著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.57-58, 2021 (Released:2021-05-26)

日本新産鉱物情報(2019年)以降,2020年12月末までに確認された日本産新鉱物および新産鉱物,その他について紹介する.太字は少なくとも化学的,結晶学的性質が明らかにされたもので,信頼度が高い.

8 0 0 0 OA 沸石の種類

著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.261-267, 2002 (Released:2008-05-08)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

According to the recommended nomenclature for zeolite minerals by the subcommittee on zeolites of the Commission on new minerals and mineral names of IMA (1997), 83 species have been defined. After the recommended report, three new zeolites have been approved in the Commission up to the date. Though gmelinite-K was recorded in the zeolite report of 1997, it was formally approved in 1999. Here, all 85 spicies are summerized and the 41 species among them found in Japan are briefly reviewed.
著者
田中 崇裕 長原 正人 高橋 春雄 橋本 成弘 山田 隆 宮脇 律郎 門馬 綱一 重岡 昌子 徳本 明子 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2015年年会
巻号頁・発行日
pp.40, 2015 (Released:2020-01-15)

鹿児島県薩摩川内市入来地区に露出するカオリンを主とする変質粘土帯に存在する熱水石英脈中に、我が国初産のスカンジウムリン酸塩鉱物であるコルベック石とプレツール石と考えられる鉱物が確認された。これらの鉱物について、化学組成、産状、成因などについて報告する。
著者
松原 聰
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.147-161, 2022-04-25 (Released:2022-05-13)
参考文献数
28
被引用文献数
2

I here outline to the definition of a mineral, solid solutions in mineral nomenclature, rules of naming of minerals, and procedure for establishing of a new mineral by the Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification, the International Mineralogical Association. Also discussed are the implications of new minerals and minerals found first in Japan. Detailed accounts are given of new minerals from Japan.
著者
石橋 隆 宮脇 律郎 重岡 昌子 松原 聰 萩原 昭人
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
巻号頁・発行日
pp.151, 2011 (Released:2012-03-28)

岐阜県中津川市下野に位置する福岡鉱山の,花崗岩質ペグマタイトに伴う石英脈中より,ユークレース石(Euclase)の産出を確認した.本邦からの産出報告は初である.福岡鉱山産の本鉱物は,脈状ペグマタイトまたはそれに伴う石英脈中の白色粘土に充填された5cm~10cm程度の晶洞より,ごく少量産した.晶洞内壁の石英の結晶面上に,0.3mm以下のa軸方向に伸長した微細な短柱状自形結晶が,多数晶出している.ガンドルフィーカメラを用いたX線粉末回折実験で得られた回折値から単斜晶系(空間群P21/c)の格子定数を求めると, a = 4.7758(15), b = 14.328(4), c = 4.6324(13) Å, β = 100.31(2)°, V = 311.87(16) Å3となる.主なX線粉末回折値[d in Å (I) hkl]は, 7.16(100)020, 3.85(45)021, 3.23(67)–121, 2.78(68)121, 2.55(48) –141, 2.45(52)150である.EPMAでSiとAlの定量分析を行い,BeはSiと化学当量に,Hは100wt%からの差分で算出し, Be1.00Al0.99(Si1.00O4)(OH)0.93の実験式が得られた.
著者
西久保 勝己 松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.205, 2007 (Released:2008-09-02)

東京都奥多摩町の白丸鉱山より、新たにベニト石Benitoiteを見出した。ベニト石は、曹長石、マースチュー石、ガノフィル石-多摩石系鉱物、方解石などと密な集合をなす。紫外線短波で明るい青白色の蛍光を発する。
著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
pp.231004, (Released:2023-10-20)

日本新産鉱物情報(2021年)以降,2022年12月末までに確認された日本産新鉱物および新産鉱物,その他について紹介する.太字は少なくとも化学的,結晶学的性質が明らかにされたもので,信頼度が高い.
著者
松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己 清水 正明 今井 裕之
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2003 (Released:2004-07-26)

