- 著者
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宮脇 律郎
松原 聰
横山 一己
- 出版者
- Japan Association of Mineralogical Sciences
- 雑誌
- 日本鉱物学会年会講演要旨集
- 巻号頁・発行日
- pp.137, 2003 (Released:2004-07-26)
福島県川俣町水晶山から発見されたイットリウムタンタル酸塩鉱物は、既知の類縁鉱物Formanite-(Y)のようにメタミクト化することなく、明瞭な粉末X線回折を示す(堀・小林,2000)。今回、この鉱物について、EPMAによる定量分析と単結晶X線回折強度データを用いた結晶構造解析を行った。
Y,Ln(ランタニド),TaおよびNdに加えて、本研究では少量のTi、Th、U およびCaが検出された。後方散乱電子像では、試料は均一ではなくラメラ状の組織が観察された。微少部位についてガンドルフィーカメラや四軸自動回折計によりX線回折実験を行ったところ、ウラン含有量の多い部位はX線の回折を与えず、本試料が部分的にメタミクト化されていることが判った。ウラン含有量が少ない結晶質部位の定量分析結果から以下の実験式が得られた:(Y0.78Yb0.06Dy0.04Er0.04Gd0.02Lu0.01Ho0.01Sm0.01Ca0.01Tm0.01Tb0.01U0.01)Σ1.01(Ta0.58Nb0.39Ti0.02)Σ0.99O4。本鉱物は単斜晶系で空間群はP2/aである。最小二乗法で精密化した格子定数は、a = 5.292(2), b = 5.452(2), c = 5.1149(18) Å, β = 95.89(3)°, Z = 2、である。この空間群と格子定数は、合成YTaO4 (Wolten, 1967)と良く一致し、正方晶系のFormanite-(Y)とは一致しない。構造解析は、R1 =0.0340に収れんし、以下の結果が得られた:
席,x y z Ueq;Y 0.2500 0.76342(17) 0.0000 0.0076(2); Ta 0.2500 0.30254(11) 0.5000 0.0088(2); O1 0.4922(10) 0.4360(12) 0.2669(10) 0.0096(11); O2 0.0975(11) 0.0868(11) 0.2514(11) 0.0111(11)。
この解析結果は基本的に合成YTaO4と同じである。ニオブに部分置換されたタンタルの配位は四面体4配位とみなすことができる。一方、希土類元素は酸素により8配位されている。本鉱物の解析結果から計算した平均原子間距離はTa-Oが1.916、Y-Oが2.368 Åで、合成YTaO4と比較するとTaO4四面体に明らかな収縮が見られる。本鉱物は単純にFergusonite-(Y)やFergusonite-β-(Y)のTa置換体とは位置づけず、これまで知られているどの鉱物種にも該当しない。
堀・小林(2000)日本鉱物学会2000年度年会講演要旨集,P08.
Wolten, G. M. (1967) Acta Crystallogr., 23, 939