- 著者
-
佐藤 寛之
松尾 健一
小野瀬 倫也
- 出版者
- 一般社団法人 日本理科教育学会
- 雑誌
- 理科教育学研究 (ISSN:13452614)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.2, pp.361-374, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
- 参考文献数
- 17
理科学習場面におけるメタ認知的コントロールが子どもにとって難しいことであることが,これまでの理科教育に関する研究や国内の学習状況調査から明らかにされている。この理科学習における課題を改善し,理科学習で子どもが受容すべきと考えた情報とその選択の根拠を明らかにしていくために,本研究では,子ども自身によるメタ認知的活動の顕在化と学びのなかでの「気づき」の自覚化を促すための学習シート(理科学習プロセスシート)の開発を試みた。この理科学習プロセスシートを理科授業で活用した結果,次のことが明らかとなった。1)学習問題に対する予想場面での子どもの5つの思考過程の内実を見出すことができた。また,思考過程を顕在化し他者との対話を促すことで実験結果を基にした子どもの考えの更新が生じた。2)子どもが受容すべき情報の選択をする際には,まず,学習のキーワードに関連した生活経験を想起し,生活経験と学習問題との関連の有無をふまえて,以前の学習により理解したことや生活経験を付け加え,子どもは自分なりの予想の根拠を補足していた。3)考察を記述する際には,実験結果(現象)が生じた要因についての表現の「自由度」の高低が表現方法の差異となって現れる。この表現の「自由度」は,子ども自身の解釈で説明可能か否かで決定されており,説明に対する確信により変化する。