東京都奥多摩町にあった白丸鉱山跡は,マンガン鉱物を含む露頭の一部が残存している.この露頭からは,過去にもいろいろな種類の鉱物,特にバリウムやストロンチウムを主成分とするケイ酸塩,炭酸塩鉱物が産出した.また,ガノフィル石のカルシウム置換体,多摩石(Matsubara et al., 2000)は前回の放流の際(1998年)に発見された.露頭は,黒色のブラウン鉱が縞状ないしパッチ状に入った全体的には赤褐色の壁で,周囲は砂岩である.通常このようなマンガン鉱体は石英に富む母岩(チャート)に伴われるが,現在見られる部分には,石英は存在しない.ケイ質放散虫もすべて曹長石化している.今回は,ブラウン鉱がパッチ状に入った部分を重点的に調査した.このような部分にも白色~淡黄褐色脈が無数に貫いている.白色脈は主に,ハイアロフェン,曹長石,方解石からできている.その他には,重晶石もふつうに見られる.やや少ないが,重土長石の場合もあり,稀にはストロンチアン石やキュムリ石の微細結晶集合も含まれる.淡黄褐色脈は,マースチュー石,多摩石,ネオトス石などからできている.やや濃い赤色の細脈や小さなパッチ状の部分はストロンチウム紅簾石である.ブラウン鉱は,ひじょうに細かい結晶の集合体で,結晶粒間には,ハイアロフェン,曹長石,マースチュー石,多摩石,ネオトス石などの極めて微細な鉱物が埋めている.薄片で観察すると,ブラウン鉱密集部の小さな空間を,屈折率が高く,多色性の明瞭な濃赤褐色の粒が満たしていることがわかる.これは,似たような色のストロンチウム紅簾石や赤鉄鉱とは明らかに異なる.薄片から一部を切り出し,ガンドルフィーカメラによってX線粉末回折値をとったところ,既知のガマガラ石(gamagarite)によく類似したパターンであることがわかった.そこで,EDSおよびWDSで化学分析をおこない,その結果からガマガラ石のFeをMnで置換したものに相当することが明らかになった.ガマガラ石は,南アフリカのGamagara Ridgeから1943年に記載されたひじょうに稀な鉱物で,理想化学組成式はBa2 (Fe3+,Mn3+)(VO4)2 (OH),単斜晶系の鉱物である.1987年にイタリアのMolinello mineから二番目の産地が発見されている.いずれもマンガン鉱床から発見されているのだが,MnよりFeの方が卓越している.白丸鉱山産のものは,実験式が(Ba1.92Na0.02Sr0.01Ca0.01)Σ1.96(Mn3+0.81Fe3+0.17Al0.01)Σ0.99[(V1.99Si0.01)O7.92](OH) 1.00(6ヶ所の平均値,水分は計算,V + Si = 2)で,明らかにMnが卓越している.格子定数は,a = 9.10(4) Å, b = 6.13(2) Å, c = 7.89(5) Å, β = 112.2(5)℃である.なお,今のところ見つかっている結晶粒は最大でも15μmであるので,単結晶解析は行っていない.このような組成のものは未知である.
著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.35-37, 2020 (Released:2020-05-02)

日本新産鉱物情報(2018年)以降,2019年12月末までに確認された日本産新鉱物および新産鉱物,その他について紹介する.太字は少なくとも化学的,結晶学的性質が明らかにされたもので,信頼度が高い.
著者
宮脇 律朗 松原 聰 橋本 悦雄
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series C, Geology & paleontology (ISSN:0385244X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.27-33, 1997-06

Elyite from the Mizuhiki mine, Fukushima Prefecture, is found as fibrous crystal groups in tiny vugs of limonitic ore coposed of supergene galena and chalcopyrite. This is the first occurrence of this mineral in Japan. The averaged chemical analysis by EPMA gave PBO 80.49 CuO 6.71,SO_3 7.70,H_2O (by difference) 5.10wt%, yielding the empirical formula Pb_<3.99>Cu_<0.94> (SO_4)_<1.07> [O_<0.73>(OH)_<6.28>]_<7.01> on the basis of total cations=6 in anhydrous part. The X-ray single crystal study indicated elyite to be monoclinic P2_1/c with a=14.244(1), b=11.536(1), c=14.656(1)A, β=100.45(1)°.
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2010年年会
巻号頁・発行日
pp.74, 2010 (Released:2011-04-06)

新潟県糸魚川産のヒスイ輝石岩の研究の過程で,上記とは異なる産状のストロンチアン石が発見されたので報告する. ストロチアン石を含む岩石は青海川で転石として発見された.肉眼的には白色緻密半透明で,当初は細粒のヒスイ輝石岩と思われたが,ほとんどソーダ珪灰石からなる岩石であった.偏光顕微鏡と走査型電子顕微鏡では,ストロチアン石は最大長0.5mmの半自形~自形の長柱状~針状結晶の集合体で,集合体の形は不規則であり,母岩中に偏在している.結晶の伸長方向も一定ではなく,母岩の塊状のソーダ珪灰石に見られる脈の方向とも一致しない.また, ストロンチアン石は晶洞中や脈として産することが多いが,糸魚川産ストロンチアン石はそのいずれでもない. 試料が微細であるためガンドルフィカメラを用いてX線粉末回折データを得たところ,ストロンチアン石によく一致した. EDSによる化学分析の結果を,カチオン数が1となるように計算して得られた実験式は(Sr86.3 Ca13.4 Ba0.3)CO3となり,皆川(1995)の報告したものに近い組成を持つ.なお,母岩の大半を構成するソーダ珪灰石からはストロンチウムは検出されなかった. 糸魚川地方では,ヒスイ輝石岩,曹長岩,ロディン岩,コランダム岩などから多種多様なストロンチウム鉱物が発見されているが,ストロンチアン石のように一般に低圧で生成すると考えられているストロンチウム鉱物が発見されたのは初めてである.
著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
pp.220217, (Released:2022-03-08)

