援助を構成するために、そして理解されると人は生きる意欲を回復するゆえに重要であることが明らかにされた。