著者
首藤 潔彦 山崎 将人 幸田 圭史 河野 世章 阿久津 泰典 松原 久裕
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.3028-3033, 2013 (Released:2014-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

症例1は74歳,男性.食道癌Mt,cT1bN0M0,Stage Iの診断で,開胸食道亜全摘・後縦隔胃管再建・高位胸腔内吻合術を施行.術後右肺尖部から大網内に大きく広がる膿瘍腔が認められ縫合不全と診断された.症例2は54歳,男性.食道癌食道癌LtAe,cT3N1M0,Stage IIIの診断で,術前FP化学療法のち胸腔鏡補助下食道亜全摘・後縦隔胃管再建・高位胸腔内吻合術を施行.術後左房背側の大動脈周囲に大きく広がる膿瘍腔が認められ縫合不全と診断された.両症例に対し経鼻経食道的縦隔ドレナージ(NEED)を施行した.胃管減圧を併用しつつ経腸栄養管理に移行することで膿瘍腔は縮小し経口摂取可能で退院となった.経腸栄養を併施したNEED治療によりmajor leakageを発症した場合でも低侵襲的に完全治癒可能であることが示され本治療法は有用な選択肢と考えられた.
著者
樋口 亮太 土屋 博紀 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 小杉 千弘 平野 敦史 植村 修一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.647-653, 2010
被引用文献数
2

近年,画像診断の進歩により膵腫瘍が偶然に発見される機会が増加している.今回,我々は術前診断しえたものの嚢胞成分の悪性を否定できず縮小手術を行った膵内副脾の1例を経験したので報告する.症例は55歳の女性で,急性虫垂炎のため行った腹部CTで膵尾部に径約3 cm大のcysticな領域を伴う充実性腫瘤を認めた.EUSで腫瘤の充実性領域は脾臓と同程度のエコー像を呈し膵内副脾を疑った.腫瘤はSPIO MRIで脾と同様の信号低下を,99mTc-スズコロイドシンチグラフィーで集積増加を示した.膵内副脾と診断したが,cysticな成分もあり悪性が完全に否定できないことを説明したところ,外科治療を希望され手術となった.膵尾部背側に3 cm大の軟らかい赤褐色腫瘍を認め,脾温存膵尾部切除術を行い術中ゲフリールにて膵内副脾を確認した.経過は良好で術後16日目に退院した.術前診断しえた膵内副脾の報告は少なく貴重な症例と思われ若干の文献学的考察を加え報告する.
著者
幸田 圭史 高橋 一昭 更科 広実 斉藤 典男 新井 竜夫 布村 正夫 谷山 新次 鈴木 秀 奥井 勝二 古山 信明 樋口 道雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1466-1470, 1985

非ポリポーシス性遺伝性大腸癌の一型として分類されているcancer family syndromeは, Lynch (1973)らによりその診断基準が示されたが未だ明確なものではない.今回cancer family syndromeを疑わせる異時性3重複癌の症例を経験した.症例は60歳の女性で, 40歳時にS状結腸癌,直腸癌に罹患. 57歳時に子宮内膜癌に罹患.今回(60歳)は胆嚢癌,横行結腸癌と診断され昭和59年7月開腹術を行ったが多数の腹腔内播種を認め根治術を施行し得ず閉腹した.その組織型は全て腺癌であった.また本症例の三男は20歳時に大腺癌の為死亡し,母親は胃癌の為53歳時に死亡している.本症例の大腸癌はポリポーシスの形をとっておらず,子宮癌は子宮体部に発生したものであった.これらは, Lynchらの述べているcancer family syndromeの特徴の大部分を満たしているが,広い家族歴を調査できなかった為,常染色体優性遺伝のことは証明できず確定診断にはいたらなかった.家族に対する癌の二次的予防の意味においてcancer family syndromeを診断することは意義があり,今後明確な診断基準の作成が必要と考えられた.また,診断基準の作成の為に免疫学的研究の導入が必須と思われた.
著者
小杉 千弘 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 樋口 亮太 平野 敦史 植村 修一郎 土屋 博紀
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.632-639, 2009-06-01
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

鼠径ヘルニア根治手術は若い外科医が基本手技を鍛錬する場であり,外科手術の入門編として位置していた.現在,初期研修医制度が実施され,外科系診療科志望でない研修医も外科をローテーションするカリキュラムが組まれている.今回,我々は鼠径ヘルニア根治術を初期研修医に執刀させる是非を検討する.方法:2005年4月から2007年12月に根治手術を施行した139例を対象とした.134例にmesh plug法が,5例にPROLENE hernia system法が行われた.初期研修医執刀例は72例(R群),外科医執刀例は67例(S群)だった.R群とS群において,患者背景,術中,術後因子を検討した.結果:患者背景においてR群とS群で有意差はなかった.術中因子として手術時間においてR群:S群に有意差を認めた(88.0分:64.2分,p<0.001).術後因子は,入院期間(3.8±2.1日:4.9±8.3日,p=0.14),合併症(9.8%:6.6%,p=0.64)に統計学的に有意差はなかったが,再発はR群7例(9.7%),S群1例(1.5%)で有意にR群において高かった(p=0.04).考察:入院期間,合併症には有意差はなく,再発率は初期研修医術者が外科医と比較し有意に高かったが,助手として外科専門医が指導することで,再発率が抑えられる.よって,現在の研修医制度において外科系研修カリキュラムの手術執刀についての指導指診作成が望まれる.
著者
斎藤 典男 更科 広実 布村 正夫 幸田 圭史 滝口 伸浩 佐野 隆久 竹中 修 早田 浩明 寺戸 孝之 尾崎 和義 近藤 英介 知久 毅 若月 一雄 鈴木 弘文 安富 淳 小林 信義 菅谷 芳樹 吉村 光太郎 石川 文彦 中島 伸之
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.381-388, 1995 (Released:2009-06-05)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

初発および再発直腸癌に対する骨盤内臓器全摘術(TPE)の適応と予後について検討した.対象は最近の13年間に施工した初発TPE22例と局所再発TPE14例の計36例である,36例中15例(初発6,再発9)に術前照射(30~40Gy)を行った.再発TPEでは初発例に比べ手術侵襲(手術時間,出血量)が大きく術後合併症の頻度も高く,術前照射群で同様の傾向を示した.5年生存率は初発TPE例で55.2%を示し,n0~n1群は良好であった.再発TPEの5年生存率は48.6%であるが,無再発5年生存率は31.1%と低値を示した.再発TPEでの長期生存例は,術前照射群に認められた.再発および再々発型式は,血行性転移が主であった.初発例のTPEは安全であり,遠隔転移の有無に関係なく局所制御の意味で従来の適応を拡大してよいと考えられた.再発例に対するTPEでは,厳重な症例選択により,生命予後の延長と良好なQOLの得られる症例も認められた.