日本新産鉱物情報(2020年)以降,2021年12月末までに確認された日本産新鉱物および新産鉱物,その他について紹介する.太字は少なくとも化学的,結晶学的性質が明らかにされたもので,信頼度が高い.
著者
松原 聰 加藤 昭
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.517-524, 1993-11-05 (Released:2008-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

愛知県新城市中宇利鉱山の旧坑からgaspeite, glaukosphaerite, mcguinessiteおよびjamboriteを発見した。 Jamboriteは鉱山付近の瓶割峠の採石場からも発見された。GaspeiteはCo/(Ni+Co)=0.28-0.31, glaukosphaeriteはNi/(Ni十Cu)=0.42~0.49, CoO 5% (重量)程度まで含む。これらの種では含Co変種は最初の発見である。Mcguinessite中ではMg/(Cu+Mg)=0.61~0.65で原記載より高い値を示す。瓶割峠産のJamboriteはFe/(Fe+Ni)=0.29~0.32で,化学組成変化をFeに富む側に拡げている。これらはすべて蛇紋岩を切る割目に着生する皮膜をなし,成因的に循環地表水と関係がある。これらの中の金属元素はその起源を皮膜下の含Ni蛇紋石, heazlewoodite, cobaltpentlanditeおよびdjurleiteによっているように見える。これらの炭酸塩中でのNi2+に対するCo2+の置換関係はこのような固溶体が容易に生成される旧坑内の条件下での地球化学的挙動の類似性を暗示している。
著者
宮島 宏 松原 聰 宮脇 律郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.201, 2007 (Released:2008-09-02)

新潟県糸魚川地方の海岸や姫川・小滝川河床から、粗粒なcorundumが転石として発見される(宮島ら, 1999 二鉱学会演旨)。今回、小滝川と青海海岸産のcorundumを含む試料から稀産雲母とSrを含む特異な組成を持つ雲母が発見されたので報告する。 ◆プライスワーク雲母 (Preiswerkite) PreiswerkiteはKeusen and Peters (1980)によりスイスの超苦鉄質複合岩体のrodingiteから発見され、 NaMg2Al[Al2Si2O10](OH)2という組成を持つ。産出例は比較的少なく、本邦では本報告が初産となる。本報告のpreiswerkiteは、糸魚川市小滝川で織田宗男氏が採集した礫に含まれていた。礫には径5~15mmの丸みを帯びた灰紫色ガラス光沢のcorundum, diasporeの集合体が多数存在し、preiswerkiteはその粒間を充填する淡黄色真珠光沢を呈する直径3mmの半自形結晶の集合体をなす。EDSによる分析値(wt. %)は、SiO2 30.75, TiO2 0.34, Al2O3 29.62, FeO 3.64, MgO 18.22, Na2O 4.74, K2O 0.95, Total 88.26となり、実験式は(Na20.7, K0.1) Σ0.8 (Mg2.0, Fe0.3) Σ2.3Al0.8 [Al1.8Si2.2O10](OH) 2となる。 ◆Srに富む雲母 (Sr-rich mica) Sr-rich micaは、糸魚川市青海海岸で小林浩之氏が採集した白地に青色部分が不規則な脈として存在する礫に含まれていた。白色部分は緻密なcelsianと劈開明瞭なmargarite, paragonite, Sr-rich micaからなり、少量のslawsonite, calciteを含む。青色部分は緻密なcorundum, diasporeからなる。margariteとparagoniteからは5 wt.%程度のSrOが検出され、Srに富む部分ではSrO = 15 wt.%を超え、0.75 pfuに達する。実験式は、(Sr0.75, Na0.15, Ca0.05) Σ0.95Al1.98[Al1.98Si2.05O10](OH) 2となり、margariteのSr置換体に相当する。CaとBaを主成分とする雲母は知られているが、Srを主成分とする雲母は知られておらず、公表された分析値でSrを含む例はない。糸魚川地方の蛇紋岩メランジュ中の構造岩塊からは多種のSr鉱物が発見されているが、このような特異な組成の雲母もその一例である。
著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.68-68, 2017 (Released:2017-05-13)

