著者
園山 繁樹 下山 真衣 濱口 佳和 松下 浩之 江口 めぐみ 酒井 貴庸 関口 雄一 奥村 真衣子 趙 成河
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究1「幼・小・中学校への質問紙調査」を平成28年度に実施し、結果の概要を平成29年9月開催の日本特殊教育学会第55回大会において発表した。結果の詳細については学術雑誌に投稿中である。選択性緘黙児の在籍率と学校での困難状況を明らかにした。研究2「選択性緘黙児童生徒の事例研究」を平成28年度に引き続き、研究代表者と研究分担者が教育相談室において実施し、2つの事例研究(中学1年、及び幼稚園年少)が「筑波大学発達臨床心理学研究」第29巻に掲載された。他の1事例研究(小学1年)については、日本特殊教育学会第55回大会において発表した。3事例とも刺激フェイディング法を中核としつつ、各事例の状態に応じて支援方法を工夫することで、一定の効果がもたらされた。研究3「選択性緘黙経験者に対する質問紙調査・面接調査」を実施し、データを収集し、現在分析中である。また関係する調査研究の結果をまとめ、「障害科学研究」第42巻に掲載された。研究4「先進的実践・研究の実地調査のまとめ」については、平成28年度に実施したカナダ・McMaster大学への訪問調査の結果をまとめ、「山梨障害児教育学研究紀要」第12号に掲載された。年長者に対する認知行動療法による支援、並びに、広範な地域における専門的支援の在り方をまとめた。その他、有病率に関する内外の先行研究をレビューし、「障害科学研究」第42巻に掲載された。先行研究における有病率は0.02~1.89%の範囲にあった。また、大学生における選択性緘黙への認識に関する調査を行い、「立正大学臨床心理学研究」第16巻に掲載された。
著者
松下 浩之
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.47-57, 2018-05-31 (Released:2019-12-04)
参考文献数
38
被引用文献数
1

近年、障害のある人の好みを客観的に評価し、支援計画に活用することの重要性が指摘されている。そのための方法論として、応用行動分析学にもとづいた研究が海外では多くされている一方で、わが国においては、支援実践としての報告も多くない。本研究では、好みのアセスメントに関する海外の先行研究を概観して方法論の整理を行うとともに、直近5年間にわが国で発表された実践研究61編について、本人の好みの活用を観点として分析し、わが国における好みを活用した支援のあり方について検討を行った。その結果、好みを支援に活用している論文は半数以下であり、好みについて明確に記述した論文が少ないことが明らかとなった。その要因については、方法論自体の問題とともに、実践現場での知識不足や認知度の低さなどが考えられた。今後は支援手続きを工夫することで好みを活用していくことと、支援の場で活用できる簡易的なアセスメントの開発が、課題として検討された。
著者
松下 浩之 園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.495-508, 2010-03-31

In the present case study, ball-throwing skills were taught to a boy with Asperger's disorder, and secondary benefits for him from that experience were examined. The teaching program was based on applied behavior analysis. After a task analysis that divided overhand ball-throwing behavior into 10 behavior units, training utilized visual stimulus prompts and a chaining procedure, in a changing criterion design. The results showed that, although it took some time to achieve, all the behavior items were learned, so that the boy acquired skills necessary for ball throwing. The present study confirms the effectiveness of prompts using picture cards and behavioral coaching. It was difficult to maintain the boy's motivation for the prolonged training, although verbal interaction may be effective to increase motivation. Secondary effects observed included increased social interaction and a more proactive attitude towards exercise, behaviors that were not goals of the teaching program. Such effects may indicate potential benefits of the acquisition of sports skills as one component of leisure activities of children with developmental disorders.
著者
松下 浩之 福本 稜佑
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.149-162, 2022-03-31 (Released:2022-10-01)
参考文献数
23

余暇の過ごし方を充実させることは、障害のある人の生活の質を向上させるために必要な支援の一つである。知的障害のある子どもの余暇活動についての調査研究はこれまでにいくつかなされているが、その多くは休日や長期休業中の余暇に注目している。本研究では、学齢児童の平日の放課後の過ごし方について、支援資源や保護者のニーズなどについて調査した。そこで、知的障害の有無や学年という点から実施している活動を比較することで、知的障害のある子どもの好みの活動傾向を把握し、活動レパートリーを拡大するための支援の要点を整理することを目的とした。その結果、知的障害の有無にかかわらず、子どもたちは一人で、あるいは家族と自宅内で過ごすことが多かったが、知的障害のある子どもは特に活動レパートリーが乏しく、その多くがテレビや動画鑑賞などの受動的な活動であった。今後は、家族以外の資源を活用した放課後支援が必要であること、豊富な余暇活動機会の保障と、余暇活動を指導する場の設定が重要であると考えられた。