- 著者
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村田 昌彦
伏見 克彦
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.1, pp.1-20, 1996-02-25
- 被引用文献数
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ENSOイベント(1991年, 春-1992年, 夏)が発生した1990年から1993年の期間に, 気象庁が実施した, 北西太平洋域での大気中および海洋中CO_2の観測の結果について報告する. 大気中CO_2濃度は, 北緯30度以南で1990年から1991年にかけて, 季節的に調整されていない値であるが, 冬(4.0ppmv)と夏(4.5ppmv)に非常に大きく増加した. 他の観測期間中の2年間では, 小さいかまたはときどき負の増加率となった. 一方, 海洋中CO_2は, 海水と平衡に達した乾燥空気中のモル分率でみると, 1990年の値と比較して, 1991年から1993年の冬と夏に, 特に低緯度において有意な増加を示した. 一定の温度に規格化した海洋中CO_2も有意な増加を示し, 冬により大きく, 夏により小さい増加となった. これは, 夏の海洋中CO_2の増加はもっばら表面の海水の温度変化からきているが, 冬の場合は, 現段階では不明の他の要因がより大きく関連していることを意味する. ΔpCO_2と大気一海洋間のCO_2フラックスの計算値は, 冬に北緯10度以北の領域が, 最大で正味一10.0m-mol・m^<-2>・d^<-1>程度の吸収域となることを示す. しかし, 北緯10度以南の領域は, しばしば最大で正味2.4m-mol・m^<-2>・d^<-1>の弱いCO_2の発生域となる. 夏の北西太平洋は弱い発生域, または大気中CO_2に対してほとんど平衡となる. 1991/92 ENSOイベントに関連づけられる冬の海洋中CO_2の増加は, 表面の海水の温度の低下と塩分の増加という状況は共通しているが, 1982/83 ENSOイベントの場合ほど顕著ではない. 1991/92 ENSOイベントに対する西部熱帯太平洋域のCO_2フラックスの反応は, 中部または東部熱帯太平洋域で従来の結果から得られた変化の大きさと比較すると, かなり小さい.