日本新産鉱物情報(2015年)以降,2016年12月末までに確認された日本産新鉱物および新産鉱物と,種名変更などがあるものやその他について紹介する.太字は少なくとも化学的,結晶学的性質が明らかにされたもので,信頼度が高い.
著者
大浜 多喜 山田 隆 小菅 康寛 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会2008年年会
巻号頁・発行日
pp.117, 2008 (Released:2009-04-07)

栃木県鹿沼市(旧上都賀郡粟野町)発光路鷹ノ巣鉱山からトゥチェク鉱(tucekite;Ni9Sb2S8)を見出した。 トゥチェク鉱はオーストラリアと南アフリカから発見され1980年に記載された鉱物で、ハウチェコルン鉱グループの一員、正方晶系の鉱物である。近年、埼玉県広河原鉱山からも微細なものが見つかっている(西久保ら2005)が詳細な鉱物学的性質については公表されていない。足尾山地の層状変成マンガン鉱床である鷹ノ巣鉱山における野外調査の結果、一定量のトゥチェク鉱を採集し実験に用いることが出来たので、産状や形態とともに、実験結果を報告する。鷹ノ巣鉱山は足尾山地の変成層状マンガン鉱床の一つで、久良沢鉱山とともにマンガンパイロスマライトの産出で知られる。 トゥチェク鉱は方解石あるいは菱マンガン鉱に包有され、マンガンパイロスマライトやバラ輝石の結晶の隙間に、錐面を伴う正方柱状の自形結晶として産する。結晶の長さは最長で約4mm、太さは最大でも1mmまでである。新鮮なものは白色の金属光沢で光をよく反射するため、微細な結晶でも肉眼で気付きやすい。空気中に放置すると次第に輝きを失う。電子線プローブマイクロアナライザーによる化学分析では、およそNi:Sb:S=9:2:8で、わずかにCoやBiを含む。X線粉末回折実験により格子常数はa=7.216, c=5.383(Å)であった。
著者
加藤 昭 齋藤 靖二 松原 聰
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

本邦各地の層状マンガン鉱床産の鉱石試料中に含まれるニッケル・コバルト鉱物の同定を行った。それらのうち、三種について化学組成を決定した。又一部のゲルスドルフ鉱・輝コバルト鉱については、購入のプリセションカメラにより晶系を決定(等軸)した。最も重要な事実は、栃木県鹿島鉱山産試料中の含ニッケル黄鉄鉱(最高Ni0.46重量%)の確認、ニッケルの分布状態の把握、その成因の推定で、そのニッケルは本来テフロ石(【Mn_2】Si【O_4】)中の微量成分として含まれていたものが、そのバラ輝石(〜MnSi【O_3】)化に伴なって濃集されたものであろうという結論に達した。この結論はバラ輝石の集合中に含まれるニッケル・コバルト鉱物の成因を説明することができる。またこれらが砒素を含む場合、その砒素の根源も恐らくテフロ石にあるであろうと考えることができる。また栃木県板荷産のバラ輝石を主とする鉱石中に見出されたシーゲン鉱(【(Co,Ni)_3】【S_4】)+輝コバルト鉱((Co,Ni)AsS)の組合せではCo/(Co+Ni)比は前者中で後者より小さいことを明らかにした。なお鹿島鉱山ではテフロ石(最高NiO 0.07重量%)以外にも、チロディ内石(〜$$Mn_2$$$$Mg_5$$$〔OH|Si_4O_11〕_2$$)中に最高NiO 0.18重量%が認められた。これらの鉱物中に含まれるニッケル・コバルトの根源については、現世の深海底に堆積しつつあるマンガンノジュール様のものの生成が過去の地質時代にもおこっており、これがそれに該当するとして説明される。まずこれを構成する二酸化マンガンの鉱物がニッケル・コバルトを取り込んで結晶化しその後の中間過程は不明であるが、最終的には上述のような含ニッケル・コバルトテフロ石となり、この中ではこれらはマンガンを置換しているが、テフロ石からバラ輝石の生成や硫黄の供給などによってニッケル・コバルトは硫化物等として結晶したものである。またこれらの過程を通じて、両元素の地球化学的挙動は似通っていた。
著者
草地 功 小林 祥一 武智 泰史 中牟田 義博 長瀬 敏郎 横山 一己 宮脇 律郎 重岡 昌子 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
巻号頁・発行日
pp.142, 2011 (Released:2012-03-28)

岡山県備中町布賀鉱山のゲーレン石・スパー石スカルンに近接した結晶質石灰岩を貫く,武田石など種々のカルシウムホウ酸塩鉱物からなる不規則な脈中の含水カルシウムホウ酸塩鉱物(草地ら,2004)について,新たな分析を行い,このたび国際鉱物学連合,新鉱物命名分類委員会より,新種「島崎石」として承認された。命名は、スカルンの鉱物学、鉱床学に多大な貢献をした島崎英彦東京大学名誉教授に因む。