- 著者
-
松原 久裕
- 出版者
- 千葉医学会
- 雑誌
- 千葉医学雑誌 = Chiba medical journal (ISSN:03035476)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.4, pp.261-270, 1990-08-01
HTLV-1とSV40のプロモーターを用いた発現型cDNAライブラリーとモノクローナル抗体を用いて細胞表面抗原遺伝子のcDNAクローン化の条件を種々検討した。COS7細胞への遺伝子導入の効率をプロトプラスト融合法とDEAE-デキストラン法においてFACSを用いて比較検討した結果,DEAE-デキストラン法において導入効率が数倍高かった。また,DEAE-デキストラン法において導入DNA量と形質発現に至るまでの時間の検討をFACSを用いて行った結果,10μgのDNAを用いて遺伝子導入を行い48時間後が最も形質発現の効率が高かった。さらに目的とする遺伝子クローンを選別するための遺伝子導入-パニング-Hirt法による遺伝子回収という方法におけるenrichmentの効率をヒトIL-2レセプターcDNA,抗ヒトIL-2レセプター抗体を用いてコロニーハイブリダイゼーション法により解析した。この結果,目的とするcDNAが1/10^4以上含まれていれば1回の操作で約30倍に濃縮され,本法が表面抗原をコードする遺伝子のクローニングに有用であることを示した。次にB16マウスメラノーマ細胞より作製したcDNAライブラリーを用い,マウスメラノーマ抗原遺伝子のcDNAクローニングに成功した。また,種々の細胞,臓器におけるこの遺伝子の発現様式をノザンブロット法により解析したところ,マウスメラノーマ細胞に遺伝子発現を認めたが正常組織には検出できなかった。