著者
広瀬 弥奈 村田 幸枝 福田 敦史 村井 雄司 大岡 令 八幡 祥子 水谷 博幸 五十嵐 清治
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.301-309, 2011-07-30

本学近隣の小児や保護者にフッ化物によるう蝕予防法をこれまで以上に普及させるためには今後どのような対策を講じていけば良いかを明らかにする目的で,北海道石狩郡新篠津村立小・中学校の保護者を対象にう蝕予防に関する意識調査を行った.その結果,う蝕予防で最も重要(問4)なのは「歯磨き」と回答した保護者が94.6%と最も多く,「フッ素」と回答した保護者は皆無であった.フッ化物によるう蝕予防は効果が高い(問13)と答えた保護者は62.8%で最も多かった.フッ化物配合歯磨剤の認知度(問15)は91.6%とかなり多かったが,フッ化物洗口法を知っていると答えた保護者は36.6%と少なく(問14),水道水フッ化物添加法においては18.5%とかなり少なかった(問20).一方,フッ化物配合歯磨剤の使用率は高かったものの,フッ化物配合歯磨剤を使用しないブラッシングにも予防効果があると答えた保護者が半数以上認められた.また,フッ化物に不安を抱いている保護者はフッ化物の応用に消極的であった.以上のことから,保護者のフッ化物によるう蝕予防に関する正確な知識が乏しいことが明らかとなった.今後,フッ化物の効果と安全性,応用法などに関する正しい知識を普及させるための啓発活動の必要性が認められた.
著者
村田 幸枝 松田 康裕 田中 享 小松 久憲 佐野 英彦
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.799-807, 2007-12-31
参考文献数
25
被引用文献数
2

再石灰化効果をもつ数種類のガムが,特定保健用食品として認められている.本研究の目的は,特定保健用食品の指定を受けているガム3種(添加物としてFN-CP:フノリ抽出物と第二リン酸カルシウム,POs-Ca:リン酸化オリゴ糖カルシウムおよびCPP-ACP:カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム複合体を配合)の再石灰化パターンを比較検討することである.ヒト健全第三大臼歯のエナメル質を0.01mol/l酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0)で50℃,2日間脱灰し,実験的に初期齲蝕を作製した.この脱灰エナメル質試料を,ガム群は再石灰化溶液を用いた各ガムの抽出液に,コントロール群は再石灰化溶液のみに,37℃,2週間浸漬し再石灰化処理を行った.再石灰化処理を行った試料から作製された研磨試料をTMR(transverse microradiography)撮影し,ミネラルプロファイルを作成した.その後,新たに開発されたプログラムを用いて9項目のパラメーターを算出し,再石灰化の促進効果について比較検討した.3種類のガムでΔΔZが有意に増加していたことから,すべてのガムで再石灰化を促進させる効果があることが認められた.FN-CPはΔLd,ΔLBd,ΔLB,ΔSZ,ΔOSZ,ΔSA,ΔILB,ΔΔZの8つのパラメーターで有意差を認め,初期齲蝕病変の深層を主体として病変全体の再石灰化を促進することが認められた.POs-CaではΔLB,ΔILB,ΔΔZの3つのパラメーターで有意差を認め,深層での再石灰化を促進することが認められた.CPP-ACPではΔLB,ΔSZ,ΔSA,ΔILB,ΔΔZの5つのパラメーターで有意差を認め,中間層と深層の再石灰化を促進することが認められた.以上のことからすべてのガムで再石灰化を促進する効果があるが,その再石灰化パターンには違いがあることが明らかとなった.さらに,FN-CPが初期齲蝕の再石灰化に最も有用であることが示唆された.